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短編小説 まとめ

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短編小説のまとめです。
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#いしか

小夏とうざったい奴 955文字【短編小説】

小夏とうざったい奴 955文字【短編小説】

子猫を拾ったら、そいつはとても可愛かった。

メスの三毛猫で、名前は「小夏」

真夏に拾った子猫だから、小夏だ。

けれど…俺が拾ったのは小夏だけではなかった。

「彰(あきら)君!お弁当作ってきたよっ!」

「💢いらない」

「あっ!ねえ、彰君っ!」

小夏を拾った時は、真夏だったからと言ったけれど、その時は雨が降っていた。

よく聞く?不良が雨の中、捨てられた猫を拾う姿にトキメクとかいうやつ

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はじめて切なさを覚えた日 1587文字#青ブラ文学部

はじめて切なさを覚えた日 1587文字#青ブラ文学部

「……どうした?」

「ううんうん……何でもない」

◈◈◈◈

男女の友情は成立する?しない?

もはや不毛な質問のやり取りだと私は思うけれど、それで話のタネが膨らみ、会話が盛り上がるなら、不毛なやり取りも役に立つのかな?とは思うようになった。

「美晴ーー!!待たせたーー!!」

白いロードスターに乗った彼は、少し遅れて待ち合わせ場所にやって来た。

「平気。そんな待ってない」

彼こと、輪島

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鈍いの、私は【女の第六感】1439文字#青ブラ文学部

鈍いの、私は【女の第六感】1439文字#青ブラ文学部

『第六感』→五感に加えてもう一つ持っている六番目の感覚と言われているもの。「直感」や「勘」時には「霊感」などとも言われる。

「ないな、私には」

私、三枝 麻里奈(さえぐさ まりな)は、昔から『鈍感』『鈍感』と言われて育ってきた。そんなに鈍感?と私自信は思うけれど、「ねえ?何かここ空気悪くない?」とか「あ、雨降りそう」とか言われても「えっ?そう?」なんて具合の鈍感さではある。

けれど、そんな私

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またねの代わりに【夏の残り火】

またねの代わりに【夏の残り火】

「うわっ、つめてっ!!」

「ちょっと、水飛沫が飛んでるっ!!」

「あははっ!良いじゃん!気持ちいいっしょ?」

私と彼は、夜の海に来ている。
夏も終わりに近付いているせいか、気温は夜になると涼しくなる様になってきた。

彼は、私の大学の頃の同級生。

名前は『佐原 直光(さはら なおみつ)』私は『柴原 雫(しはら しずく)』同級生という共通点だけだったが、段々と仲良くなっていき、お互いを名前で

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移りゆく景色の中で 【おフランスでは、〇〇ざんす】1046文字#青ブラ文学部

移りゆく景色の中で 【おフランスでは、〇〇ざんす】1046文字#青ブラ文学部

『おフランスでは、お紅茶を頂いて飲む事が私の中での恒例なんざんす』

夜行バスに乗りながら、マダムなセレブタレントの言葉をイヤホン越しに聞く。

あっ、そ。以外の感想は特になく、そんなのいちいち言わなくても良いのに…。

なんて、1人で思ったりする。

夜行バスは、もう少しで消灯時間になる。ゆったりした座席になっている夜行バスは、カーテンを引けば、まるで個室の様に感じる作りのバスだ。

俺は、大都

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忘れっぽい詩の神 1265文字#青ブラ文学部

忘れっぽい詩の神 1265文字#青ブラ文学部

手を伸ばしても
届かないまま
手は空を切り続ける。

迷ったぶんだけ
爪は伸び、
その長さが月日の長さと比例する

伸ばし続ける訳にもいかないから
爪は短くまた切るけれど、
それでも爪は
また伸びる

戸惑いのぶんだけ
伸びて伸びて

月日の長さと
惑いの日々を思う

★★★
『うん。なかなか良いんじゃない?』

「アポロン様…その詩のご依頼、何年前のものですか?」

「………う〜〜〜〜ん。100

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にゃんとなくなんだけどね 806文字#青ブラ文学部

にゃんとなくなんだけどね 806文字#青ブラ文学部

私。ねこ。

普段は公園に住んでいて、人間界で言う所の『地域猫』な私。

ボランティアさんから毎日決まった時間にご飯を貰ったり、私が目を気にしていたり、具合が悪そうだったらボランティアさんが病院に連れてってくれて、元気になるまでお世話をしてくれるの!

私は、そんな優しいボランティアさんが大好き。優しくお世話してくれるし、ナデナデしてくれるし、適度に放っておいてくれるから、とても心地が良いの。

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私だけの特権 964文字#シロクマ文芸部

私だけの特権 964文字#シロクマ文芸部

夏は夜明けが早いから、遅く寝てしまっても薄いカーテンからのぞく日差しが目覚ましとなって起きてしまう。

「………っ〜〜、まだ4時間しか寝てないんだけど…………」

昨日は生理前特有の不眠に悩まされ、夜は全然眠くならず、色々足掻いて見たけれど全部駄目だった。

今日は休みだけれど、ウダウダしてしまいそうな気がする。

………寝不足だから………。

スースー。

テーブルを挟んだ隣のベッドからは、同棲

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記憶の中【白ワンピの女の子】

記憶の中【白ワンピの女の子】

私には、細々とエッセイや物語を書いては投稿している場所があり、その中で良く参加させて頂く様になったユーザーさんの今回のお題が、「白ワンピの女の子」だった。

私はこの言葉を見た時、何処か記憶の奥底で眠っていた記憶が、そっとノックをしてきて、起こして、思い出して…と訴えて来ている様な感覚になった。

「………そうだ………私…………」

◈◈◈
私がまだ小学生だった頃、父方の祖父母の家に夏休みになると

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雨の七夕 1511文字#青ブラ文学部

雨の七夕 1511文字#青ブラ文学部

私は、子どもの頃から七夕の短冊に願い事を書くのが苦手だった。

それに、神社で神様にお願いにをするのも苦手。もし、それを叶えられなかった時、叶えてもらえなかった時、私は神様を裏切ってしまった様な気持ちになるし、裏切られた様な気持ちになってしまいそうだから…。

☆☆☆
「優子先輩っ!今日は七夕なので!会社に飾ってある七夕様の笹に、一緒に願い事書きませんか?」

私の可愛い後輩、友理奈ちゃんが折り紙

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僕だけが知っていればいい【スキャンダル】1264文字#青ブラ文学部

僕だけが知っていればいい【スキャンダル】1264文字#青ブラ文学部

『リザード王女、密かに逢瀬』

『リザード王女、妻子ある男性と密会』

『リザード王女、破局』

『リザード王女、世間知らずの我儘』

これだけ見れば、スキャンダルの嵐だ。と、きっと殆どの人は言う。

けれど、俺から言わせてもらえば、一体……彼女の何を知ってこんな事を言っているのか、俺には分かりかねる。

彼女はこの国の王女。
けれど彼女は三女であり、上に男性の兄弟もいる為、王位継承順位は下位の方

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気になる口癖 2371文字#青ブラ文学部

気になる口癖 2371文字#青ブラ文学部

「心配いらない。投げられてるんだから大丈夫さ!」

「……………」

俺の同級生であり、野球部のマネージャーをしている雨粒 光留(あまつぶ みつる)彼の口ぐせは『投げられるんだから大丈夫』だ。

何かにつけその言葉を言う。

一投げられるんだから大丈夫一

俺を含めた部員の殆どは、何故、光留がそんな風に言うのか知らなかったが、それが光留流の励ましであると自然と認識し、それ以上誰も踏み込もうとしなか

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腐れ縁だから 1923文字#青ブラ文学部

腐れ縁だから 1923文字#青ブラ文学部

「まさ〜、今、達樹(たつき)の機嫌っていい方?悪い方?」

まただ。

「あっ?………………良いんじゃね?」

「そっか!ありがと!」

「〜〜〜っ!!!俺を介して達樹の事を聞くなーーーー!!」

何でこうなんだ。

「まあまあ、そんな怒らないで。
これでいちいち目くじら立ててたら疲れるよ?」

「疲れたとしてもっ、俺には死活問題なんだよっ!何で皆して達樹の事を俺に聞いてくんだよ!?!本人に聞けば

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1滴、貰います 995文字#新色できました

1滴、貰います 995文字#新色できました

僕がしている仕事は、少し…嫌、だいぶ変わっている。一年中割と忙しい仕事ではあるが、1番忙しくなるのが夏だ。

毎年夏になると、社員は皆大きい鞄を持参し、鞄いっぱいに試験管と危険ではない特殊な液体を詰める。

そしてパソコンやスマホを取り出し、各々が担当する事になっている会場へと出発していく。

今回の僕の担当は、野球場。

甲子園をかけた戦いが行われている場所だ。

「毎年のことながら、何だか複雑

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