『ざくろの時』#19

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 ぼくはロミと同じようにグラスのはんぶんを飲んでから、言った。「べつに、なんでもいいよ。奇妙なセクシュアリティだろうが、奇妙なジェンダーだろうが、ぼくが奇妙であることには変わりない」
 ロミは目を細めてぼくを見つめた。その微笑みの意味をぼくは掴めず戸惑ったが、それを悟られたくなくて彼女から目をそらし、残りのビールを喉に流し込んだ。みぞおちあたりがかっと熱を持つのがわかる。それか

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『ざくろの時』#18

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「怖い」とロミはぼくの言葉を繰り返す。ロミは顎に手を当て、真剣な面持ちで考え込んでいた。そのひたむきな顔は、幼い子供をぼくに連想させた。「女が怖いの?」
 ぼくは再び首を振る。「わからない」
「じゃあ、私のことは?」
「あなた自身のことは怖いとは思わないよ」ぼくは努めて慎重に話す。誰かと会話するときにここまで神経を使うことは、ぼくにとって初めてのことかもしれない。
「私が本物の

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Princess Rouge

悪徳が栄える歓楽街の路地裏。
単調に唸り、生ぬるい風を吐き出す室外機と酒瓶を詰めた箱の間に蹲っているのは年端もいかない少年。ろくに食べてないのか、ひどく痩せている。薄汚れたジャンパーとスラックスを羽織っているが、明らかにサイズが合わずぶかぶかだ。
貧相な四肢をジャンパーの中で泳がせ、再び膝を抱え直す。
「あー……だりぃー……」
努めて空腹を意識しないようにするが、それも限界に近い。
懐からくしゃく

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引っ越しとかとか

タイトル通り、お引っ越しをするのです。
市内から市内へなので、大規模というわけではないのですがね。
でも7人家族が数年間暮らした家には荷物が多く、生憎私は貧乏性で物を捨てられないのでとても大変です。
なんせ引っ越しが決まったのが9月に入ってからで、9月中には完了しないといけないというハードスケジュールなものでね。

今日は私が仕事お休みで、副業もお休みしたので1日空いていて、私以外の家族はみんなで

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拙い記事を読んでくださってありがとうございます。
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早紀❶

気付けば30を過ぎていた。仕事は一応真面目に無遅刻無欠勤を8年続けている。洋菓子の販売員は眠気さえ何とかなれば気楽に続けられる仕事だ。しかし、和菓子なら私がババアになっても続けられるが、洋菓子はそうはいかない。ババアが売る洋菓子は味が落ちる…。同性の私でさえそう思うのだから、男性からしたら尚更だろう。私は完全に道を誤った。30を過ぎてもまともな出会いに恵まれず、あと何年かすれば職場からも邪魔者扱い

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『ざくろの時』#17

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 やわらかな西日の光でまぶたがあたためられ、ぼくはしぶしぶ目を開ける。気付けばぼくは二人がけのソファに寝転がっていて、ロミがかけてくれたらしい毛布に首元までくるまっていた。どうやらいつのまにか眠ってしまっていたようだ。

 ロミの姿はなく、シャワーの水音だけが夕暮れの部屋の中に響いていた。ぼくはしばらくのあいだ呆けたように虚空の一点を見つめていた。
 鳥男はぼくを探しているだろ

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東京/カザフスタン

「N」はBadooでLINEのIDを公開していた。私は彼女のIDを追加して「お友達になりませんか」とメッセージを送った。「Hi」と簡単に返ってくるだけだった。私は自分の名前を伝え「あなたはどんなお仕事をしているのですか」と聞いた。「I do sex service」と彼女は言った。「OK」と私が言うと「いいの?」と彼女は聞いてきた。もちろんだ。

私が居場所を聞くと、彼女は東京にいると答えた。ただ

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『ざくろの時』#16

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 タクシー乗り場には三台ほどの車が客を待っていたが、その運転手たちはみな一様に、半開きの口から退屈のあまりたましいの七割方が散歩に出かけていってしまったような顔をしていた。ロミはいちばん前に泊まっているタクシーのドアをこつこつこつと叩き、お出かけしている彼の七割のたましいをむりやり引き戻して後部座席のドアを開けさせた。
 タクシーに乗り込み、ロミが運転手に住所を告げると、のろの

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他のnote作者へのコメント1

このシリーズでは気になった記事にコメントしたものを

備忘録として残します。

今回は

「#家出少女 」を見つけたら…… #セックス 以外にもできることがあります、という話

コメント

いい提案ではありますね。
しかし、もぐらたたきの
1匹ぐらいにヒットした感じでしょうか。
問題は、
1 今まで買っていた人が何人これを読み、
そして、そうだと思い、
更に、それが実行できるか、
ですね。
2 大

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ありがとうございます。元気が出ます。

『ざくろの時』#14

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 それから、鳥男のネクタイと、その輪の中に消えていった透明なぼくのことを考える。あれはいったいなんだったのだろう。幻なんかじゃない、このからだからなにかがずるりと引きずり出された感覚は、いまもなまなましくこびりついている。食肉用の豚が腹を裂かれ内臓をきれいさっぱりこそぎ取られるみたいに、ぼくのからだの中から、あの透明なぼくが剥ぎ取られたのだ。あれはやはり、ぼくの一部なのだろうか

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