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【800字コラム】 本来の実力、または受験こじらせおばさん

近年うちの母が明かしてくれた話。

高校の卒業間際に、同級生Aのご母堂が
「フランス語受験だと大学に簡単に受かるんですって?」
言ってきたそうな。Aは浪人が確定していた。

突然言われて母は絶句してしまったそうだが、フランス語での大学受験がそんなに簡単だというのなら、Aも中学入学時点(母校は中高一貫校)でフランス語を選べたのに、自分で英語を選んでおいて、結果が出たら文句を言うのは理解に苦しむ。

実はうちの両親は潰しの効く英語を勧めてきたんだけど、僕は
「後になって英語を習うことはできても、後からフランス語を学ぶチャンスはない」
と意固地になって自分の意志でフランス語を選択した。

フランス語は受験の選択肢が狭まるうえ、学校で落ちこぼれたら塾で救済されることもないから、相当にハイリスクな選択。
それでも僕はそっちに張って、勉強した結果行きたい大学に受かったのであって、フランス語を選びさえすれば自動的にファストパスが貰えるわけじゃない。

「ウチの子が落ちてミズノが合格したのは、フランス語というチートのおかげ。本来の実力ならウチの子は負けない」
ってストーリーを無理矢理構築するのは勝手だけど、それを当人に言いにくるセンスはどうにも理解できない。

「本来の実力」って、量りようがないだけに便利な言葉だけど、意地の悪い言い方をすれば、結果が出なかった時点でそれは実力などではないのだと思う。言葉を選ばずに言えば、その「本来の実力」なるものは、自分で自分に高値をつけてるだけではないのか。

「アイツは少なくとも自分以上ではない」と身勝手な決めつけをして、自分を上位にする順位付けをしてみたところで、現実世界でマウンティングできる筈もあるまいに。自分で決めたルールは自分を律する為には時に必要だけど、そのルールで他人を批判できると信じてしまう痛い人種は少なからずいる気がするし、嫉妬なるもので価値基準を歪めるのはいかにも見苦しい。

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