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50年以上同じ仕事を続けた人を追うメディア「ひとすじ」

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2024年秋には写真集を刊行予定です。 50年間何かを続けるって、すごい。27年生きていて、呼吸以外で毎日欠かさずしているものってない気がするので、そんなすごい人たちに仕事や生き…
運営しているクリエイター

#働き方

「アイヌ文化のおかげでお客さんがくる。こんなありがたい商売はない。」

「アイヌ文化のおかげでお客さんがくる。こんなありがたい商売はない。」

2024年3月下旬。都内は少し春の陽気を感じ始めたタイミングで釧路へ。
想像より雪がない釧路駅からバスに揺られること約2時間。真っ白になった阿寒湖を横目に、アイヌの村を意味する「アイヌコタン」に到着した。

「アイヌコタンにお越しの皆様へご案内します〜」という女性のアナウンス声やアイヌの楽器であるムックリの音が乾いた空気に響き、雪がしんしんと降り続ける、そんな場所だ。

今回はお店を始めて51年、

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「牧場を守るためには、攻め続けないかん」二人三脚で探り当てたチーズづくり

「牧場を守るためには、攻め続けないかん」二人三脚で探り当てたチーズづくり

神戸の閑静な住宅街を抜けてすぐの場所に弓削(ゆげ)牧場はある。
牛舎だけでなく、チーズ工房、チーズハウス「ヤルゴイ」、バイオガス施設、畑など多種多様な施設が集まった牧場だ。

今回お話を伺ったのは、弓削 忠生さん・和子さんご夫妻。
「牧場を守るために攻め続けないかん。」

今でこそ、高級ホテルや百貨店でも取り扱われているチーズを製造しているが、弓削牧場の初代である吉道さん亡き後、牧場の存続のために

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占うことは、困った人に寄り添うこと。

占うことは、困った人に寄り添うこと。

多くの占い店がひしめく、横浜・中華街。メインストリートに面した、「華陽園」で働くのは、この道50年の葵和歌先生。
タロット、手相、占星術…様々な方法で占いをすることができるという葵先生ですが、特にタロットをメインに多くのお客様を占っているのだそう。

初めて葵先生のところに伺う際、私は、占いをしていただくこと、お話を聞かせていただくこと、その両方に緊張していました。しかし、占いをしてもらううちにそ

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『ひとすじ』のいきさつ

『ひとすじ』のいきさつ

こんにちは。ひとすじメンバーの後藤です。
今回はインタビュー記事はおやすみ、プロジェクトのヒストリー編です。
(前回のヒストリー編:「ひとすじ」を一人ではなく、チームでやる理由)

なぜ『ひとすじ』というタイトルに辿り着いたのか、その裏側を書いてみたいと思います。

言葉や名前の説明をすることは、時に野暮だったりします。
名前って、その名前がついた瞬間から、何故だかはじめからそれ以外なかったみたい

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100歳の現役薬剤師「今日も街のみんなの元気のために」

100歳の現役薬剤師「今日も街のみんなの元気のために」

板橋区小豆沢(あずさわ)、周辺にいくつかの薬局が立ち並ぶエリアに、薬局としては珍しく暖簾を出し、不思議で温かな雰囲気が目を引く「ヒルマ薬局小豆沢店」。
2018年に世界最高齢の現役薬剤師としてギネス記録にも認定された(2024年現在は別の方が記録を更新)、比留間栄子さんは、今もこの薬局で働いています。

日々お客様の体調や様子に耳を傾け、心と体を癒す薬剤師であろうと努力を続ける栄子さん。
戦争・貧

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「苦しみは、目だけでは見えない」神父に憧れたパン屋生まれの少年

「苦しみは、目だけでは見えない」神父に憧れたパン屋生まれの少年

晴れた冬の日曜日。福岡県・博多駅は、年末の雰囲気を帯びて、いつにも増して賑わっていました。
そこからタクシーで10分あまりの、街角にそびえる品の良い建物。美野島司牧センターです。
神父のコース・マルセルさんは、この仕事を始めて52年。日本での活動も50年になります。

「日曜にはミサがあります。取材も兼ねてぜひご参加ください」とお声掛けいただき、ひとすじチームは5名でお伺いしました。
約1時間のミ

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塗装技術の染みついた身体と、あふれ出る人情深さ

塗装技術の染みついた身体と、あふれ出る人情深さ

京都府京都市にある「徳岡塗装」で青色の作業車を磨くのは、社長であり塗装工の徳岡 秋男さん。

インタビュー中も、車を磨いたり部品をはめたり。そのスムーズな動きは、まさに身体に染み込んでいるようで、ついつい見惚れてしまうくらい。

飲みの席の知り合いや、勤めていた会社の従業員、お孫さん、97歳のお姉さんなどなど、徳岡さんの口からは、本当にたくさんの人の名前が出てきます。照れたように笑い、そっけなく話

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ちりめんからお守りへ。神仏の魂と機織屋の伝統を宿したものづくり

ちりめんからお守りへ。神仏の魂と機織屋の伝統を宿したものづくり

これまでに、6万1千種類ものお守りの絵柄を織る「松尾織物」。

ちりめんで有名な京都府京丹後市に位置する機織屋(はたおり・や)では、今日も織機(しょっき)が大きな音を立て、忙しなく動いている。自身の体よりもひとまわり大きいその機械を操るのが、この道63年の松尾 信行さん。

百年以上続く、家業である織物業を続けてきた秘訣。ヒントは、自身を新しい物好きだと語る松尾さんの、先を見据え、軌道を調整し続け

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山奥に植物園を。「夢を見ながら終わる人生は幸せである」 信念をこめた地域づくり

山奥に植物園を。「夢を見ながら終わる人生は幸せである」 信念をこめた地域づくり

徳島県神山町にある四国山岳植物園「岳人の森」(がくじんのもり。)
四季色とりどりの草花を鑑賞できる山の植物園でありながら、オートキャンプ場やレストランも併設されています。

23歳で、何もない岩山で「岳人の森」を開発し始めたのが、山田勲さん。「こんなところに人が来るわけない」と地域の人や友人、家族にさえも期待されていなかったと言います。

植物を植えて順調にいっていても、ある時急に枯れてしまうこと

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届け先のわからない手紙、預かります。小さな島の郵便局長。

届け先のわからない手紙、預かります。小さな島の郵便局長。

香川県三豊市、本土から船で15分のところに浮かぶ小さな島・粟島。
そこに、「漂流郵便局」という一風変わった郵便局があります。

ここには様々な事情で直接相手に届けることのできない手紙たちが寄せられ、いつか宛先不明の存在に届くその日まで、手紙たちを漂わせて預かっているそう。
そんな不思議な郵便局で局長を務めるのが、中田勝久(なかた・かつひさ)さん。

行き先を失い漂う手紙とそこに込められた思いを、広

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「ひとすじ」を一人ではなく、チームでやる理由

「ひとすじ」を一人ではなく、チームでやる理由

「一匹狼」

自分のこれまでのフリーランス人生、4年弱を振り返ると、とてもいいことだとは思えないけど、このフレーズに表されてしまう。

もちろん映像制作という仕事柄、クライアントさんはいて、時にはチームで動くし、決して自分だけで完結するわけではないけれど、企画・撮影・編集をできるビデオグラファーの職種も相まって、基本的に一人で動くことが多かった。

そもそも一人っ子で、兄弟もいない人生を歩んできた

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自転車という魔物にとり憑かれて。

自転車という魔物にとり憑かれて。

東京・上野に店舗を構えるスポーツ自転車専門店「横尾双輪館」。外観は新しく、2階にはカフェスペースも併設されているが、実は創業98年の老舗。店内には昔の名選手の自転車も飾られています。

以前の記事で取り上げた、ときわ台のおもちゃ屋フジヤの藤田さんが、横尾双輪館のオーナーである横尾さんを紹介してくださり、今回の取材に繋がった。

人生で一番嬉しかったことを聞くと、口を開けて大きく笑いながら話してくだ

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サーフィン界のレジェンドが歩んだ、「波」瀾万丈の人生

サーフィン界のレジェンドが歩んだ、「波」瀾万丈の人生

私、ライター野澤が茅ヶ崎に引っ越す直前、「出没! アド街ック天国」の茅ヶ崎特集で初めて目にした、サーフィン界のレジェンド。その名も、サーフショップ「GODDESS」社長、鈴木 正さん。
茅ヶ崎の地に住むからには、一度はお会いしたいと思っていた方に、取材をさせていただくことができました。

鈴木さんの人生は、一言で言うならば”波瀾万丈”。人生のあらゆる波に乗ったり、時には巻かれたりしながら、それでも

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町と人に寄り添う、おもちゃ屋の名物オヤジ

町と人に寄り添う、おもちゃ屋の名物オヤジ

初めて降り立ったのに、なぜか懐かしい気持ちになってしまう町、ときわ台。

その町の中でもひときわノスタルジーを感じさせる佇まいの「ホビーストア フジヤ」。
長い間ときわ台の町とそこに暮らす人々を見守るこの店で、今日も真剣な眼差しでおもちゃ・模型作りに向き合うのが、この店の店主・藤田宏さん。

おもちゃと町を愛し、全力で人生を楽しむ”ときわ台の名物オヤジ”の熱い思いを聞かせてもらいました。

長年愛

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