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よりぬき伝奇さん

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これまでこのnoteに掲載した記事のうち、特におすすめの作品に関するものについて、よりぬいています。
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#読書感想文

歴史小説的文法で描く、『モノノ怪』ヒロインの「強さ」と「弱さ」 仁木英之『モノノ怪 鬼』

歴史小説的文法で描く、『モノノ怪』ヒロインの「強さ」と「弱さ」 仁木英之『モノノ怪 鬼』

 新作劇場版が公開され、大ヒットしたのも記憶に新しい『モノノ怪』。その『モノノ怪』の完全新作ノベル――仁木英之によるスピンオフ小説の第二弾です。今回の舞台は、戦国時代末期、九州平定を狙う島津家に抗う人々が暮らす地・玖珠。そこに現れる四つのモノノ怪を巡る、連作スタイルの長編です。

 時は1580年代後半、九州で大きな勢力を誇っていた大友家が島津家に耳川で惨敗して数年。以降、九州制覇を目論む島津家は

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武内涼『不死鬼 源平妖乱』 超伝奇! 平安に跳梁する吸血鬼

武内涼『不死鬼 源平妖乱』 超伝奇! 平安に跳梁する吸血鬼

 いま最も内容の濃い時代伝奇小説を描く作家の一人である武内涼。その作者初の平安もの――そして吸血鬼ものであります。平安末期の京の闇に潜む血吸鬼「殺生鬼」と、彼らに大切な人々を奪われた静と源義経、二人の主人公が死闘を繰り広げる、直球ど真ん中の超伝奇活劇です。

 古代に遙かスキタイで生まれ、大陸を渡り日本に至った、血を吸う者たち――彼らは人と同じような暮らしを送り人は殺さない不殺生鬼と、人の血しか飲

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赤神諒『神遊の城』 甲賀鈎の陣に翔る驚天動地の忍法、そして自由と秩序の物語

赤神諒『神遊の城』 甲賀鈎の陣に翔る驚天動地の忍法、そして自由と秩序の物語

 大友家を題材とした作品を矢継ぎ早に送り出して斯界の注目を集めた赤神諒が、室町時代を舞台に、忍者を題材として描いたのが本作『神遊の城』――いわゆる甲賀鈎の陣を舞台としつつ、驚天動地の忍術を描いてみせた奇想天外な物語です。

 応仁の乱の混乱冷めやらぬ中、九代将軍義尚が六角高頼討伐のために近江に親征した長享の乱。大軍を率いた義尚の慢心、そしてそれと裏腹の諸将の志気の低下等により、勢力では遙かに勝るは

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容疑者は三つ子!? 深まる謎と「歴史」ミステリとしての必然性 潮谷験 『伯爵と三つの棺』

容疑者は三つ子!? 深まる謎と「歴史」ミステリとしての必然性 潮谷験 『伯爵と三つの棺』

 フランス革命の頃、ヨーロッパのさる小国で起きた奇怪な殺人事件を描く、歴史ミステリの傑作です。D伯爵の領地に建てられた「四つ首城」で起きた、元吟遊詩人の射殺事件。何人もの目撃者がいたにもかかわらず、容疑者が三つ子だったことから、捜査は難航を極めるのですが……

 ヨーロッパの通称「継水半島」のD伯爵領の四つ首城――貴族の娘と吟遊詩人の間に生まれた私生児である三つ子の兄弟が、城持ちの身分を目指して、

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三千年の呪いに挑め! 伝説の伝奇ホラーミステリ J・D・ケルーシュ『不死の怪物』

三千年の呪いに挑め! 伝説の伝奇ホラーミステリ J・D・ケルーシュ『不死の怪物』

 美貌の心霊探偵が、イギリスの旧家を襲う不死の怪物の三千年の呪いに挑む、伝奇ホラーの古典的名作です。先祖代々伝わる不気味な予言の怪物が、第一次大戦後にまたもや出現――更なる犠牲者を防ぐため、伝説に挑んだ探偵が知った恐るべき真実とは……

 サセックス州ダンノーの荘園領主ハモンド家――千年以上の歴史を持つこの旧家には、一つの詞が代々語り継がれていました。
「マツやモミの生い茂るところ、星々のもと、熱

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天野純希『吉野朝残党伝』 南朝の少年兵が見た戦いの真実

天野純希『吉野朝残党伝』 南朝の少年兵が見た戦いの真実

 南北朝合一後も吉野に潜み、足利幕府に対して戦いを繰り広げてきた吉野朝(南朝)残党。本作はその吉野朝残党にいわば少年兵として加わった多聞をはじめ、様々な人々の視点から足利義教期の混沌とした世界を描く物語であります。

 馬借の下人として幼い頃からこきつかわれてきた少年・多聞。大和の山中で荷を運ぶ最中に何者かの襲撃を受け、そのどさくさに襲ってきた主を殺した彼は、襲撃者を率いる後醍醐帝の後胤・玉川宮敦

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北山猛邦『人魚姫 探偵グリムの手稿』 少年アンデルセンが挑む人魚姫後日譚の謎

北山猛邦『人魚姫 探偵グリムの手稿』 少年アンデルセンが挑む人魚姫後日譚の謎

 人間の王子を愛し、魔女の力で人間になったものの、想いは叶わず、儚く消えた人魚姫――誰もが知るアンデルセン童話「人魚姫」の後日譚として、人魚姫が愛した王子殺害事件の謎に少年時代のアンデルセン本人と人魚姫の姉、そしてグリム兄弟の末弟が挑む、奇想天外な物語です。

 父を亡くし憂鬱な日々を送る中、父の形見の人形を落としてしまった少年・ハンス。偶然知り合った画家を名乗る黒衣の青年・ルートヴィッヒと共に、

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森谷明子『千年の黙 異本源氏物語』 日本最大の物語作者の挑戦と勝利

森谷明子『千年の黙 異本源氏物語』 日本最大の物語作者の挑戦と勝利

<大河ドラマに便乗して本の紹介その1>
 今なお数多くの人を魅了する『源氏物語』。その物語の存在そのものを題材とする作品も決して少なくはありませんが、本作はその中でもユニークなものの一つでしょう。何しろ本作は、作者たる紫式部を探偵役とした――それも、源氏物語そのものにまつわる謎を解き明かす――ミステリなのですから。

 本作は、二人の主人公を――藤原香子、すなわち紫式部と、彼女に仕える女房の阿手木

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岡田鯱彦『薫大将と匂の宮』 名探偵・紫式部、宇治十帖に挑む!?

岡田鯱彦『薫大将と匂の宮』 名探偵・紫式部、宇治十帖に挑む!?

<大河ドラマに便乗して本の紹介その2>
 源氏物語のいわゆる「宇治十帖」、光源氏の子・薫大将とその親友・匂の宮を巡る物語には続編が、それも奇怪な連続殺人を描く物語があった――そんな奇想天外な着想で、しかも作者たる紫式部と、清少納言を探偵役として描かれる、時代ミステリの古典にして名品です。

 紫式部が描いた宇治十帖――それは、理想的すぎる人物として光源氏を描いてしまった反省から、より人間的な存在と

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阪口和久『小説落第忍者乱太郎 ドクタケ忍者隊 最強の軍師』 ハードで「らしい」忍者たちの「戦い」

阪口和久『小説落第忍者乱太郎 ドクタケ忍者隊 最強の軍師』 ハードで「らしい」忍者たちの「戦い」

 2019年に惜しまれつつも連載を終了した(アニメ版は今も絶賛放送中ですが)『落第忍者乱太郎』、その現時点で唯一の小説版であります。あの物語とキャラクターをどのように小説に……? と思えば、これが想像以上にハードなストーリー。土井先生と六年生がほとんど主役状態の大活劇です。

 今日も今日とて挑戦状を叩きつけてきたタソガレドキ城の諸泉尊奈門を、文房具を使ってあしらっていた土井先生。しかし思わぬアク

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瀬川貴次『紫式部と清少納言 二大女房大決戦』 奇妙なバディ、宮中の霊鬼に挑む!?

瀬川貴次『紫式部と清少納言 二大女房大決戦』 奇妙なバディ、宮中の霊鬼に挑む!?

 いま書店では紫式部や源氏物語、平安時代の関連書籍が様々並んでいますが、平安ホラーコメディの名手が送る本作もその一つ。彰子の女房として出仕した紫式部が、宮中で皇后・定子の霊鬼騒動に巻き込まれ、そこに清少納言が参戦――と、副題通りの、そしてそれにとどまらない快作です。

 源氏物語でその筆名を上げたものの、故あって執筆を中断していた紫式部。しかし中宮・彰子の女房として宮中に招かれた彼女は、彰子の父の

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六道慧『安倍晴明あやかし鬼譚』 晴明と紫式部、取り合わせの妙を超える物語

六道慧『安倍晴明あやかし鬼譚』 晴明と紫式部、取り合わせの妙を超える物語

<大河ドラマに便乗して本の紹介その4>
 初単行本時には『源氏夢幻抄 安倍晴明伝』のタイトルで刊行された作品の改題文庫化された作品は、タイトルのとおり、源氏物語と安倍晴明が交錯するユニークな作品――物語と現実が複雑に入り乱れる平安伝奇の名品です。

 大陰陽師として知られながらも、齢84となり、数年前から衰えを隠せない晴明。しかしある晩、自分が「光の君」と呼ばれる少年となった夢を見た晴明が目を覚ま

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平谷美樹『虎と十字架 南部藩虎騒動』 猛虎脱走! 混沌の謎の行方は 

平谷美樹『虎と十字架 南部藩虎騒動』 猛虎脱走! 混沌の謎の行方は 

 時代小説と歴史小説を中心に活躍する平谷美樹ですが、時代小説においては実はミステリ色が強い作品を得意とする作家でもあります。本作はそれが前面に出た作品――家康から拝領した二匹の虎の脱走を巡って南部藩を揺るがす複雑怪奇な騒動に、藩の徒目付が挑みます。

 かつてカンボジアから徳川家康に贈られた二匹の虎・乱菊丸と牡丹丸を拝領し、盛岡城内で飼っていた南部利直。しかしある晩、この二匹が檻から脱走するという

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東曜太郎『カトリと眠れる石の街』 二人の少女が挑む怪奇伝奇な冒険

東曜太郎『カトリと眠れる石の街』 二人の少女が挑む怪奇伝奇な冒険

 19世紀後半のエディンバラを舞台に二人の少女が冒険を繰り広げる、伝奇色も強い児童文学の快作であります。街に蔓延する謎の眠り病の原因を突き止めるため、カトリとリズ――生まれも育ちも違う二人の少女が、街に隠された秘密に挑みます。

 スコットランドの都市・エディンバラ――新市街と旧市街に分かれたこの街の旧市街で、同級生たちから一目置かれるカトリ。金物屋の養女である彼女は、病で寝付いた父に代り、母の仕

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