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全部嘘だったらよかったのに【オリジナルSS】
全部嘘だったらよかったのに
「嘘も方便って言うじゃないですか?あれ、俺はめっちゃわかるっす。」
初めて会った日、ビールジョッキ片手にそう言って笑った彼を、私は信じられると思ったんだっけ。名前も年齢も職業も偽れるこの世界の恋愛で素直に嘘を肯定する彼は、言葉とは裏腹に嘘をつかない人だったと思う。いや、正確には、嘘をつけなかったんだ、きっと。
「私は別れないから。」
「俺お前のこと裏切ったし…
春の病【オリジナルシチュエーション台本】
春の病
「あ、起こしちゃった?寝て寝て。それとも一回着替える?熱も測ろうか。うなされてたよ。…私?大丈夫、身体は丈夫だから。冷えぴたも新しいの貼ろう。体温計鳴ったね。んー、37.8℃か。まだちょっと熱あるね。食欲ある?色々買ってあるよ!えっとね、ゼリーでしょ、プリンでしょ、梨の缶詰でしょ。え?普通みかん?いいじゃん、梨も美味しいよ?えー?そんなこと言うならあげないんだから…。うそうそ、ふふ。ちょ
さよなら、華開く前に。【オリジナル声劇台本】
「さよなら、華開く前に。」
登場人物:女性1名、男性1名
ある部屋で男女が片付けをしている。
女は何やらダンボールで荷造りをしているようだ。
女「ねぇ、ドライヤー持っていってもいい?一緒に買ったやつだけど。」
男「いいよ。俺こだわりないから新しいの買う。」
女「たこ焼き器は?」
男「1人じゃしないだろ。あげるよ。」
女「私も1人じゃしないなぁ。」
男「女子会とかすれば?」
女「う
春のRadiotalk朗読大賞エントリー一覧
【3/24 3:55更新】
※エントリーは締め切りました。
音声配信アプリRadiotalkにて開催中の「春のRadiotalk朗読大賞」エントリー参加者一覧になります。
「春のRadiotalk朗読大賞」は、一つの作品をみんなで朗読し、誰の朗読が一番リスナーの心を打ったのかを投票で決める企画です。
ぜひエントリー参加された皆さまの朗読をご聴取ください。
【エントリー参加者一覧】
※エント
正しさ【140字小説】
正しい倫理、正しい道徳、正しく理性を働かせ、助けを求める者には救いの手を差し出し、出来うる限りの扶助をする。僕は間違ったことなどないし、これから先も過ちなどは犯さない。困っている人を放っておけない質だから、
「家賃払えなくて。2でどうですか?」
助けてあげるよ。正善な社会。
GHOST【140字小説】
あの日の「ごめんね。」の意味が、あの時わかっていたならと、今になって後悔しても遅くて。君を失ったこの世界で、君を思う気持ちだけ取り残されて、僕はまるで亡霊のよう。時間を巻き戻せたらなんて、そんな非現実的なもしも話ばかりを考えてしまう。最後に君はなにを思ったの?僕は今でも君がどうしようもなく好きだ。
私の椅子【140字小説】
もしも明日、私が世界から消えたとしても何も変わらないでしょう。悲しんでくれる人がいても、すぐに忘れてしまうんでしょう。私が空けた椅子には、また誰かが埋めるんでしょう。いくらでも消費され、いくらでも代わりはいるんでしょう。だから私は、しがみついてしまうんでしょう。
picture in now【140字小説】
「いい思い出だけ残せたらいいのにね。」
彼女は窓の外を眺めながら流れる曲の合間に呟いた。
「それはね、いい思い出だけを反芻したらいいんだよ。」
「今を切り取って、覚えておこうと思う。そしてまた思い出すの。」
「そうだね。僕もそうしよう。」
次に流れてきた曲を僕は忘れないだろう。