死ぬとお金がかかります。3. 葬式は、どうする?
父がぽっくり逝きまして。
何も決めていなかったため病院提携の葬儀社を紹介されまして。
お見送りにもいろいろコースがあるわけで。
どうするか速攻決めないといけないんですよね、
判断力が鈍ってる、家族を亡くしたばかりのショックの中で。
お金が有り余ってるお宅なら、盛大な葬式をしてあげればいいだろうけれども、そうとばかりもいかないわけで。
祭壇、お棺、花の数、お坊さん呼ぶ呼ばない、戒名つけるつけない、参列者の見込み人数、香典返しの準備、などなどなど、考えないといけないことはいろいろあるわけですよ。
単純に、火葬だけなら約15万。
喪主が市民葬を申請すれば、条件によるけど市に援助してもらえる。(住んでる地域によるのかもしれないけれども。ウチの市は、あとで市役所に申請しに行って5万くらいが戻ってきた)
亡くなった日から火葬までの日数によっても遺体保管代とか安置部屋代とか変わるだろうし、エンバーミングするしないにもよるだろうし。アンナチュラルな死因究明とかするともっとかかるんだろうけれども。
ウチは、死亡翌日速攻火葬パターンだった。じーちゃんだし安らかな顔してたからとくに死化粧も必要なく、病死だから解剖もなし。
六曜も、本人たちはあまり気にせず。
本当は、母は一日くらい家で寝かせてあげたかったみたいなんだけど、その年は猛暑の初夏で、そのころ部屋のクーラーも壊れてて、死因が死因で「お腹に溜まった血液のせいで腐るのはやいよ」と脅されたら、金銭的にも速攻コースを選ばざるをえなかった。
宗教・宗派が決まっていれば逆に、これです、って提示があってスムースだったのかもしれないけれども、ウチは無宗教・無神論だから、選択肢がありすぎて迷いに迷った。ショックで判断力もなくなってるし。
母が私がいない間に説明された営業のおっさんの「お花いっぱいですよ」の言葉に勘違いさせられて「火葬だけ」コースを選び。その「お花」とは棺に入れるための「花」のことで、祭壇に飾る「花」ではなく。せっかく親せきが飾るための「花」を用意してくれてたのにそれも話の行き違いで自宅に届くことになってしまい、結果、とてもさびしい見送りになってしまった。それが母の心にのしかかってしまったため、のちに、家族でお手製の「お別れ会」をすることにした(もちろん別料金)。
まあ、故人の頭の上で支払いの話を始めたり、落ちた灰を気にせずそのままにしてったり、そこしか空いてないからと早朝に集めた親類縁者を書類やりとりの不手際で前日に分かってたはずなのに連絡入れずに1時間以上待たせたり。あんなに無神経で遺族の気持ちを考えられない社員の多い葬儀社に必要最低限の金額だけしか払わずに済んで、よかったんだけども。そういう最低な葬儀社に当たりたくなければ、事前調査は重要だなーと思った。
心に余裕があるときならば、ああ気遣いのできない可哀想な人たちねー、で済ませられるかもな些細なことも、こっちに余裕がないからよけいトゲトゲしく受け止めてしまう。
よっぽど憎い相手だったんじゃない限り、「家族の死」は結構、思ってる以上にショックを受けることだと思うよ。
火葬するためには、火葬許可証が必要。
亡くなったら死亡届を出さなきゃいけない。
このふたつを知ってる人は多いかもだけど、「死亡届を出さなきゃ火葬許可証が下りない」を知ってる人は少ないかも。それに、何日以内にどこに出すかも知らなかったりあやふやだったりしません? 私はうろ覚えだった。どっちも役所に7日以内、と決まってるらしいですよ。
ちなみに、火葬許可証を取らなきゃ火葬できないから、葬儀社が「死亡診断書」を持ってって、役所に死亡届をだしてきてくれる(そこで一悶着あったんだけども)。もちろん、個人情報が~とか気になる人は自分で行くしかないんだろうけど(というのには、あとで気がついた)。
本籍地の住所も必要だから、現住所と違うときは確認しないといけなくて。ウチは番地があやふやで、それを本籍地のほうの役所で調べるのに時間がかかり、結果、その日中に火葬許可証が下りなかった(17時過ぎ、お役所時間切れ。そのせいで翌日の火葬時間も遅れることになった。それだって、連絡一本くれれば実家に番地の控えくらいはあったわけで)。
その辺の許可証発行料もちょこちょこかかってたんじゃないかなー。たぶん火葬許可証取りは、火葬代に含まれて請求されたんだと思うけど。
死亡診断書は、病院で医師に書いてもらったんだけど。これもいくらかかかってるはず。忙しいお医者さんの、貴重なお時間を割いて書いてもらうものだからね(たぶん)。ちなみに、原本は死亡届を出すときに役所に取られちゃうけど、他の手続きとかでも必要になってくる場合もあるから、何枚かコピーしといた方がいい。
お棺の中に「花」以外に入れていいのは、燃えるもの数点のみ。
父がずーっと趣味でコツコツ解いてたクロスワードパズルの本を一緒に入れといた。その本は、あの日の朝、普通に起きていたらやったのであろう最後のページの一問だけが残ってた。
あと、その日6歳になった保育園の姪っ子が、おじいちゃんに「お手紙」を書いて入れてた。でも、生者の「写真」は入れちゃダメだって。一緒に逝くという意味で、あまり良しとされてないみたい。
宗派があれば、火葬場にもお坊さん呼んでお経上げてもらったりするみたい。ウチはないので、あっさりしたもの。
お棺を炉に入れて、スイッチが押されたら、次に出てきたらもう骨と灰。
骨壺に、みんなが順番に長い箸でお骨を下から入れていく。「立つ」感じに。一通りみんなが入れ終わったら、あとは係の人がひとつひとつ、これは○○骨です、みたいに説明しながら頭蓋骨でフタをするように、最後の灰までチリひとつ残らないように入れてくれる(まあ、残してもゴミで捨てるわけにいかないしねぇ)。
その骨壺にも、選べばグレードがピンキリあるみたいだけども。ウチはスタンダードなヤツ。
遺影も、決めてあると楽かも。父のは、たまたま妹のスマホに、姪っ子と甥っ子抱っこした「じーちゃんの顔」した良いのが残ってたから、それを切り取って加工して引き延ばして、うまい具合に用意できたけど。
(私は昔から写真とかにはなるべくなるべく写らないように生きてきてるので、用意しとかないと家族が困るな……)
その辺のモロモロにもお金がかかったりするけれど、落とし穴は、火葬中のお部屋代。人ひとりの肉体を骨になるまですっかり焼き尽くすのに、1000℃前後の炎で1時間強くらいはかかる。その間、親族が待ってるお部屋。葬儀社に払う火葬代とは別に、斎場に払う部屋代だけで3万強(かなりボリ過ぎだろと思う……けど火葬場の直接の収入源は、もしかしてその辺だけなのか???)。そこに、時間によってはお食事とか飲み物つけたら×人数分かかる。即金で。
喪服一式も必要だし。遠方からきてくれる親類縁者、友人には、本当ならお車代とかもいるだろうし(ウチは甘えた)。時間によっては食事もいるし。
ウチは、待ってる間は食べなくて、火葬のあと、てんぷらの小料理屋を押さえておいて極近い親族だけで、精進料理を振る舞った。これに4万くらい。
人が死ぬと、あっという間にお金が飛んでいく。思ってもみないところでもスルッと。でも、肉を焼いて骨を壺に納めるだけじゃまだ終わらない。
骨壺を、お墓に納めないといけないんですよ……フフフ。
火葬が終わると、火葬場から埋葬許可書を出してもらうんだけど、お墓に埋葬するときにこれが必要になる。それまでちゃんと取っとかなきゃなんだけど、ウチは火葬場の人が骨壺の外箱に一緒に入れておいてくれてたから、なくさずに済んだ。たぶん、どこの火葬場でもそうなんじゃないかな(お墓を移したりするときにも必要みたいだから、そのまま一緒にお墓の中だし)。
ちなみに、葬式はやったほうがいいか、やらなくていいか問題。
まあ、葬式は、見送るほうの気休めみたいなものだから。ウチはやりません、という家族でもいいと思うし、私個人は(自分のは)要らないと思ってる。でも、故人の友人知人が多いほど、やったほうが遺った家族が楽。
何故なら、一度で済むから。
付き合いのある誰かが亡くなったと聞くと、親しいほど、駆けつけたくなるもので。平素なら嬉しいことだし、家族同然の親類くらいまでなら、遺族にとっても心強いんだけれども。
あまり知らない会社の同僚とか、知人レベルの方々のお悔やみが、ぽろぽろぽろぽろ「自宅」に来てくださると、大変。お気持ちはとってもありがたいの。故人の別の面を知れたりして、嬉しいし。でも、亡くしたばっかりで、心の余裕がないの。人数によっては、食器や座布団も足りないの。お酒やお持たせを、急遽買いに走ったり。行き届いてないとこを掃除したり。遠路きてくれたら、故人に恥をかかせないためにも、せめてせめてとおもてなそうと思うの。それが、何回か続くの。
そのたびに、何故死んだか、どうやって死んだか、イチから話さないといけないの。それがその時の精神状態には、地味にシンドイ。
むしろ、一周忌とか、三回忌とかだったら、こっちも余裕を持ってお話しできたり、対応できたりすると思うんだけど(今、こうやって書けているように)。初七日も四十九日もまだの頃は、人をおもてなしできる状態じゃない。ほんとは。でも、そこに来てくださるの。嬉しいけど。大変なの。「予想外の出費」にもつながるし。お気持ちは、ホントに嬉しいんだけども。
(まあ私も、家族密葬だった中学唯一の友人の実家、四十九日以内に行ったしなぁ……)
だから、ありがたい波状攻撃で家族が疲弊しないためには、葬式をやったほうが、遺族が楽。
というようなことがいろいろあり、ウチは四十九日に合わせてお手製「お別れ会」をした。
お読みいただき、ありがとうございます。
よろしければ、こちらもよろしくどーぞ。
『死ぬとお金がかかります。』
1. 老いた親との別れ方。
2. 父がぽっくり逝きました。
3. 葬式は、どうする?
4. 戒名って、要るの?
5. 仏壇が、ないのだよ。
6. お墓も、なかったのだよ。
7. 死後の手続き。
8. 葬式代わりのお別れ会(お手製)
9. 遺品整理も大変なのだ。
10. 死ぬと入ってくるお金。
11. 父親との最後の会話。
番外. 親友の義母の場合。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?