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水木三甫
2024年6月30日 09:24
君とつないだ手の温もりは春の風に消え去り、輝かしい季節には僕一人しかいない。孤独は嫌いではないけれど、君と出会い、君と別れて、孤独の意味はすっかり変わり果てた。真夏の太陽の光を集めて生まれた一羽のモンシロチョウが、波のように揺れながら、季節外れの僕を置いてきぼりにして、目の前を通り過ぎた。
2024年4月1日 08:23
若き日の思いは今も心の裡にあり雨が下水道から溢れるように苦い記憶を僕に思い出させる人の心の移り変わりは季節のように激しい風とともに突然訪れる新しい恋人を見つけた君はまるで翼を広げて飛び立つ白鳥のように清らかな落ち着きの中で生きている忘れたいことを忘れることができない僕は湖に一人残されて過去を悔やみながら空を飛ぶことも出来ずに一生を終えるのだろうか君の幸せを祈りながら生きていく
2024年3月20日 06:15
夢のない世界に僕は眠っている。生も死もない世界に僕は寛いでいる。自意識だけが僕の頭の中で蠢いているけれど、僕はそれに気づかない。何もない無の世界は安らかで、清らかで、淋しくない孤独に満ち満ちている。これが永遠というものなのか。そう思ったときに、一気に雑音と汚濁と悲しい孤独が体を襲ってきた。生と死の世界で僕は目覚めた。でも、夢のない世界は何も変わらなかった。
2024年1月27日 09:02
傾いた時代に傾いた家に生まれ傾いた言葉を呟きながら傾いた道を歩いてゆく傾いた季節に傾いた花を眺め傾いた山の頂上で傾いた太陽に祈りを捧げる傾いた世界に傾いた体を預け傾いた視線で傾いた風景を見下ろす傾いた夜に傾いた孤独を抱え傾いた瞳から傾いた涙を流す傾いた銃弾に傾いた胸を撃たれ傾いた土の上で傾いた人は命を終える
2024年1月3日 11:42
胸の中にポッカリ穴が空いている胃にはしっかり食べ物を送っているし肺には継続して酸素を取り入れているのにみんなが僕を見て笑いながら通り過ぎる子どもたちは僕の穴を通り抜ける遊びに夢中になっている僕はそれを見て笑おうと努力するたまに冬の風が落ち葉を流していく僕はその枯れ葉を穴に通してみるそんな虚しい遊びが僕の穴を広げているみたいに思えるこの穴を僕は何によって埋められるのだろうか
2023年11月26日 12:22
早くしないと逃げちゃうよ今ならすぐにつかまるよだから今すぐつかまえてとにかく僕をつかまえて
2023年11月13日 08:52
一羽のカラスが鳴いていたでも誰も返事をしてくれないカラスは何度も鳴いたけどやっぱり誰も返事をしてくれない仕方がないから隣の町へカラスは空を飛んでったも一度カラスは鳴いてみた今度は返事が返ってきたカラスはやっと仲間を見つけ眠りの森へ帰っていった
2023年8月10日 08:06
何もかもが煩わしくなって何もかもが疎ましくなって何もかもが面倒臭くなって何もかもがつまらなくなって何もかもが嫌になって何もかもが苦しくなって何もかもがわからなくなって何もかもがいらなくなって自分さえもが煩わしくなって自分さえもが疎ましくなって自分さえもが面倒臭くなって自分さえもがつまらなくなって自分さえもが嫌になって自分さえもが苦しくなって自分さえもわからなくなって
2023年8月7日 07:30
愛されるより愛したほうがいいなんてそんなの愛される人だから言えるのよ片想いばかりで振られ続けてきた私の気持ちをあなたは理解できないでしょう愛されない孤独ほど苦しいものはないなんてあなたは理解できないでしょう私の愛があなたに届くなんて思っていないだけど、そんな言葉を私の前で言うなんてあなたって、私が思っていたほど女心をわかってないのね君にだってきっと愛してくれる人は見つかるよだな
2023年7月25日 08:19
僕のことに構わないでくれ今の僕は誰の言葉にも反発してしまうから僕を一人にさせてくれ僕は僕の貝殻の中で眠りたいから僕の名前を呼ばないでくれ僕が僕を嫌いになってしまうから僕の話を聞かないでくれそれはただの寝言と何も変わらないから僕の孤独を壊さないでくれ僕は孤独の世界でしか生きられないから
2023年5月27日 07:13
少年が一人本を読んでいる。教室の片隅で少年は本を読んでいる。クラスメイトはグループに分かれ、おしゃべりやゲームをしている。ときどきグループから離れて、不良っぽい男の子が少年の近くに来て、「一人だけ頭良くなろうとするんじゃないよ」と少年の肩を殴る。それでも少年は一人本を読んでいる。本の中身はまったくわからない。クラスメイトがいる意味もわからない。自分がここにいる意味もわからない。
2023年5月3日 20:30
ざわめきの戻った町でざわめきをくぐり抜けながら歩く目的地はないただ前から歩いてくる人々を右へ左へとよけて歩くまるで通行人に当たったらゲームオーバーになってしまうかのように慎重に、それでも安定したスピードで町を歩く。第一関門はクリアし、ゲームは第二の段階へ入っていく。銀座、原宿、浅草、渋谷、新宿どこにするかは自分で決めるゴールデンウィークの一人遊びは続く
2022年12月16日 09:57
赤い水玉模様の三角帽子と、パジャマのような衣装を身につけ、手と足にはそれぞれ黄色の手袋と靴を履き、顔には赤鼻を付け、まゆ毛は山のように丸く、口紅も口の両端をやや持ち上げて、笑顔を作る。鏡で見ても完璧なピエロ。ただ、舞台には私だけ。観客も誰一人いない。笑ってくれる人は誰もいない。私は孤独なピエロ。楽屋に戻り、もう一度鏡を見る。笑っている自分が見えた。でも、これは作り笑い。
2022年10月16日 06:27
あるべき場所にあるべきものが収まっている世界でジグソーパズルのピースだけが収まるべき場所を探して漂っているあるべき場所を見つけられずにあるべきものの場所を邪魔しながらジグソーパズルのピースだけが世界の調和を乱している結び付く相手も見つけられずに誰から誘われることもなくジグソーパズルのピースだけがお互いの距離感をつかめないでいる昔はみんな繋がっていたのに大きな力が僕らをバラバラ