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夏目ジウ 掌編・短編小説集

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これまでnoteに掲載した小説をまとめてみました。
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ヒロト⭐︎シンジ 1.2.3【ショートストーリー】_第六回私立古賀裕人文学賞投稿作品

ヒロト⭐︎シンジ 1.2.3【ショートストーリー】_第六回私立古賀裕人文学賞投稿作品

 ーこの物語はフィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。
 ある映画の字幕にこうただし書があるのを僕は凝視していた。唯一無二の親友なのか、もしや恋人同士なのかわからない恍惚の表情を浮かべている。「我々はシンジンルイだ」と男二人は不敵な笑みを浮かべて。彼らは一体何者?その奇妙な邦画作品は古びた町にある最古のレンタルビデオ屋で見つけた。僕が生まれて初めて立

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盛夏に何を想う【掌編小説】

盛夏に何を想う【掌編小説】

 DVDには「昭和-戦禍の記憶-」というタイトルが付されていた。去年99歳で亡くなった祖父から受け継いだものだ。
 一人灯りを消して祖父の記憶に初めて触れてみる。画面にはテレビニュースで観たような人殺し合いが映し出されていた。僕は思わず目を背けた。でもやっぱり観なくてはいけないような気がした。フト「責任」という赤字で書かれた二文字が頭に浮かんだ。

 先達から受け継ぐ責任。誰かが語り継がなくてはな

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夏の思い出【掌編小説】

夏の思い出【掌編小説】

 夏が来れば思い出す。忘れよう忘れようとすればするほど走馬灯のように現れ出てくるのだから不思議だと思う。
 あれは始発の新幹線で帰省した時のこと。
 東京駅から名古屋へ向かう車中で見覚えのある女性がポツンと真ん中に座っていた。えーっと、と自らの乗車席を見つけた僕は思わず叫んだ。
 「あった!?」
 目の前の相手にはたぶん違うように聞こえたのだと思う。
 「いや、会ってません」
 続けざまに「知りま

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唄う美少女【掌編小説】

唄う美少女【掌編小説】

 「別れたあの夏を」
 「うわー、懐かしい」
 僕と彼女は最近こう言い合うのがなぜか流行っている。昔、母親が九十九里浜に連れて行ってくれた時によく流れていた昭和の歌謡曲だ。
 「この曲いいんだけど、カラオケで歌うと案外出だしとか難しいんだよね」
 彼女はこう悪戯っぽく言うと、自らの悲しい幼少期のことを語ってくる。僕は彼氏だからいいんだけど、ずっとそんな重い話をされても疲れてしまう。でもなかなか「別

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もう恋なんてしない【掌編小説】

もう恋なんてしない【掌編小説】

 「きいて欲しいことがある」
 そうLINEにメッセージを送ってきた君の絵文字は大量の涙で溢れていた。恋なんてしなければ良かった、君から絶対に聞きたくない一言だった。
 そう思い悩んでいるなんて到底想像できなかった。君はイケメンでスポーツ万能、さらには勉強も出来る。非の打ち所がない、周りの誰もが羨むほどの才能溢れる人間だからだ。君が失恋した?誰もが恋愛に絶望感を抱いて、さらには生きることすら嫌気が

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わたしの おとうさん【掌編小説】

わたしの おとうさん【掌編小説】

 ※文字数2,402字。
  作品はフィクションです。

 私は父性を知らない。男親がいるって凄い、といつも妬んでいた。実父は物心ついた小学1年には この世にいなかったから、普通に凄いと思ったことは今までずっと続いている。
 私は父に成り代わる存在をずっと探していたんだと思う。父親みたいな大きな存在・・・私にとっては今の彼氏である同い年の井上 恭(やすし)君だ。
 二十歳になるまで彼氏が出来なけれ

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初夏に帰りたくなる僕ら_2【ショートストーリー】

初夏に帰りたくなる僕ら_2【ショートストーリー】

やっぱり恋ができない
そう呟いたX(エックス)に見知らぬイイネが星の数ほどついた
僕の不幸を嗤う1万イイネは悲しみを増長させる
つぶやきの裏にある声にならない叫び
--見知らぬ姉に逢いたい
大人になればあえるよ、と言った母に姉のことを訊いてみたくなった
気がつけば朝一の飛行機に勢いよく飛び乗っていた
例年より暑い夏の札幌のせいで到着後は少し気分が悪くなった
いや、亡き姉のことを思い過ぎたせいか

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ショートショート「夏の終わり」

ショートショート「夏の終わり」

 祖母が亡くなった時は今でもよく覚えている。私が10歳になった8月末日の翌朝で、自分は日本一不幸な小学5年生だと思った。
 しかし、肺がんと最後まで闘う姿は強く美しく見えた。「人はいつか死ぬ。こうやって抗う苦しむ姿を見とけ」と言われているようだった。
 祖母が亡くなって、病院から帰ってきた時には既に沢山の人達が居間に集まっていた。
 葬式は厳粛に執り行われた。すすり泣く声が住職の念仏をかき消してい

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母の夕焼け【ショートストーリー】

母の夕焼け【ショートストーリー】

 あんな夕焼けは見たことがない。
 恐ろしいほど包み込まれそうだった。
 思わずそう叫んでしまいそうな聖母のような優しさがそこには広がっていて、沈む間はずっと亡き母を思い出していた。

 母は看護師の仕事をして僕を女手一つで育ててくれた。
 「拓也くん、いい? ここでおとなしく待っているんだよ」
 その日も僕は母の勤務する都内の病院に来ていた。学校が終わってから、毎日こうやって母の近くに来ていた。

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変態夫婦【掌編小説】(青ブラ_第3回変態王決定戦参加作品)

変態夫婦【掌編小説】(青ブラ_第3回変態王決定戦参加作品)

 ※本編2478字。

 (節分に邪気を取り払うって、何も夫婦関係にまで躍起にならなくても・・・。)夫のヒロシはそう呟くと幻の終わりの様な刹那さに襲われた。
 節分に離婚を突きつける風習は、実はその昔日本に存在していた。妻の節子は鬼の形相で夫に三行半を突きつける。
 「ハタチに結婚して20年。ずっと、アンタのことが気に入らなかってん」
 ヒロシに世の悪運の全てが降りかかったように真昼の斜光が突き刺

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さようならタイムカプセル【掌編小説】

さようならタイムカプセル【掌編小説】

※5,528字数。
 本作品はフィクションです。

 卒業の日を一週間後に控えた愛ノ川小学校には一言では例え難い雰囲気があった。過疎化が進む愛ノ川市は数年前から一気に人口減少の一途をたどっていた。
 今月3月末をもって、廃校になるのだ。母校を失くすことは限りなく悲しみが深い。
 在校生のうち6年生は5人、5年生は4人、4年生は3人、3年生は2人、2年生は1人。そして、今年度の新入生はいない。傷心に

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朧月の恋【ショートストーリー】#シロクマ文芸部

朧月の恋【ショートストーリー】#シロクマ文芸部

 朧月は救いだった。
 早春にくしゃみをすると初恋から醒めてしまう、と昔の言い伝えがあった。じゃあ、くしゃみをしないように僕は鼻を塞ぎ、マスクを二重にした。
 付き合っているのか、そうではないのかよく分からない時期だったから絶対に美咲を離したくなかったのだ。
 【くしゃみをすると、美咲は消える】
 余計なプレッシャーとなり、初めてのデートが何だかよく分からない日になっていた。ドキドキする良い緊張感

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いやんズレてる【ショートストーリー】(青ブラ_第3回変態王決定戦参加作品)

いやんズレてる【ショートストーリー】(青ブラ_第3回変態王決定戦参加作品)

 「わたくしカブラギ商事の葛城桂子と申します」
 「はっ」
 「かつらぎ・けいこです!」
 「ボヘミア〜ン?」
 「はあ? あっ、すみません」桂子は、言われることを分かっていつつも恥じらった。
 「はあ、とは何ですか。顧客に向かってその言葉遣いは?!」
 「だって、山根社長あまりにもふざけているものですから」
 「・・・・・」山根は思わず黙りこくった。
 「私がカツラだからって少し軽く見ていません

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神々のオッサン達【ショートストーリー】

神々のオッサン達【ショートストーリー】

 病室にいる間はずっと、何か自問自答を繰り返していた。誰かの声掛けがまるで病室を彷徨う羽虫音のようにも聞こえていた。

 ーまるで、暗くまどろむような空間だった。
 「裕人よ、どうしてこうなった?」鬼沼のようなドス黒い声だ。
 「前日、仕事中に軽い眩暈がして、そのままフラーっと歩いたら三途の河が見えて・・・」裕人は2mもの大柄な体躯を揺らせて言う。
 「第一だな、お前は死人リストには入っていないの

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