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⑥取調室にて

今日はウチダさんと初めて会話をした日についてお話しします。

ウチダさんの本名は知らず、ウチダクミとしか知らされていないのでここではウチダさんと呼びます。

ウチダさんに出会ったのは前職の会社の近所にあるコンビニです。というのも、私は会社の近所にあるコンビニで毎日朝食を購入していたのです。

つまりウチダさんはコンビニ店員で私はその店の常連客という関係になります。そして平成〇年〇月〇日午後〇時ころ、いつものように仕事を終えて帰宅しようと会社の近くにある〇〇駅のベンチに座って電車を待っていたところ、偶然ウチダさんと出会ったのです。

ウチダさんと私はただの客と店員という関係ですので、店で買い物をする時に個人的な会話をしたことは一度もありません。ただこの日、私はウチダさんを駅で偶然に見つけたことからどうしても話したいという欲求が強くなり、勇気を出して話しかけました。

なぜ突然話しかけたのかは恥ずかしい話、私はこれまで女性と交際したことがなくどうしても彼女が欲しかったという一方的な理由しかありません。そしてウチダさんに初めて話しかけた日をなぜ覚えてるのかというと先ほど刑事さんにお見せした私のシステム手帳に『ウチダの日』と書いてあるとおり、メモに書き写すほど興奮したからなのです。

刑事さんに話をした内容は覚えているかと質問されましたが、勿論全て記憶しています。それほど私は女性に縁がなく、嬉しかったのです。

その日を境に私は出勤することが楽しくなりました。何故かというとウチダさんに毎朝、コンビニで会えるからです。若い女性に自分のことを覚えてもらえているというのは人生で初めてで衝撃でした。

そして今考えると本当に馬鹿げていますが「もしかしたらウチダさんは俺のことが好きなんじゃないか」と思い始め、コンビニに行ってもウチダさんのレジに人がいると無意味に店内をうろついてウチダさんのレジが空くまで待つようになりました。

ウチダさんは店にお客さんがいないときはレジで世間話をしてくれるようになり、私はそれが楽しみでした。そこから私はウチダさんともっと長く話しがしたいと思うようになり、ウチダさんのアルバイトが終わる時間を見計らって駅で待つようになったのです。

私が退社する時間が午後〇時〇分頃で、そこから徒歩で駅に行くと大体〇時〇分頃になります。そして駅で〇分位、スマホを見て時間潰しをしていると仕事を終えたウチダさんが現れるのです。

私は刑事さんに言われたように偶然を装ってウチダさんと会話するために駅で待ち伏せしていたこと、ウチダさんのことが大好きで可能ならば交際したいと考えていたことに間違いはありません。




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