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#インターハイ
読切小説「ファーストキス」
序章伊藤正樹は、迷いに迷った挙句、結婚式の招待状には「欠席」で返事をすることにした。
「それでいいの?本当は出席したいんじゃないの?」
伊藤の妻、咲江は言った。
「ううん、いいんだ。あの人のことは、思い出の中で綺麗なままで保存しておきたいんだ。結婚披露宴に出て、あの人のウェディングドレス姿とか、相手の男性を見ちゃったら、俺、ジッとしていられないと思うから…」
「うふっ、そんなところ、昔から
【短期集中連載小説】保護者の兄とブラコン妹(第1回)
1「えっ?転勤?」
父からの突然の言葉に俺が驚いたのも、ある意味当然だろう。
俺は大学2年生の伊藤正樹。今の大学は滑り止めで受けた私立大学で、いまだに第一志望の国立大に未練が残っている。
だが、家計を気にして浪人は出来ないと思いやむを得ず通うことにしたのと、バイトも色々掛け持ちしているので、なかなか授業にも身が入らなかった。
家計を気にする理由には、3歳下の妹の存在があった。
伊藤由美、高校2
【短期集中連載】保護者の兄とブラコン妹(第13回)
<前回はコチラ>
37俺の彼女、石橋咲江に会いたいと妹の由美が主張して、咲江が平成2年4月の日曜日の午後に、いずみ野のアパートに来てくれた。
最初は由美が初めて会った際の不義理を詫び、硬い雰囲気になっていたが、咲江が持ってきてくれたケーキや俺が淹れたコーヒーを機に、少しずつ雰囲気も柔らかくなっていた。
しかし俺は早々に、
「お兄ちゃんは男子禁制ね!」
と由美に宣告され、し
【短期集中連載】保護者の兄とブラコン妹(第18回)
<前回はコチラ>
50今までの由美なら、いくら水泳部優先でも、定期試験の前は一切泳がず勉強に集中していたが、3年生となったこの年は、定期試験よりもインターハイ予選に備え、毎日泳いで感を鈍らせないことを優先していた。
そのためか5月下旬の中間テストでは、いつもより成績を落としてしまったようだ。
「どれくらい成績落としたんだ?」
「ま、まあ平均以上取れてた科目で、平均並みしか取れなかった…って