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お気に入り短編・掌編・ポエム・エッセイまとめ

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ステキなクリエイターさんの作品をまとめました。
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記事一覧

昼下がりに見る夢

昼下がりに見る夢

 わたしの中には三人のわたしがいる。夫を一途に愛しているわたし。彼女とみだらな行為にふけっているわたし。そしてSNSのなかにいる活発な女子大生のわたし。
 夫と同じ時間を過ごしている時わたしは心地よい安らぎを感じながらこの人とずっと一緒にいたいと願う。わたしのことを理解してくれている人。初めてきちんと好きになったまともな男性。愛する人に守られているという満ち足りた思いを感じながら、夜はベッドのシー

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身体で愛し合うこと

身体で愛し合うこと

※性的表現が苦手な方は見ることをお控えください。あくまでも私の価値観だけのお話ですが。

お恥ずかしいことに、私は齢23になりかけにして、初体験という初体験をしたことがない。
この投稿のきっかけすら、友人にセックスというテーマを提示されたことだ。

ただ、ネットで読める官能小説みたいなものに傾倒していた時期があった、いや、今でもたまに読むことがあるので、知識は割とある。

ただ、私は本能的に身体の

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Drawing

Drawing

Mr.Children/Drawing

デタラメと嘘の奥に本当の答えが眠っている

子供の頃に夢で見た景色がフラッシュバックする。
それはすなわちデタラメだったり、自分に都合の良い嘘かもしれない。

桜井さんはそんな気持ちを真空パックしたいとも歌っている。
それは形のない儚い影だけれど、本当の答えはその中に眠っているかもしれない。

ノートに書いても色褪せてしまうかもしれない

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おくすり

おくすり

私は寝る前に5つお薬を飲むの。
それもね、不思議な不思議なおくすり。

足が痛い時って薬を飲むと痛みが減るでしょう?

わたしはお薬をのんでも、痛みは減らないの。
逆に頭の中がぐるぐるして気持ち悪くなるの。

そしてそのまま朝まで眠り続けるの。

どうやらそれは、痛みを減らすのではなく、
痛みを感じる前にあらかじめ飲んでおくものみたい。

おくすりは、私の血の中に溶け込んで一つになるみたい。
なん

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好きと嫌いが分かれるタイプのあの子

好きと嫌いが分かれるタイプのあの子

ここでは、三人称をあの子としておくことにしました(思想とか歴史とかのあれこれがあるため)。
食べ物で言うとパクチー、クラスメイトだったら彼氏が途切れない子、まあ、そんな感じ。

父はあの子が大嫌いだ。
あまり綺麗ではない、いや、罵倒の言葉ばかり。
テレビや音楽でその子界隈が出てきただけでチャンネル強制変更。実家にいた時はそんな感じ。

私は、あの子が私たちの文化に触れてくれる、たとえば私たちの中で

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はなびら

はなびら

はなび、はなびのはなびら。
美しくてその時間ごとスケッチブックに閉じ込めておきたいけれど、
そう思うとともに儚く散ってゆくのです。

わたしたちの心もはなびら。
見つめていても、大切にとっておきたくても姿かたちは変わり、何もしなければ枯れて散ってしまうのです。
押し花にしても、ドライフラワーにしてもそれそのものではもはやないのです。しかり。

だから、レンズに写して

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麒麟のように美しいトラ、駆け抜けるウマ

麒麟のように美しいトラ、駆け抜けるウマ

最近、自分と向き合う中で、トラウマについて考えることが多く、改めて意味を調べてみた。
Google先生によると、
トラウマとは

個人が一般の生活では経験しないような死に直面するような心理的に強い負荷となる出来事のことを指します。 この出来事には、戦争や交通事故等による生命の危険、他者からの個人の尊厳の強い毀損等があります。

だそう。

概ねネガティブな意味なんだなぁ。しかも軽々しく使わない類の

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春眠暁を覚えず、なんとかかんとか

春眠暁を覚えず、なんとかかんとか

桜の咲く頃、私は魔法にかけられたように眠り続ける。
最初は処方薬のせいかと思っていたけれど、どうやら違うらしい。毎年そうだから、気づいたの。

まるで春の妖精の鱗粉を吸い込むかように、呼吸をするたびに眠気は増していくのです。聴いていた音楽がフェードアウトしていくように知らず知らずのうちにうとうと。

夜ちゃんと寝ないからでしょう?と言われればおしまいだけれど、少し前ま

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ねるさん〜想い、表明〜

ねるさん〜想い、表明〜

私は、ねるさんのことが大好きだ。愛している。
私は素直に想いを伝えるのが上手ではないので実際に声を聞いたりすると、うまく言えないのだが。

でも、私はどうやら他の恋をすることをしなくてはならないようだ。ねるさんへの恋は叶わない。
それはねるさんの生き方を大切にしたいからでもある。

でもどうしようというのだろうか。
今はよく分からないけど、これからのさまざまな人との出逢いで分かるのだろうか。

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ねるさん〜救済、再会〜

ねるさん〜救済、再会〜

私が転院したことで、ねるさんとは一度お別れになった。また会おうね、その時は歩けるようになっているかな、と握手をして私は2ヶ月のリハビリに励んだ。

しかし、今思えばまだまだ私の精神状態は不安定で、その後も入退院を繰り返した。
そこでも、ねるさんは私が電話で話したいというと、夜遅くでも私の戯言に付き合ってくれた。
その時間は、私の心の救済だった。

その後、一度だけねるさんと私は再会した。
なぜ一度

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ねるさん〜出会い、一時期の別れ〜

ねるさん〜出会い、一時期の別れ〜

彼の存在は、絶望の中に突然差した一縷の光だった。
彼に出会う1ヶ月前、私は大きな自殺未遂をして、脚がポキリと折れるようにに生きる意味を見失っていた。これは比喩ではなくて、本当の話。

初めて出会った時は今でも鮮明に覚えている。
精神科病棟で看護師さんに富士山が見える開くことのない窓へ連れて行ってもらった時、そこで黄昏ていたのがねるさんだった。
「かっこいいな」
それが第一印象。本当だ。

また少し

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静寂の中。響くもの。

静寂の中。響くもの。

2024.4.6 四分の一の部屋にて。

今、私は静かな部屋で浮遊しながら外を眺めているの。
自分の声も、周りにいるはずの人たちの声も静寂に吸い込まれていく感じ。
くぐもって、耳にべたりと何かが膜を張っている。

でも、頭では全て理解しているの。きっとそれらは私に不必要なものだってこと。
静かだけれど、寂しくはないよ。不思議なことに。

なぜなら私は心に響くものを持っているから。
それは耳から入ら

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星のない世界

星のない世界

2024.4.4 窓の開かない部屋にて。

私は夜が好きだ。
眠る前から部屋の電気を消して、外を眺める。
もちろん窓は開かない。

その闇と街頭や病院から漏れる蛍光灯の光は、
深海に光る蛍を彷彿とさせる。
もちろん、深海には蛍は存在しない。
いるとしたらシーラカンスや色々だろう。
ついたり、きえたり。
ぷかぷか浮かんでいて、私も一緒に浮かんでいる感覚になる。

あ、くらげでもいいかもしれないな、な

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【短編】君が好き

【短編】君が好き

 久しぶりに真希とふたりだけで食事をした帰り道、最寄りの駅を降りてから静まり返った深夜の住宅街を真希の家まで並んで歩いた。家々の窓からカーテン越しに灯りがみえる。白く光る街灯がぼんやりと道路に光をおとしている。
 夜空を見上げても星なんてひとつも見えない。暗闇になろうとしているのになりきれていないような薄明るい夜空の下を、遠くを走る車の音しか聞こえない深夜の住宅街をふたり並んで歩いた。
 ふたりの

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