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③ウチダクミとの出会い
時計を見ると午後8時過ぎだった。
次はバーでも行って、良い雰囲気にして口説いてみるか。
そう考えていると女は俺の目を見ることなく
『日曜だし明日も仕事があるから今日は帰りましょうか。』
と口角を上げて話しかけてきた。
俺の下心を見透かされているようで気恥ずかしくなり、俺は頷くしかなかった。
『こんなにリラックスできたの久しぶり。また会ってくれる?』
女は髪の毛を後ろで束ねながら俺の目
①サボテンをかじる女
ウチダクミは人ごみの間を縫うようにゆっくりと最短距離で近寄ってきた。
ああ、こいつは俺を刺そうとしてるんだろう。
日曜の昼に若い女に心臓を突かれてあの世に行くのも悪くないのかもしれない。
女が長くて黒い髪をなびかせて気怠そうに歩く目を見て、なぜか俺は少しホッとしていた。
『行きつけのカフェに行きませんか?』とウチダクミは自己紹介もろくにないまま、俺を誘った。声は意外にも低くて白いタンクトッ