unknwon girl

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「宇宙人って、いると思う?」

この問ではっきりした。今日はハズレだ。

マッチングアプリで会うのも何人目か、吟味してデートまでこぎつけたきた俺にとっては痛手だった。この女は思えば最初からおかしかったのだ。見た目はごく普通、22と聞かされていた通り年相応。白いシャツワンピに明るいブルーのデニムを履き、鎖骨まである茶色の髪はゆるく巻いてある。ただ、バッグがやけにでかい。一泊旅行にでも行くのかという程、肩から下げたボストンバッグが幅をとっている。細身で背も小さいから対比があるにしても、あまりにもデートには相応しくなかった。

「言って通り、今日は割り勘でお願いね。」

「全然奢るけど…。」

「いや、私ほんとすごい食べるから。」

笑いながら言うから冗談かと思ったが、この女は本当によく食べる。デート先に選んだ創作居酒屋では、焼き鳥は一通り、サラダは一人でぺろりと食べ、唐揚げにポテトにもつ煮に玉子焼き、挙句チャーハンにパスタ、ピザと来た。常にテーブルは料理で溢れ返り、こちらに取り分ける素振りもなくひたすら食べ続けていた。ただ、とにかく美味そうに食べる表情だけは悪くないだろう。

「そんなにお腹すいてたの?」

「食べないとエネルギー切れになっちゃうんだよね。恥ずかしいんだけど。会計、なんだったら私払うからさ、デザート頼んでもいい?」

「好きなだけ食べな。」

ようやくデザートのパフェとガトーショコラを食べ終わったところで、女が切り出したのが、

「宇宙人って、いると思う?」

これだった。

「あー、いるんじゃない?見たことはないけど、幽霊とかも俺割と信じるタイプ。」

「幽霊はどうでも良くて。宇宙人!」

「君はいると思うわけ?」

「いるんだよね。実は。」

女は急に小声になり、片手を口元に添えて話し出す。

「私さ、宇宙人に乗っ取られてるかもなの。去年の今頃かな、3日間記憶ない時期あって。それ以来とにかく食べてないと気持ち悪くなって倒れちゃったりするし。それにこれ、見て。」

女は右側の髪を耳にかけ、シャツのボタンを2つ外し首元を見せてきた。そこには1センチ角のテープのようなものが貼ってある。

「これね、ICチップみたいなの埋め込んであるの。でもそんなの埋めた記憶ないの。」

「へぇ、ICチップ。なんだろうね?」

「私がアプリやってるのも、ほんとは同じような人探してるからなんだよね。なにか知らない!?」

「君には悪いけど、俺はなんのことだかさっぱりわかんないよ。そろそろ出よう。」

会計するために店員を呼ぼうと呼び出しボタンを押した瞬間、視界が突然ぐにゃりと曲がり、次の目が覚めたときにはベッドの上だった。身体は鉛のように重くて起こせないし、声も思うように出ない。なんとか薄っすら開いた目に飛び込んできたのは、注射器を持った女だった。

「あれ?起きた?あなたさぁ、私の話、否定しなかったよね。だからきっと仲良くなれるよ。私と仲間増やすの、手伝ってね。」

End.









































Radiotalkの収録企画「#お題で創作」に参加した作品になります。
今回のお題は「宇宙人って、本当にいると思う?」

朗読もしてみました。


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