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カジノも消えて、夢洲は〈悪夢洲〉となる。: 西谷文和『安倍、菅、維新。8年間ウソを暴く 路上からの反撃、倍返しだ! 』

書評:西谷文和『安倍、菅、維新。8年間ウソを暴く 路上からの反撃、倍返しだ! 』(日本機関紙出版センター)

世界の紛争地を取材するフリージャーナリスト西谷文和がパーソナリティーをつとめる『西谷文和の路上のラジオ』で放送されたインタビューをまとめたものに、西谷による現地レポートとして「万博/カジノ&官邸/維新/吉本」が追加収録されている。

本巻収録インタビューのゲストは、内田樹、佐高信、小出裕章、平松邦夫、矢野宏の6名。

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本巻の刊行は「2020年10月」なので、半年ほど遅れて読むことになったが、これは先日、書店で初めて見かけて、その存在を知ったせいだ。
内容的には、昨年の「東京都知事選挙」の後、2回目の「大阪都構想住民投票」の前、といった時期のインタビューで、やや読む時期を逸した感はあるものの、少なくとも日本社会の問題について勉強している人にとっては「豪華なメンバー」が並んでおり、かつ大阪在住の私も知らなかった大阪関連情報もいくつか勉強できて、とても良かった。
YouTubeでも放送されているそうだから、興味のある方は是非そちらもチェックしていただきたい。

さて、私が本巻で初めて知ったのは、2025年開催予定の「大阪万博」終了後の大阪夢洲に建設予定となっている「カジノを含むIR(統合型リゾート施設)」の目玉である「カジノが頓挫している」という事実である。

平松  そのカジノも万博も夢洲でやるでしょう?

一一そこにはまだ地下鉄が通っていない。カジノと万博をするには鉄道が絶対に必要。そして吉村知事と松井市長はカジノ&万博がやりたくて仕方がない。

平松
  夢洲のへの地下鉄について言えば、地下鉄延伸の費用200億円をカジノ業者に負担させる、という計画でした。

一一そうそう、カジノ業者は気前がいいから、出してくれると。

平松
  気前がええというのはコロナ前の話。かつて、日本進出に前のめりだったラスベガス・サンズのアデルソン会長は、コロナ後に「日本進出をあきらめました」と言いました。これは東京、横浜を含めて。だってラスベガスはどこ6月初旬まで全部閉鎖してましたから。

一一最初、ラスベガス・サンズは「大阪ほどいい場所はない」と言って松井さんと握手してたのに、横浜が手を挙げたら、すぐに大阪を振って「横浜でやります」(笑)。松井さんもよくウソをつくけど、ラスベガス・サンズはウソつきの親玉(笑)。そんなところをあてにして200億円、絶対信用でけへんわ。

平松
  カジノ業者をアテにして万博会場へのアクセスへの資金を作るとしていたけれど、コロナで世界の航空需要も移動する人も激減。いつになったら元に戻るか全然見通しが立たない中で、巨額の税金を投入して夢洲を埋め立てて、そこに鉄道通す計画と工事だけが進んでいく。万博は25年の5月から半年で2800万人が世界からやって来るという想定。ホンマに想定通りやるんかい! 大赤字になるぞ、と。

一一中東取材の拠点都市として、よくドバイに行くんです。ドバイは20年の万博予定都市でしたが、1年延期が決定。同じカタールのドーハにも行くのですが、こちらは22年サッカーワールドカップの開催都市。ドバイもドーハも好景気で、あちこちに高層ビルや高速道路が建設中です。石油と金融で国民一人当たりの所得も世界トップクラス。だから万博やワールドカップを誘致した。一方大阪は大不況の中で倒産、失業する人が急増して、高齢化も進むし、石油が出ないし、コロナだし。計画通り万博を開催するのは無謀だと思います。

平松
  東京オリンピックもできるかどうかわからない。大阪万博にも赤信号が灯り出す。そしてカジノ業者はほぼ撤退。大阪でやろうとしているのはオリックスと組んだMGMグループだけ。

一一そのMGMグループもコロナで赤字。だからみんなオンラインカジノにシフトしてますよね。』
 (P141~142「第3章 維新と大阪都構想にノー!」より、「一一」は西谷)

そう言えば、つい先日、この夢洲への地下鉄工事で、軟弱地盤が見つかったために工事費用が、当初の想定より相当増えるというようなニュースをやっていた。
まあ、これは、公共事業の「いつものことだから」と思って聞き流していたが、もしかするとカジノ業者をあてにしていた「200億円」も、税金から支払わせるための伏線なのではないだろうか?

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『 大阪メトロ中央線の延伸工事費が40億円程度増える見通し
   2021年5月22日 07時48分「NHK NEWS WEB/関西 NEWS WEB」

2025年の大阪・関西万博に向けて、大阪メトロ中央線を会場の夢洲まで延伸する工事の費用が、軟弱地盤への対策が新たに生じたことから、当初の想定より40億円程度増える見通しであることが大阪市の試算でわかりました。
大阪市は、2025年の大阪・関西万博に向けて、大阪メトロ中央線を会場の夢洲まで延伸する方針で、これまでに、夢洲までの海底トンネルなど全体のおよそ3分の2が完了しています。
現在、夢洲の地下に設置する新駅の工事が進められているほか、今後、夢洲内のトンネルの掘削工事も行われる予定で、市では、これらにかかる費用を、およそ250億円と試算していました。しかし、駅の工事で地中を掘り進める中で軟弱な地盤が見つかり、土砂の崩落を防ぐためのコンクリートの壁を、より地中深くまで作る必要が生じたため、建設費用が40億円程度増える見通しになったということです。増加分の一部は国が補助しますが、およそ30億円は市の負担になるということです。松井市長は「計画段階での試算が少し甘かった。全体の計画の中で、経費をさらに抑えていくよう指示をしている」と話しています。』

あれっ? ここでは総額が「250億円」になってて、それに「想定外」の「40億円」が加わるって話のようだが、きっとこの先も「想定外」は起こって、総額「300億円」は下らないだろう。
このうち「200億円」をカジノ業者に持たせる予定だったのに、「300億円」が、まんま「(大阪市民、大阪府民、国民の)税金」ということになるのか。
大阪に関して言えば、よくぞ昨年の「都構想住民投票」で勝ったものだ。あれで負けてたら、そっちだけでも『大阪都構想とは・実現なら初期費用最大561億円: 日本経済新聞』(1回目時の試算)と、とんでもない予算が必要となっていたところなのだ。

やはり、いずれにしろ、オリンピックも万博もIRも、全部やめさせなくてはならない。
大阪のコロナ死者数は、本日現在の累計で「2,163」人に達している。

このまま行けば、コロナ終息までに、3,000人もの「帰らぬ人」を出した上で、やれ「万博」だ、やれ「IR」だとバカ騒ぎすることのなるのである。

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(大阪維新パンデミックの図?)

初出:2021年5月25日「Amazonレビュー」
  (2021年10月15日、管理者により削除)
再録:2021年6月7日「アレクセイの花園」

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『 夢洲の軟弱地盤「想定以上」 大阪IR、工期に影響
2022/02/18(金) 8:46配信・共同通信・yahoo!二ュース

 大阪府と大阪市が誘致を進めるカジノを含む統合型リゾート施設(IR)の予定地である人工島・夢洲を巡り、事業者のボーリング調査の結果、想定以上に軟弱地盤の状況が悪いと昨年1月に松井一郎大阪市長に報告されていたことが18日、市の内部文書で分かった。土壌汚染や液状化層の存在も同時期に判明。市は対策のため「事業費・工期への影響大」と評価していた。

 市は当初、開業時期を2025年大阪・関西万博前を目指していたが断念し、事業者の提案に沿って「20年代後半を想定」と修正した。開業時期修正までの市と事業者側との詳しいやりとりが明らかになるのは初めて。』

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『 大阪市長「調査甘かった」 万博道路整備費、1千億円増で
(2022/03/2(水) 16:53配信・共同通信・yahoo!ニュース

 大阪市の松井一郎市長は2日、2025年大阪・関西万博に向けて整備を進める高速道路「淀川左岸線2期」の事業費が地盤異常のため1千億円程度膨らむ見通しとなったことについて「当時の地盤調査の考え方が甘かった部分は否めない」と市役所で記者団に語った。「コストを抑える知恵を振り絞りながら進めたい」とも述べた。

 淀川左岸線は新大阪駅近くから万博会場の人工島・夢洲へつながる高速道路網の一部。松井氏は自動運転のバスを走らせる計画だと強調し、万博開催までに当初予定したトンネル構造での建設ができない場合は、代替の仮設道路建設を検討する考えも明らかにした。』

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『 夢洲の土壌対策費についてIR事業者が市議会で説明 「当初は液状化はないと聞いた」 市が対策費負担
2022/03/16(水) 21:08配信・関西テレビ・yahoo!ニュース

大阪が誘致を目指すIRで問題となっている土壌対策費について、運営事業者が市議会で答弁し経緯を説明しました。

大阪市議会に参考人として招致されたのは、IRの事業者に選ばれている、アメリカのカジノ大手「MGMリゾーツ」の日本法人・エドワード・バウワーズ代表と「オリックス」の高橋豊典執行役です。

IRの誘致をめぐっては去年、候補地の夢洲の液状化対策などの費用として新たに約790億円がかかることが判明し、大阪市は「土地所有者の責任」として、全額負担する方針を示しています。

自民党の市議は、夢洲の土地をめぐる問題についてどのような経緯で市の負担が決定したのか、事業者側に質問しました。

【オリックス 高橋執行役】
「液状化については、当初はないと私どもは聞いていました。途中で設計のためのボーリング調査で判明しました。大規模な集客施設において、土地の所有者として、適正な土地にしていただきたいというお願いをさせていただいたというのが大きなところ」

さらに、事業者側が示しているIR全体の年間売り上げが約5200億円になるという試算について、下振れの可能性はないのか問われると…

【オリックス 高橋執行役】
「民間において事業計画というものは、今の状態でいったときの計画で、色々ファクトが変わってくることも予想されます。通常、変動の幅があるものとご理解を賜ればと思います」

新型コロナの影響については、すでにアメリカのラスベガスなどで収益が回復傾向にあるとして、開業を目指す2029年までには、影響がないと想定していると回答しました。

IRの区域整備計画案は、大阪府・市の両議会で同意を得た後、国に提出されます。』

※  当初名乗りをあげたカジノ業者は、続々と撤退して、唯一残った、オリックス・MGMグループと契約。つまり、競争入札どころか、大阪府には選択の余地がなかった。一一よくある話だが、当初の皮算用が外れても、退くに退かなくなって、ついつい追い銭を注ぎ込んでしまう。それで、破綻するのは、ギャンブラーの常だ。(年間読書人.2022.03.24)

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