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移りゆく景色の中で 【おフランスでは、〇〇ざんす】1046文字#青ブラ文学部

『おフランスでは、お紅茶を頂いて飲む事が私の中での恒例なんざんす』

夜行バスに乗りながら、マダムなセレブタレントの言葉をイヤホン越しに聞く。

あっ、そ。以外の感想は特になく、そんなのいちいち言わなくても良いのに…。

なんて、1人で思ったりする。

夜行バスは、もう少しで消灯時間になる。ゆったりした座席になっている夜行バスは、カーテンを引けば、まるで個室の様に感じる作りのバスだ。

俺は、大都市と言われる場所から今日でサヨナラをする。

正確には、スポーツで大学まで進んできたものの、もうスポーツは辞め、自分の地元の役所に勤める事を決めたのだ。
試験勉強は厳しく、落ちることも覚悟していたものの、何とか無事合格する事が出来た。

大学の先生や周りには奇跡だと言われ、俺自身も、全ての運をここで使ってしまったかもな〜。なんて、結構本気で思っていたりする。

俺の地元は、周りを山に囲まれた住宅と田畑以外何もない場所だ。

車がなければ生活は大変で、畑をしている人達ばかりだが、標高が少し高い場所にある為、夏は涼しく、川のせせらぎがよく聞こえる。

正直、ご近所付き合いはうざったいな〜と思う時もあるし、噂なんかもすぐに筒抜けになってしまう所とか、正直苦手かな〜なんて思わなくもないが、それでも周りの繋がりや、もしもの時に手を差し伸べてくれる優しさや、何事も持ちつ持たれつである所は、田舎である地元の良い所だと思っている。

そんな俺の地元は、過疎化が急速に進んでいて、それを少しでも好転出来ないかと思った事が、地元へ戻るきっかけになった。

もしかしたら、そんな俺の思っている憧れは打ち砕かれ、粉々になってしまうかもしれない。……そんな怖さもある。

けれど、ずーーっと地元に残り、何もない地元で喫茶店を開業、営業し続けている幼馴染が居ることが、少しの救いでもあり、帰ろうと思えたきっかけだ。

これから先、正直、どう転ぶかは分からない。それでも、幼馴染に連絡を入れた時『ほんとっ!!凄い!かっこいい!!嬉しい!!!待ってるからねー!!』

なんて、!!!多めの返事が来たら、!!!の分だけ何かを返したいと思わずにはいられなかった。

移り変わる景色が、大都会のネオンから暗闇へと移り変わっていく。

仄かに照らされている人々の営みの灯りをバス越しに眺めながら、俺は眠りに入る。

朝になったら


蒸し暑くも、懐かしい緑が広がっている事だろう。


〜終〜

こちらの企画に参加させて頂きました。

山根あきらさん
このような物語でも大丈夫でしょうか(汗)

ありがとうございました!

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