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初夏に帰りたくなる僕ら_2【ショートストーリー】

やっぱり恋ができない
そう呟いたX(エックス)に見知らぬイイネが星の数ほどついた
僕の不幸を嗤う1万イイネは悲しみを増長させる
つぶやきの裏にある声にならない叫び
--見知らぬ姉に逢いたい
大人になればあえるよ、と言った母に姉のことを訊いてみたくなった
気がつけば朝一の飛行機に勢いよく飛び乗っていた
例年より暑い夏の札幌のせいで到着後は少し気分が悪くなった
いや、亡き姉のことを思い過ぎたせいか
無性に姉に甘えたくなった
顔すら知らないのに
聖母でも、聖父でもない
ただの女神みたいな姉に

これシゲヤのお姉ちゃん
母はホラと言う風にいとも簡単に写真を見せてきた
健康的で天使のような微笑み
原因不明の病気を突然患って急死したという
母はそう言うと泣きながら線香を立てた
父も僕も母につられるように泣いた
写真の姉だけは満面の笑みでこちらを見ている
もう泣くのは止めよう
誰ともなくそう言うと3人で手を合わせた
いつも見守ってくれてありがとう

【シゲヤ君、東京で恋しなさいよ。お姉ちゃんに、シゲヤ君の彼女紹介してよ】

「えっ!?」
僕は思わず呟いた
姉だけの為の呟きが届いたのだろうか

そうそう
イイネイイネ
シゲヤ君、元気出してよ

上手く恋ができるか分からないけど
初めて姉に逢えたような気がした

【了】


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