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MIND

28
日々、感じていること、思っていること、これからのことを徒然と。
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#エッセイ

優しさじゃないよ。

優しさじゃないよ。

とても好きな人がいる。
彼女は素敵な人で、憧れるところがたくさんある。
何より、彼女の優しさに、私は何度も救われている。

そう言えば、私は彼女と2人でお茶やランチをしたこともまだない。

そんな私にも、彼女はいつも、とても優しい。

彼女とは、子ども同士が同じ学校に通う、いわゆる「ママ友」だ。

初めて会ったのは、入学式の時。
保護会の時、私は、初対面の保護者の方々の輪に入るのに緊張して、まごま

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私の中の8匹の猫 2022

私の中の8匹の猫 2022

2022年最後の夕陽が沈み、今年最後の夜がやってきた。

と言っても、数時間後には先ほど沈んだ太陽がまた昇るのだけれど、少しだけ丁寧に今年を振り返りたくなる気持ちが良い夜だ。

緩やかに広大につながるご縁に感謝した年だった。

同時に、自分の感情がストレッチのように大きく動く年でもあった。まるで私の中に違う生き物が住んでいるみたいに。

それぞれが距離があるようでいて調和していて、猫みたいだなって

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これからの日本が不安な、あなたへの返事。

これからの日本が不安な、あなたへの返事。

私のポストには、たまに手紙が届く。
それをじっくり読ませてもらうのが、私の、とっておきの時間だ。
今日は、そのうちの一通にお返事を書くつもりだ。

お手紙ありがとう。
都知事選を今週末に控えて、質問者さんは自分なりに政治について、東京の未来について考えていらっしゃるのですね。

私は都民ではないので投票権はありませんが、今回の都知事選を注意深く見ていきたい気持ちです。

しかし、学生の頃から政治に

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短所はもしかしたら、あなたの素敵なところかもしれない。

短所はもしかしたら、あなたの素敵なところかもしれない。

思わず目をそらす夏の眩しい光も、
優しくキラキラと光る木漏れ日も、
いつまでも見つめていたくなるような夕焼けも、
好きだ。

そして、
個々様々な光が映し出す、影が、好きだ。

光と影は常に一緒に現れる。
気がついていなくても、そこにある。

どちらかだけが、見えてしまうことがあっても。

よかったら、今日は一緒に、見つめてみませんか?
普段見ていない方を。

先日、質問箱にこんなお手紙をいただき

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いい文はいい人と共に

いい文はいい人と共に

キナリ杯、惨敗。  

キナリ杯とは作家の岸田奈美さん主催の文章のコンテストだ。昨日が結果発表だった。
一夜明け、どうしようもなく書きたい気分になりパソコンを開いた。
書いては消し。書いては消し。
デリートした言葉は世界からは消えても、私の中からは消えない。
いくら書いて消しても、いじけたひがみの気持ちが残っている気がして、嫌になる。

私には、コンテストに落選した時、作品がなかなか届かなくて少し

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「僕は賢い人間じゃない。でも、愛が何かは知ってるよ。」

「僕は賢い人間じゃない。でも、愛が何かは知ってるよ。」

不自由なことは増えたけれど、最近の方がゆたかさを感じるのはなぜだろうか。

今日は雨が降ったり止んだりしている。

どうせ外出自粛だし、子どもたちもスヤスヤ寝ているし、急ぐ用事は何もない。
寝ている赤ん坊の隣に、私もごろんと転がった。

額をかすめるひんやりとした風が、気持ちいい。
お腹がいっぱいで、かすかに眠たい。
赤ん坊の頭から、お日様のような匂いがする。

心地よさに包まれた午後。

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「メンヘラ」という言葉にモヤモヤする理由を考えてみたら愛だった話。

「メンヘラ」という言葉にモヤモヤする理由を考えてみたら愛だった話。

あなたは、誰かに「メンヘラ」と呼ばれたことがあるだろうか。

私にはある。
はっきりと「メンヘラ」と言われた経験が。

何度かデートしていい感じになった男性に、ちょっとしたおもしろ話のつもりで自分の話をした時だった。

彼は明らかにドン引きした表情で、
「それってメンヘラじゃん。俺メンヘラ無理なんだよね。」と言ったのだ。

今振り返ると、確かに、私にメンヘラっぽさがあったことは否めない。

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自称クリエイターからの手紙。

自称クリエイターからの手紙。

私には時々、どこからともなく手紙が届く。
こうやって。

【フォロワー全然いないじゃん。いいねだって全然少ないじゃん。なんで、こんなことやってるの?】

私は、律儀に考える。
なぜ、やっているのか。
なぜ、表現を、発信を、続けているのか。
誰のために?

「一億総クリエイター時代」って、誰が言ったんだっけ。
思い出せないけれど。
その言葉の通り、みんながみんな表現をして、発信している、そん

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「二度とその言葉を使うな!」と言った恩師の話。

「二度とその言葉を使うな!」と言った恩師の話。

大学3年の春。
入ったばかりの研究室の指導教官に、初めに言われた言葉は、「二度とその言葉を使うんじゃない!」だった。

******

外には、冷たい雨が降っている。春の大雨。  こんな日には、私は決まって、彼のことを思い出す。

私が所属していた学科では、大学3年生の時に、研究室(いわゆるゼミ)に入ることになっていた。
研究室訪問では、大本命だった精神科医の教官のところへ行った。  

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【夜明け前】

【夜明け前】

妹が精神科病院に入院した。
病名は、「双極性障害」。

双極性障害は、以前は躁鬱病と呼ばれていた精神疾患で、鬱状態と、その対極の躁状態を繰り返す病だ。
患者の自殺率は一般人口の25倍以上、鬱病の2倍と高い。完治することはなく、一生付き合っていかなければならない病気だ。

妹が高校生の時、母が蒸発し、両親は離婚した。

その後、父と一緒に暮らした妹は、高校を卒業し、専門学校に入学したが、程なくして鬱

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30代モラトリアムで見つけた、「やりたいこと」の見つけ方

30代モラトリアムで見つけた、「やりたいこと」の見つけ方

大人になるために必要とされるモラトリアムという期間が、
すっかりいい大人である30代になった私に、やってきた。

20代は、
目の前のことにがむしゃらだった。  

いっぱいいっぱいに働いた。
妊娠出産を経験した。

迎えた30代。  

ふと、遠くの方を見渡したときに、
先の見えない長い道があった。  

定年があるとしても、まだあと30年くらい残ってるという事実に気づいてしまった。

「果たし

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自己紹介 「神経質な子ども」だった私がなったもの

自己紹介 「神経質な子ども」だった私がなったもの

食べ物の好き嫌いが多い子どもだった。苦手なものは口の中が痛くなった。
匂いに敏感で、車の排気ガスやタバコでよく具合が悪くなった。
人混みが苦手て、帰宅後はどっと疲れた。

そんな私が好きだったもの。

それは早朝。
窓を開けて、吸い込む空気は1日で一番澄んでいる。
朝の匂いは、季節や天気によって違い、頭のてっぺんから足の先まで満たされる。

それは、雪がしんしんと降り積もったいつもの町。
しんと静

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「普通」という凶器。

「普通」という凶器。

ここはとある保育園。
3歳クラス。子どもは10人いる。

雨が降っている日。
今日はみんなで何をしようか?

9人がブロックで遊びたいと言った。
1人が公園に行きたいと言った。

9人は多数決で、ブロックに決まりだと思った。何しろ外は雨だ。
でも、1人は、どうしても公園に行きたいと言った。

あなたはこのクラスの保育士です。
こんな時、どうしますか?

「風邪ひいちゃうよ。」
「危ないよ。

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東京路上ポートレート

東京路上ポートレート

ある、蒸し暑い真夏の日。
大都会、東京。

ジリジリと暑いアスファルト。
はしゃぐ笑い声。
足早に歩いていく人。

そんな中、高架下や日陰には、
ところどころに道の傍らに寝転がる人たちがいる。

彼らと、行き交う人々は、
お互い目を合わせることもなく、
ただの風景のように通り過ぎる。

見ないように、
考えないように、
しているように見える。

その日、私は、
彼らを景色に見ることはできなか

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