ジャック・ウェルチ リーダーシップ4つの条件 (ジェフリー・A・クレイムズ)
計画的撤退
(p41より引用) 組織のエネルギーが無駄遣いされたり、不適切な方向に逸らされてしまわないようにする方法の一つは、何かを「やめる」ことだ。具体的には、もはや会社に付加価値をもたらさなくなった業務、プロセス、製品から手を引くことである。ドラッカーは、計画的撤退というコンセプトを世に広めた。組織の簡素化と同じく、これがエネルギーを解放し生産性を向上させるうえで重要な役割を演じている。
この場合、ドラッカーの提唱する「撤退の判断基準」は、
「もし、まだその事業・市場に参入していないとして、いま持っている知識から考えて、これから参入しようと思うだろうか?」です。
これがまさに「選択と集中」の「選択」のメルクマールです。
ある種結果論のようでもありますが、「将来」に向けた「今」の判断としては至極当然なことです。
ただ実際は、基準に合致しているかどうかの判断もさることながら、その結果「撤退」の印がついた事業から本当に撤退するのが結構大変です。
これは「判断力」の問題ではなく「実行力」の問題かといえば、必ずしもそうとは言い切れません。すでに実施している事業(サービス)には「お客様」がついています。このお客様へのケアをどうするかが、「実行」に至るもうひとつ前段階の「判断」になります。
とはいえ、お客様の存在は当たり前のことですから、結局のところ、それらも含めた「実行力」の問題なのでしょう。
実行にあたってのリスクマネジメントやコンテンジェンシープランの策定は当然のことですから。
ウェルチの後継者イメルトの価値観
本書は、ウェルチ氏本人の著作ではないので、かえってサクサクと概念整理がされているように思います。
大分以前に「わが経営」は読んでいたので、ウェルチ氏時代のイニシアティブの解説よりも、むしろ、ポスト・ウェルチの後継候補者たちに係る記述の方に興味を持ちました。
まずは、ウェルチの後継者に指名されたイメルトについてです。
やはり、彼も企業行動の基本を「価値観の共有」に置いています。ここでイメルト流なのは、その共有すべき価値観を「シンプルな単語に凝縮」したことです。
(p182より引用) 価値観によって将来の行動を本当に左右しようというのであれば、その価値観は行動の基準になり得るものでなければならない。また、シンプルで、誰にでも適用でき、モチベーションを生み出すものでなければならない。
驚くべきことに、イメルトを中心とするチームは、GEに共通する価値観を四つの単語に凝縮した。
〈GEバリューズ〉
想像する(Imagine)
解決する(Solve)
築く(Build)
リードする(Lead)
1番目の「想像する(Imagine)」というのが特徴的だと思います。(英語ではまったく別の単語ですが、)「創造する(Create)」と言いたい気もしますが、
(p183より引用)「想像する
大志を抱く自由、そして、夢を現実にする能力
想像するためには、人は情熱と好奇心を大切にするという価値観を持っていなくてはならない。」
と解説されると、なるほどと思ってしまいます。
ナーデリの企業文化の変革
ナーデリはウェルチの最終後継候補3名のうちの一人でした。
後継者には選ばれませんでしたが、GEを離れホームデポ(アメリカ最大のホームセンタ)のCEOに迎えられました。
(p235より引用) 分権化がホームデポをダメにしていたわけである。第二次世界大戦後、組織上の原理として分権化を初めて採用したのは、「ゼネラルズ」(つまりゼネラルモーターズとゼネラル・エレクトリック)である。しかしこのモデルは、戦後の一時期には確かに利点もあったが、広範囲に広がったユニットや事業部を管理するために、官僚主義的な階層を増殖させるという面も持っていたのである。
「分権化」は多くの企業で進められているガバナンス形態です。そのレベルは「カンパニー制」「事業部制」「権限委譲」等様々です。
ナーデリが問題視したのは「分権化」そのものの否定ではないと思います。ナーデリがCEO就任した当時のホームデポが、「ノーコントロール状態の分権体制」であったことが病原だったのです。しかも、それが「創業以来の自由放任の企業文化」に根ざしていたことが改革の困難さを増幅させていました。
ナーデリは、強権的にガバナンス面での「統制」を推し進めるとともに、企業文化の変革にも取り組みました。自由放任で生じていた「無駄・重複・過剰」を徹底的に排除しました。
また、ひとつの企業体としての戦略の共有化とそれに取り組む基本的な行動指針も示しました。
「3つのシンプルな戦略」と「変化のスピード」です。
(p239より引用) ナーデリの戦略は決して複雑なものではなく、わずか三つの文で表現できた。
我々の戦略は非常にシンプルだ。「コアの強化」「事業の拡張」「市場の拡大」である。各カテゴリーでどの企業がトップなのかを見極め、その企業に勝つ方法を見つけなければならない。
(p239より引用) 内部の変化のペースが外部の変化のペースより速くなければ、置いていかれてしまう。我々はビジネスモデルを変えなければならない。「ここ」までたどり着いた方法では、「向こう」までは行けない。
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