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心理的描写の作品

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日常の心理的描写をもとに書いた作品をまとめてみました。
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#瞬間

夏を愛せるひとつの理由

夏を愛せるひとつの理由

天窓から入った
日差しの暑さに起こされた午前9時。
輝かしい日光の隙間から彩度の高い青さが
ほんの少し窓の枠内に広がっている。
外に出るのが億劫になるこの時期を
唯一愛せる理由がある。

深く、濃く、どこまでも果てのない
青いキャンバスに描かれた純白のお城。
暑さで歪む道路の境界線。
ボトルに滴る水滴が儚く落ちる光景。
死者を迎え供養するお盆。

眩しいほどの生命たちの輝きや彩度と
生前の思い出と

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夜に魅せられた時の話

夜に魅せられた時の話

誰もいない道路の真ん中を得意気に歩いた。
澄んだ空気と夜空を纏いながら。
昼には人通りが多い道も
180度景色が変わるのが夜のいいところだ。
この道のもつ様々な表情を私は少し知った気でいる。

一歩歩くたびに静かに響く私の足音を聴きながら
少し先にある消えかけた街灯が
点滅するのを見るのが楽しみだった。
この瞬間の私は誰よりも強くて無敵で
まるで夜を独り占めしたかのような
そんな気分に襲われている

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作者A

作者A

まとわりつくように
全身に絡みつく熱さが私を呼んだ。

窓の隙間から微かに漏れる風の音
絶えず刻み続ける秒針。
私の意識が遠のいてる瞬間も
止むことのないものたちの鼓動が
静かに響いている。

カーテン越しに入り込む
午前2:00の月明かりが反射し淡く天井に触れていて
白く照らされた天井と私は
にらめっこをしている。
あと数時間で夜が明ける。

たまに呼ばれて目が覚めるこの瞬間は
決まっていつも過

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ため息

ため息

ふう。と1つ、ため息をついた。
いつものように見る街並み。
いつものように歩く歩道。
いつものように青い空。

なにひとつと言っていいほどに
私の周りにあるそれらは
変わらずにそこにある。
ひとつ、またひとつと
私の心は重くなったり
軽くなったりを繰り返しているのに。

過去を思えば悔やむこと
未来を思えばほんの少しの希望と
目の前にある不安とが入り混じった景色が
常に私の中でぐるぐると回り続けて

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