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私の出会った先達の人生訓

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新聞社で定年を迎えたこともあって、夢を追い、共に生きる社会を願い、先達との邂逅に恵まれた。人生をより豊かにしてくれた先達との出会いを伝えよう。
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私の出会った先達の人生訓 はじめます

私の出会った先達の人生訓 はじめます

 新型コロナ禍による世界の死者は、2021年6月現在380万人を超え、なお増え続けている。終戦の前の年に生まれた筆者は「戦争」を知らないが、まるで目に見えない敵との「戦争」のように思う。「人生80年」、それ以上の超高齢化社会の日本ゆえ、重症化や死亡率が高く予期せぬ難事となっている。昭和、平成、令和と生きてきたが、これほど命の儚さと、日常の大切さを思い知ったことはない。これまでの生とこれからの生を思

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「note」 連載の「私の出会った先達の人生訓」が、本になりました! 

「note」 連載の「私の出会った先達の人生訓」が、本になりました! 

短いようで長い人生、見知らぬ人との出会いは不思議だ。
本来なら接点がない人と偶然か、必然か交差する。
そして人生の一時期、懇親を重ねることになる。
そうした不思議な出会いの数々を綴った。
 
 断捨離より大切な「終活」とは?  人生を豊かにした出会いの残夢整理――。『絆で紡いだ人間模様――私の出会った先達の人生訓』に綴った不思議な出会いの数々。新聞社を定年の著者が、生きることの喜びを伝える。

 

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壮大な挑戦、進化し続ける美術家の蔡國強さん「戦争と破壊」や「平和と再生」などをテーマに芸術表現

壮大な挑戦、進化し続ける美術家の蔡國強さん「戦争と破壊」や「平和と再生」などをテーマに芸術表現

 私が4半世紀前に出会ったアーティストの一人、蔡國強(さい・こっきょう、ツァイ・グオチャン)さんは、今や現代アートの世界的なトップスター

になった。国立新美術館とサンローランは、6月29日から8月21日まで、「蔡國強 宇宙遊 ―〈原初火球〉から始まる」を開催。日本では8年ぶりの

大規模な個展だ。朝日新聞社時代、広島と神戸で実施された蔡プロジェクトに関わった私は、その後の海外展示を含め着目してき

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日本の美術・芸術分野の重鎮、木村重信さん 美とは何か、美術館の役割を追求した識見と足跡

日本の美術・芸術分野の重鎮、木村重信さん 美とは何か、美術館の役割を追求した識見と足跡

 国立国際と兵庫県立の両美術館長を務め、一人で『世界美術史』(1997年、朝日新聞社)を著した美術史家の木村重信さんが91歳で逝去されてまもなく6年半になる。民族藝術学会名誉会長を務め、日本の美術・芸術分野の

重鎮として長らく重責を担われた。朝日新聞社時代に、企画展や特集記事の原稿依頼などで指導していただいた。定年後も文化講座で対談の機会を与えられ、拙著に序文を寄せていただくなど、2017年に亡

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歴史地理学者の千田稔さん 学術研究の人生を邁進、幅広い見識で諸活動

歴史地理学者の千田稔さん 学術研究の人生を邁進、幅広い見識で諸活動

「人生100年時代」といわれるが、その第四コーナーを回った現在、時にふれ来し方を振り返る。順風満帆とは言えない人生の過程で、その後の人生に大きな影響をもたらせた、キーパーソンともいうべき出会いがあった。歴史地理学者で、奈良県立図書情報館館長の千田稔さんは、まさにその一人だ。

新聞社の記念企画で、歴史上実在した玄奘三蔵をテーマに一大プロジェクトに挑んだ私にとって、羅針盤のような役割を担っていただい

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「写仏」普及へ心血注いだ安達原玄さん 独学で拓いた業績と遺志は引き継がれて活動展開

「写仏」普及へ心血注いだ安達原玄さん 独学で拓いた業績と遺志は引き継がれて活動展開

 はるかに富士山を望み、南アルプスの山々が連なり、八ヶ岳の懐に抱かれた山梨県北杜市清里。まさに大自然の一角に仏画美術館がある。仏の姿を写

す「写仏」の普及に心血を注いでいた安達原玄(本名・秀子)さんが1995年、釈迦の誕生日4月8日に美術館を開館した。館内の仏画や曼荼羅図はす

べて玄さんが長年かけて制作した苦心作だ。それから20年の歳月が流れた2015年3月9日、玄さんは不帰の人となった。しか

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日中相互理解促進へ尽力 小島康誉さん新疆ウイグル自治区で遺跡保護研究や人材育成

日中相互理解促進へ尽力 小島康誉さん新疆ウイグル自治区で遺跡保護研究や人材育成

 日本と中国が国交正常化して半世紀が過ぎた。以来、日中関係は経済、文化、人的交流等の幅広い分野で、着実に進歩を遂げているが、尖閣諸島の領有権問題をはじめ、中国と台湾との緊張や新疆ウイグル自治区の人権問題などの困難な課題もある。その「新疆を第二の古里」とし、改革開放以降の発展を見守ってきたのが、新疆ウイグル自治区政府顧問の肩書を持つ小島康誉(やすたか)さんだ。実業家から僧侶になり、文化遺産保護研究や

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沙漠緑化へ一筋の人生、遠山正瑛さん信念を貫く学究と実践、マグサイサイ受賞

沙漠緑化へ一筋の人生、遠山正瑛さん信念を貫く学究と実践、マグサイサイ受賞

 中国の広大な沙漠を緑化しようと一筋の道を歩まれた遠山正瑛・鳥取大学名誉教授が2004年2月27日に亡くなられて、はや18年の歳月が流れた。その遺志は受け継がれ、1991年2月、遠山さんが中心となって設立した日本沙漠緑化実践協会の「緑の協力隊」が、現在も活動を継続中だ。地道な国際貢献が評価され2003年8月、遠山さんは「アジアのノーベル賞」と呼ばれるマグサイサイ賞を受賞された。「我々は沙漠を研究す

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『西遊記』研究の第一人者、中野美代子さん  妖怪とたわむれ、孫悟空を蘇らせた“女傑”

『西遊記』研究の第一人者、中野美代子さん 妖怪とたわむれ、孫悟空を蘇らせた“女傑”

 短いようで長い人生、見知らね人との出会いは不思議だ。本来なら接点がない人と偶然か、必然か交差する。そして人生の一時期、懇親を重ねることになる。そうした不思議な出会いの一人に、北海道大学名誉教授で、中国文学者の中野美代子さんがいる。中野さんは、孫悟空が活躍する西遊記研究の第一人者だ。1997年6月、前年に北海道大学教授を定年後、札幌に在住していた中野さんに初めてお会いした。私が朝日新聞社で企画した

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漆職人の道へ回帰、角偉三郎さんを偲ぶ 銘と決別、能登に生き「わが道」を追求

漆職人の道へ回帰、角偉三郎さんを偲ぶ 銘と決別、能登に生き「わが道」を追求

 日本最大の漆産地として知られる石川県・輪島に、「かたち」にこだわる職人、角偉三郎さんがいた。「輪島に角あり」と一目置かれ、国内外で高い評価を受けてきた角さんは2005年10月26日に65歳で急逝し、17年になる。約15年ものお付き合いがあり、企画展の実現は私の宿題であった。死の直前、病床から代表作を集めた作品展に期待し、自ら作品リストを作成していた。作家から職人の道に回帰した「漆人 角偉三郎遺作

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あくなき挑戦、備前・陶芸家の森 陶岳さん備前焼の神髄めざし85メートルの巨大登り窯

あくなき挑戦、備前・陶芸家の森 陶岳さん備前焼の神髄めざし85メートルの巨大登り窯

 備前の陶芸家、森陶岳さんを知って、4半世紀になる。朝日新聞企画部に在籍していた時代に展覧会を企画して以来だ。その後もお付き合いは続き、火入れや窯出しの際は出向き、大阪や東京、奈良や岡山、輪島など各地でお会いしている。ただ新型コロナウィルスの感染もあって、ここ数年は電話で近況を聞いていた。しかし陶岳さんの作品は、年に数回訪ねる京都の相国寺承天閣美術館に常設展示されていて鑑賞している。備前特有の色合

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持続する志、獄死の朝鮮詩人「尹東柱」を一書に 4つの異なる側面から朝鮮近・現代史に触れる

持続する志、獄死の朝鮮詩人「尹東柱」を一書に 4つの異なる側面から朝鮮近・現代史に触れる

 韓国の代表的な詩人・金芝河(キム・ヂハ)の死去が伝えられてほどなく、やはり国民的詩人といわれる尹東柱(ユン・ドンヂュ)を取り上げた新刊が届いた。タイトルは『尹東柱・詩人のまなざし』(耕文社)。 

 著者は朝日新聞OBで大阪府枚方市在住の高橋邦輔さん(84歳)。著書に添えられた文章に「老境を迎えて、もう執筆と出版は無理と思ったが、尹東柱の清らかな詩風にいざなわれ、最後の仕事として小著を残すことに

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経済界で活躍した二人が70歳過ぎて著書パワー満載、自分の体験や、信念と志を社会へ発信

経済界で活躍した二人が70歳過ぎて著書パワー満載、自分の体験や、信念と志を社会へ発信

 超高齢化社会、定年後も長い人生が続く。とはいっても1回きりの人生をどのように生きるかは重大な問題だ。経済界で活躍されたお二人が、これまでの人生で、体験したことや、なおも志を持って生きていることを書き残し後世に伝えたいと、本を出された。いずれも思い入れたっぷりに綴った300ページを超すパワー満載の力作だ。とてもエネルギーのいる執筆だが、それだけ意義のあることだ。

 私の新聞社時代の先輩でもあった

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戦争を許さず、人間愛を追求した映画監督の新藤兼人さん 「生きているかぎり 生きぬきたい」生涯貫いた映画人生

戦争を許さず、人間愛を追求した映画監督の新藤兼人さん 「生きているかぎり 生きぬきたい」生涯貫いた映画人生

 映画監督の新藤兼人さんは、2012年5月29日他界し、はや10年の歳月が流れた。戦争を許さず、人間愛を追求した監督作品49作を遺し、100歳の大往生だった。99歳で49作目の『一枚のハガキ』を撮ったが、なお撮りたかった作品の創作ノートが私の手元にある。原爆をテーマにした「太陽はのぼるか」だ。一周忌を機に、亡き新藤監督への鎮魂のオマージュとして、『幻の創作ノート「太陽はのぼるか」―新藤兼人、未完映

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