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エッセイ

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2019年7月の記事一覧

自分の生まれた日を知らずに生きる人々【映画/存在のない子供たち】

自分の生まれた日を知らずに生きる人々【映画/存在のない子供たち】

両親を告訴する。僕を産んだ罪で。

胸がつまるコピーに惹かれて、映画「存在のない子供たち」を観た。

以下、映画のネタバレです。

***

「人間が想像するすべての不幸な出来事は世の中で起こっている」といつか誰かが言っていた。
日本で普通に暮らしていれば遭遇しないであろう混沌とした世界は、映画の中の話というわけでは決してないはずだ。

戸籍のない少年、ゼイン。
自分の誕生日も知らず、年齢もわから

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PMSと気づくのに一年かかった話

PMSと気づくのに一年かかった話

ここ一年ほど、感情の浮き沈みがとても激しくなった。その原因がPMS(月経前症候群)かもしれないと気づいたのは、ほんの数日前のこと。

わたしがこのnoteで伝えたいのは、PMSによる情緒不安定が自分では本当に気づきにくく、いかに厄介なものか、と言うことです。

***

わたしのPMSによる情緒不安定は、こうだ。

仕事中、自分の些細なミスや相手のちょっとした一言でイライラしてしまう。わたしはこ

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あの頃のわたしが憧れていたもの

あの頃のわたしが憧れていたもの

地下にひそむ秘密の温室
20歳のわたし
パルテノン神殿
雲の上を歩くこと
知らない誰かがわたしを迎えにくること
木の上につくる秘密基地
わがままなお姫様
普通の女の子
運命を変えるような恋
そしてその恋を失ってしまうこと

海の中で歌を歌うこと
真っ赤な口紅
世界中にわたしだけになってしまうこと
異国の寝台列車
自分を映さない鏡
開かない扉の向こう
運命に選ばれること
灯台守
傘で空を飛ぶこと

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置いていかれた、花火の夜。

置いていかれた、花火の夜。

今日は隅田川の花火大会だったらしい。
わたしはあいにく仕事だったので、クライマックスの様子だけテレビで見ていた。

隅田川の花火大会には一度だけ行ったことがある。二十歳の夏のことだ。

当時好きだった人にふたりで花火に行こうと誘われた。好きな人と花火に行くことも、東京の花火大会に行くこともはじめてだったわたしは、とても楽しみにしていて。

でも結局、人がたくさんいたので立ち止まってゆっくり見ること

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変わらないあなたへ

変わらないあなたへ

変わらないことは
あなたが不変であるということです

50年後にわたしが死んで
いつかわたしを知る人もみんないなくなっても
あなたはここに立ち続けるでしょう
きっと50年前もそうしていたのだから
あるいは100年前からそうだったのかもしれません
そして100年後も在り続けるのかもしれません

北の大地の果て
この海を見続けて何を思いましたか
愛しいひとはいましたか
かけがえのないものはありまし

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シャッターを切ることを許された日のこと

シャッターを切ることを許された日のこと

青森の先っぽ。下北半島にある尻屋崎灯台に行ったのはもう5年近く前のことだと言うのに、いまでもその記憶は鮮明だ。

バスを乗り継いで、ついたはいいけど帰りのバスは3時間後くらいで。周囲にはお店も何もなく、ただ海が広がっているだけ。
他にすることもないので、ひたすら灯台や海の写真を撮っていた。ああでもない、こうでもないなんて思いながら、アングルや構図を変えて、その日だけで何枚撮ったのかなあ。

時間が

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