【手品師10人に取材してみた!あなたの40分をわたしにください。 No.9ヤマギシルイさん】


【手品師10人に取材してみた!あなたの40分をわたしにください。No.9 ヤマギシルイさん】


この企画は、いま気になっている手品師さん10人に、好きなモノやコトなど知りたいことをLINEのチャットで40分間取材するものです。

今回は、金沢で「マジックカフェ&バー BELIEVE」を営み、「小説を愛するマジシャン」として活躍されているヤマギシルイさんを取材しました。



【ヤマギシルイさんプロフィール】
Twitter:https://twitter.com/rouis_ymgs
お店情報: https://twitter.com/cafe_bar_magic
犯人当て小説『雨の牢獄』‬:https://note.com/be_lie_ve/n/n7f9153919e93
金沢美術工芸大学デザイン科卒。「マジックカフェ&バー BELIEVE」代表。
本格ミステリや幻想文学を中心に小説だけで年間200冊以上を読破する愛書家であり、自ら小説を執筆する著述家でもある。幼少期にマジックと出会い、一般企業勤務、マジックバー責任者を経て、2020年に独立。近年は海外のコンベンションやパブリックショーにも出演。クロースアップからステージ、メンタリズムまで幅広く演じる。


(岡村) この度は取材を引き受けていただき、ありがとうございます!「マジックカフェ&バー BELIEVE」の金沢経済新聞のVR記事、拝見しました!物語を読んでいるかのような演出が面白くて驚きました!

(ヤマギシルイさん) あれスゴイよね。

(岡村) びっくりしました!

(ヤマギシルイさん) なんでも質問どうぞ。

(岡村) わーい!以前は「STYLE」というお店で働いていたようですが、独立してご自身
の「マジックカフェ&バー BELIEVE」を開こうと思ったきっかけを教えてください。

(ヤマギシルイさん) 話すと長いよ(笑)

(岡村) ぜひ〜!

(ヤマギシルイさん) 昨年5月に前店舗のテナントビルのオーナーがビルを売却したいとのことで、年末を目安に退去の必要に迫られたんですが……「STYLE」のオーナーが諸事情で移転先を探す余裕がなく。

(岡村) ふむふむ。

(ヤマギシルイさん) 実は昨年9月にアメリカのコンベンションにゲストで呼ばれたんですが、それだけの実力があるなら自分で移転先を探して独立したらと「STYLE」のオーナーに勧められて。

(岡村) なるほど〜!オープンまで結構早かった感じですね!

(ヤマギシルイさん) アメリカに行くにあたって英語で作品集を書くことにしたんですが、そのせいで出発1週間前まで執筆に忙殺されてしまって……。

(岡村) ひえー!すごい。

(ヤマギシルイさん) コンベンションは9月第一週だったけど、帰国後もバタバタして、やっとテナントを探し始めたのが9月末。

(岡村) すごい。大忙しですね!

(ヤマギシルイさん) 年末に前店舗を退去となると、1月には新店舗ができてないとマズいからメッチャ焦ったけど……たまたま行った不動産屋さんに気に入ってもらえて。

(岡村) いいですね〜。

(ヤマギシルイさん) 結局、探し出してから3日で今のテナントが見つかって(笑)

(岡村) 早い!(笑)

(ヤマギシルイさん) 締切が迫らないとやらない腰が重いタイプなので……(笑)年末退去が決まっていたから決断が速かっただけ(笑)

(岡村)  なるほど!(笑)お店に本がたくさんありますが、なぜ置こうと思ったのですか?

(ヤマギシルイさん) もともと本の虫で。他人より字を覚えるとか本を読むのが子供の頃から早くて。小学校の時は学校の図書室の本を全部読んじゃったんです。

(岡村) そんなに早いんですね!面白い!

(ヤマギシルイさん) 文章の話をすると、独立で一番時間をかけたのがコンセプトで。

(岡村) ふむふむ。

(ヤマギシルイさん) お店のコンセプトもだけど、自分をどうパーソナライズするかに物凄く悩んで。

(岡村) はぁー、なるほど。

(ヤマギシルイさん) テナントの図面を詰めていったのが11月。12月の一ヶ月で内装工事を終わらせたんですが、その間も夜は「STYLE」に勤務、昼は新店舗のために役所訪問や書類作成をしながら、空き時間でひたすらコンセプト書き殴って。

(岡村) わぁ〜、すごい。

(ヤマギシルイさん) で、いま「小説を愛するマジシャン」というフレーズで商標申請しているんですが、自分で秘かに「又吉・カズレーザー」戦略って呼んでます(笑)

(岡村) 「又吉・カズレーザー」(笑)いいですね、面白い(笑)

(ヤマギシルイさん) お笑い芸人であることと、小説家であること・読書家であることを結びつけることでお二人はブランディングしているわけで。

(岡村) ふむふむ。

(ヤマギシルイさん) マジシャンも無関係なものと結びつける手があるのではと。そこで、じゃあ自分の根源にあるものはと考えて行き着いたのが読書なんです。

(岡村) なるほど〜、素敵な発想ですね。そこで本に繋がるのがいいですね。

(ヤマギシルイさん) じゃあその読書量をどうアピールするか……ということで、いまのお店ではバックカウンターに本を大量に並べているんですよ。

(岡村) なるほど〜!

(ヤマギシルイさん) これ、デザインでいうところの「コンセプトの見える化」ですね。

(岡村) 面白いですね〜!

(ヤマギシルイさん) 実は金沢美術工芸大学デザイン科卒でして。

(岡村) あ!それ気になってました!

(ヤマギシルイさん) 優秀な生徒じゃなかったですけどね。浪人も留年もしてる(笑)

(岡村) いいじゃないですかー!羨ましいですー!

(ヤマギシルイさん) ただ周りは天才だらけで、その天才たちの仕事を間近で見られたのが最高でした。有名なところだと「NHKびじゅチューン」の井上涼が同期。

(岡村) へー!

(ヤマギシルイさん) ……正確には、留年した僕が上から落ちてきての同期(笑)

(岡村) なるほど(笑)

(ヤマギシルイさん) マズい流れになってきたぞ(笑) 他に気になってることは?(笑)

(岡村) ヤマギシさんを見てると、自己デザインが素敵だなぁと思いまして。

(ヤマギシルイさん) あー、メッチャ悩んだから、そう言ってもらえると嬉しい。

(岡村) デザインするときにどういう点に注意してるのかなぁと。「デザイン」って素敵だなぁって。

(ヤマギシルイさん) ちょっと抽象的な回答かもしれないんだけど……「STYLE」を任されて一ヶ月くらいの頃かな、当時27歳だったのでお客様が歳上なわけですよ。

(岡村) ふむふむ。

(ヤマギシルイさん) 年齢だけでなく人生経験とか……年収も当然上(笑)

(岡村) (笑)(笑)

(ヤマギシルイさん) なのでマジシャンとしてではなく、あくまで一人の人間として、そういった方々に相手にしてもらえないといけない……という危惧がそのとき生まれて。

(岡村) はぁー、なるほど〜。

(ヤマギシルイさん) なので「上の立場の人」から見たときの信頼感、みたいなものを意識しているかな。

(岡村) はぁ〜、面白いですね!

(ヤマギシルイさん) 上下とか優劣とかだと語弊が生じるから、そうだな……「大小」「多寡」ならまだいいかな。えっとね、「少ない相手」に仕事をするのって簡単なんです。

(岡村) ほう!

(ヤマギシルイさん) そもそもマジック自体にそういう側面があって、「タネを知らない」という点では知識量が「少ない」相手に見せているわけで。……そういうこともあって、同業者相手の商売はできるだけ避けてきましたね。マジシャンがマジシャンに教えるのは、単なる情報の売買になっちゃうから。

(岡村) なるほどー!すごく面白いです!

(ヤマギシルイさん) 僕は自分をパフォーマーとしてのみ位置付けていて、だからその相手はあくまでレイオーディエンスなんです。

(岡村) はぁー、なるほど!

(ヤマギシルイさん) たとえばMAJIONでいくつか発表したりしましたが、あれは野島君の独立祝いに一肌脱いだ感じですね。

(岡村) なるほど〜!素敵です〜。

(ヤマギシルイさん) なのでほとんど無償みたいな状態で作品提供してるはず。

(岡村) へぇー!知らなかったですー!面白いー!

(ヤマギシルイさん) 6月発売のデアゴスティーニでも作品提供してますが、こっちはメイガスさんへの恩返しですね。

(岡村) なるほど〜!

(ヤマギシルイさん) メイガスさんとはmixiで知り合ってもう17年の仲で。

(岡村)  mixi!(笑)たくさんのつながりが見えてきて面白いですー!

(ヤマギシルイさん) マジックの思想で最も影響を受けた人物がメイガスさん。

(岡村) へぇ〜!

(ヤマギシルイさん) 一番衝撃だったのは「メソッドの種類に優劣はない」ということ。……ちょっと話が飛ぶけど、ギミックを使うことが少なくて、それは単に面倒くさがりだから(笑)特別な準備が少ないほうが僕にとっては楽だっただけで。

(岡村) かっこいいっす!!

(ヤマギシルイさん) いやいやいやいや、たとえばギミックカードとか管理できないんですよ……片づけられない子なので(笑)

(岡村) 「片づけられない子」(笑)

(ヤマギシルイさん) 結局ギミックだろうがスライトだろうが目的はただひとつ。それは、観客の脳内に「錯覚」を与えることなんです。

(岡村) ほう!

(ヤマギシルイさん) メソッドの種類に優劣はないけれど、もし同程度の強度の錯覚を与えられるなら、演者本人にとって負担が少ないほうが運用上は絶対に優れている。

(岡村) ふむふむ!

(ヤマギシルイさん) 僕の場合は、細かいアイディアやハンドリングの工夫によって錯覚の強度を担保できたので、結果的にギミックが最小限になったんですが……だから、そういう試行錯誤の成果をメイガスさんに認めてもらえたときは本当に嬉しかったなあ。

(岡村) へへへ、いいですね。

(ヤマギシルイさん) で、メイガスさんから、その辺りの機微をデアゴスティーニに入れられないか……というような話があったので。収録したオイル&ウォーターではその一端がかなり平易かつ明快にまとまっていますね。

(岡村) なるほど〜。面白いですー!

(ヤマギシルイさん) 以上、ここまでが壮大なCMです!!!!!!!!!!!!

(岡村) あーっ!やられましたー!(笑)しかも時間もぴったり!(笑)

(ヤマギシルイさん) おお(笑)

(岡村) 40分間なので!取材時間!

(ヤマギシルイさん) まあまた機会があればいくらでも話しますよー!

(岡村) ありがとうございますー!ぜひまたお願いしたいですー!


【ヤマギシルイさんを取材してみて】
最近マジックバーやマジックカフェなどを開いている人、経営している人に興味が向いており、その人たちがどう生きているかなどが気になっていました。実際にお会いしたことはありませんが、突然TwitterのDMで取材をお願いしました。実はこの取材をお願いする前に、「ツイキャス」をこっそりのぞきに行ったことがありました。するととても気さくに、どなたかとお話しているようすをうかがえました。その姿を見て、わたしもいつかこの人の話を直接聞いてみたい、と思いました。DMを送るときは少しどきどきしましたが、お話しできてとても楽しかったです。今度、金沢に遊びに行こうと思いました。


【おまけ~取材後のアフタートーク~】

(岡村) わたし手品全然出来ませんけどね(笑)

(ヤマギシルイさん) いやいやいやいや。僕もジャパンカップとかの色々出たけど、結局、コンテストでは結果を残せなかったので。あ、なので、レイオーディエンス相手に固執してるのは、一言でいうと、コンテストに対する怨嗟(笑)

(岡村) 「コンテストに対する怨嗟」(笑)

(ヤマギシルイさん) これに尽きる(笑)

(岡村) 手面白いです(笑)手品を考えるの難しくって。全然得意じゃないんですよ。

(ヤマギシルイさん) 反対に手品の内側、どう錯覚を作るかは得意だけど、それって結局マジシャンに種明かししないと評価されにくいので、その点は苦労したなあ。

(岡村) あー!そうなんですよ!それ最近すごく思ってましてー。

(ヤマギシルイさん) 手品の内側が良くできた作品をいっぱい作ったという実感が最近ようやく芽生えたので、それをどう見せるかに集中すればいいからその点では楽かも。

(岡村) ふむふむ、羨ましいです〜。

(ヤマギシルイさん) 楽というか、目標や手段がようやく明確になりましたね。いや、結局ね、お客様のこと信じてなかったんですよ。

(岡村) ほう。

(ヤマギシルイさん) 悩みがあって。マジック見せたらお客様が黙っちゃうんですよ。あとで感想を訊いたら「すごい」って返ってくるけど、それ、俺に気を使って言ってるだけなんじゃないの?みたいな(笑)

(岡村) 面白いですね(笑)(笑)そして少し悲しい(笑)

(ヤマギシルイさん) 多分ね、仮想上の観客をものすごく上に設定しすぎちゃったんだと思う。メッチャクチャ懐疑的なお客様を想定してマジックを作ったら、そりゃあ普通のお客様はフリーズしちゃうよね(笑)

(岡村) なるほど〜。

(ヤマギシルイさん) まあそのおかげで、いまは誰にでも見せられる自信はあるかな。

(岡村) なるほど〜!素敵です~。


取材日 2020.04.11 

※この投稿は2021.1.1に1部修正を加えております

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