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僕だけが知っていればいい【スキャンダル】1264文字#青ブラ文学部

『リザード王女、密かに逢瀬』

『リザード王女、妻子ある男性と密会』

『リザード王女、破局』

『リザード王女、世間知らずの我儘』

これだけ見れば、スキャンダルの嵐だ。と、きっと殆どの人は言う。

けれど、俺から言わせてもらえば、一体……彼女の何を知ってこんな事を言っているのか、俺には分かりかねる。

彼女はこの国の王女。
けれど彼女は三女であり、上に男性の兄弟もいる為、王位継承順位は下位の方になる。

そんな彼女を執事をしているのが俺だ。
元々俺は代々この国の王室の執事をしている家系だ。代々王室に仕える事を我が家系の礎として、そしてプライドとして受け継いできた。俺はそんな家系に生まれ、もう幼い頃からリザード王女に仕えている。

彼女の事なら、俺が1番よく知っている。彼女のスキャンダルなんて、断定していい程100%潔白だ。

この国を騒がせたスキャンダルも、全てはちゃんとした理由がある。彼女のスキャンダルは、全て…彼女の優しさから生み出されたもの。

ある時は誰かを庇い、ある時は誰かの悩み相談に耳を傾け、ある時は代わりにその場に居ただけの事。

確かに、世間知らずな所もあるかもしれない…けれど、彼女の優しさは何者にも代えがたい…大切で、唯一無二なものなのだ。

それを分かっているから、王室の面々も彼女のスキャンダルには目も耳も貸さないし、動揺したりもしない。
周りが騒いでいるのを見て、遠目から少し面白がっている位だ。

優しさで意図せずスキャンダルが多くなってしまう彼女の心強い味方達なのだ。

◈◈◈
「ねえ、アヴァン……」

夜、彼女の寝室で、寝巻き姿の彼女に尋ねられた。

「はい。何ですか?」

「……私って……悪女?」

「………………誰がそんな事を仰ったのですか?」

俺は彼女の身の回りの物を整理しながら誰がそんな事を言ったのかと、腹の中が、沸騰しそうなのを何とか無表情で抑える。

「………誰でもないわ……町に売っていた雑誌に書いてあったの……」

「……そんなもの……気にする必要はないですよ。リザード様には、沢山の味方がいらっしゃるじゃないですか…」

「………も?」

「はい?」

「アヴァンも………私の味方?」

「……ええ。誰よりも、リザード様の味方です。小さい頃から、そうお伝えしているではありませんか…」

「……ふふ……、そうよね。アヴァンは1番の味方だわ」

そういうと、安心したのか彼女はあっという間に眠りの中へと入っていった。

俺は、そんな彼女の寝顔を見ながら……
密かに思う。

彼女の本当の姿を、彼女の事を1番知っているのは自分である。周りが何と言おうが、彼女をスキャンダルまみれの女性にしようが…知ったことか……。

俺だけが…………


俺だけが知っていればいい。

彼女が誰よりも優しい事も…野菜が少し苦手な事も、髪の毛が朝起きるとクルクルしてしまって困る事も、彼女の寝顔も笑顔も………

本当の姿を……


俺だけが……



執事であるこの俺だけが、知っていればいい事だ。

〜終〜

こちらの企画に参加させて頂きました!

こんなスキャンダルもありでしょうか?
山根あきらさん、ありがとうございました(*‘ω‘ *)


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