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マー君
2022年7月31日 18:11
少女は丸い窓から外を眺めた。毎日、同じ時間にここにやってくる。この時間になると見えるのだ。暗い空間の向こうに、青い星が。母親からは、あの星がふるさとだと教えられた。ふるさとというのは生まれた場所のことだ。覚えていないというと、「当然でしょ。あなたはここがふるさとなの」ここでは、みんなが同じところで生まれる。ふるさとという言葉に意味があるとは思えなかった。それでも、ふるさとという
2022年4月5日 18:08
子供たちは、じゃれ合うようにして遊んでいる。僕は、それを眺めながら、今日も静かな夜空に感謝をする。そして、いつものように報告をする。子供たちは、ほら、元気だよ。3人の子供は、みんな楽しそうに走りまわっているよ。もちろん、返事はない。妻はもうこの世にはいない。彼女は子供の成長を見ることなく亡くなった。僕は、毎日、毎夜、こうして、妻に語りかけている。僕たちは常に遠距離恋愛だった。
2022年3月5日 18:35
その男は突然話しかけてきた。「僕、あそこに帰りたいんです」年齢は同じ30代半ばあたり。同じようにスーツを着ている。一見、普通のサラリーマンだ。昼休み、公園のベンチでサンドイッチを食べ終わった頃に隣に腰掛けてきた。そして、突然話しかけてきたのだ。「僕、あそこに帰りたいんです」その男は空を指差して、もう一度言った。ここは関わらない方がいい。席を立とうとした。「思い出したんです
2021年11月23日 20:22
久しぶりの休日だった。遅く起きた僕は送られてくるニュースをベッドで読んでいた。子供たちは外で遊んでいる。あまり高いところに行っちゃダメよ。妻の声がする。どうせあのおもちゃでは高度1キロくらいにしか行けないだろう。それでも油断すれば大けがをする。突然、コール音がベッドの枕のあたりから響き渡る。研究所からだ。片手でスクリーンを目の前に呼び出す。すぐに来られるかね。所長は休みのと
2021年11月16日 17:29
マンションに戻り、明かりをつける。マスクを蓋のついたゴミ箱に投げ入れる。手を丁寧に洗う。脱衣所で衣服を脱ぐと、そのままバスルームに入る。一日の疲れを洗い落とすように熱いシャワーを浴びる。食事は勤務先の1階にあるコンビニで済ませてきた。冷蔵庫から缶ビールを取り出す。部屋の隅に置かれた小さな机に向かい、ノートパソコンを立ち上げる。ベランダからはるか彼方の星が一瞬小さく輝いたのを確認する
2021年10月27日 18:03
今日も携帯が鳴る。ーやあ、そっちは夜かな。もう、時間の感覚もなくなっちゃったよ。あたしは聞いているだけだ。ー君に会える日が楽しみだよ。でも、もう少し時間がかかりそうなんだ。彼は楽しそうに話し続ける。ーすごいと思わないかい?こんなに離れたところから、君と話ができるなんて。多分、彼の目には窓の外の景色が映っているのだ。ーここからはもう地球は小さな星にしかみえないよ。 でもそれだけ僕は目
2021年10月18日 16:29
ごらんください。発掘されたカケラの数々です。あちらの青みを帯びているのが幸福のカケラ。あれが夢のカケラ。さらにこれが愛のカケラ。もうかなり色が落ちていますが、元はきれいなピンクだったと思われます。その他にも、情熱のカケラ。沈黙のカケラ、平和のカケラ等々、かなりの数になります。こんなにカケラばかり集めて彼らは何をしていたのか。そうですよね。おっしゃる通りです。カケラを集めるくらいなら