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頭のすみっこ日記

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頭のすみに残っている些細なことを、せっせと文字に起こした日記。
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新しい季節は、いつだって雨が連れてくる

新しい季節は、いつだって雨が連れてくる

タイトルの美しい一文は恩田陸さんの小説『ユージニア』の書きだし。

先月末に降りつづいた雨が、長らく空を覆っていた冷たい空気を取りこんで流れていったことで、麗らかな春の訪れを予感させている今、ぴったりな一節だと思ったのでお借りすることにした。

それにしても、暖かい。4月ってやっぱり春が似合うなとしみじみと実感するくらいには、過ごしやすい陽気に気を良くしてしまう。

個人的に、暖かな春の午後、自身

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近づく気配のないスカイツリーに向かってひた走る

近づく気配のないスカイツリーに向かってひた走る

先週、夜に出かけてエッセイを書いたところ、思ったよりもスラスラと言葉が浮かんできた。

さらには、久しぶりに重い腰をあげて走りに出かけることもできたのもあって、まさにいいこと尽くめ。

要するに、ランニングとエッセイを紐づけてしまえば、どちらもいい感じに続けられるのではないか、そう思ったのだ。

そんなわけで、浅はかに一蓮托生を決意して、今回も走り終えてすぐにPCの前に座っては、文章を書いているの

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不安を薄めるために夜の空気を吸いこみにいく

不安を薄めるために夜の空気を吸いこみにいく

久しぶりにとっ散らかった文章を書きたいなと思って、暗くなってから外へ走りに出かけた。

そして、走り終えて、この文章を書いている。

本当は家に帰ってきてすぐに書こうと思っていたのだけれど、あまりにも手が悴みすぎてキーボードが打てなかったので、シャワーで体を温めてから、あらためてPCの前に座る。

そう、外に出たら寒かったのだ。
それも、圧倒的に風が強かった。

どれぐらい強かったかというと、歩く

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変わらない日々を拠り所にする尊さと儚さ【映画:PERFECT DAYS 感想】

変わらない日々を拠り所にする尊さと儚さ【映画:PERFECT DAYS 感想】

その映画には、見知った道や風景が写っていた。

建物の隙間から見えるスカイツリーも、隅田川に暮れる夕日が望める桜橋も、東京で暮らすようになってからはお馴染みとなった光景だった。

しかし、映画のセリフを借りるならば「この世界は、ほんとはたくさんの世界がある。つながっているようにみえても、つながっていない世界がある」。

映画を通して描かれている風景は、自分が生活するなかで何気なく通りがかる場所なの

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鼻声になると別人になった気がする

鼻声になると別人になった気がする

気づいたときには鼻声になっていた。

1月は旅行やら友達の結婚式やらでバタバタしていたのだけど、ようやく予定が終わったと安堵していたのも束の間、盛大にかぜをひいてしまったのだ。

体のだるさ、喉の痛み、鼻水、頭痛、しまいには発熱。

かぜの症状フルコンボみたいなかぜをひき、寝ても覚めてもなおらない負のループ。3日間でティッシュ2箱分くらい鼻をかんだ気がする。

コロナでもインフルエンザでもなかった

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子どものころの不思議で止まっていること

子どものころの不思議で止まっていること

最近、不思議な本を読んで、子どものころに不思議だったことを思い出した。

ミステリ、ファンタジー、SF、青春、恋愛。
5つのジャンルの物語が一同に会する街で、真相を知っているのは読者だけ。

ここまで舞台設定に惹かれるあらすじがあるだろうか。
とてつもないワクワクを感じる、森バジルさんの短編小説。

とある街を舞台に描かれる、全く異なるジャンルからなる5つの物語は、それぞれの世界と交わらずとも、少

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2024年は月ごとにテーマを決めて興味を深掘りしてみる

2024年は月ごとにテーマを決めて興味を深掘りしてみる

これまで小説を通して、たくさんの興味に出会った。

思いがけない興味に惹かれて、実際にその分野について調べてみたり、現地に行ってその魅力を体感してみたり、とりあえず物語から続く矢印の方向に歩いてみることが多かった。

今年は、そんな物語で出会った興味を
もっと深掘りしてみたいなと思っている。

きっかけは、安壇美緒さんの『ラブカは静かに弓を持つ』という小説を読んだことだった。

上司から音楽教室へ

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2023年に演奏した曲の備忘録

2023年に演奏した曲の備忘録

今年、地元の友人に誘われて何度かスタジオで演奏する機会があった。

もはや、部屋のインテリアと化していたベース。

3年ぶりくらいに楽器を手にとって弾いてみると、それはもう初心者に逆戻りした気分になる。こんなに難しかったっけ。

大学の軽音サークル時代の同期、先輩も交えながら、ゆるゆると演奏したい曲を演奏する空間はとても心地よかった。スタジオ後の飲み会のほうが本番だった説も否めないが。

とにもか

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2023年に書いたnoteを振りかえりながらnoteへの想いを整理する

2023年に書いたnoteを振りかえりながらnoteへの想いを整理する

今の自分にとって、noteはどんな存在だろうか。
最近、そんなことを考える。

書き始めたころは、日記みたいなものだと思っていた。

自分が日常生活のなかで経験してきたことや、忙しない日々のなかで流されてしまいそうになるハテナを拾いあつめて、言葉にする場所。

たまに友達が読んでくれるくらいで、基本的には頭の片隅に浮かんでいる想いを忘れないように書きとめるために使うものだった。

その後、ふとした

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断捨離の「離」に抗う心は手放せない

断捨離の「離」に抗う心は手放せない

年末の足音が聞こえてくる季節になると、世の中のそこかしこで囁かれる言葉がある。

それが「断捨離」。

そもそも断捨離という言葉、パワーワードのよせ集めすぎる。
「断」も「捨」も「離」も強い。
勝手な想像だけど、剣道とか得意そう。

そんな三番勝負でコテンパンにされそうな「断捨離」を毎年のように計画するも、毎年のように頓挫してしまう自分にとって、この時期はソワソワと落ち着かない気分になる。

毎回

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『葬送のフリーレン』を観ながら涙を流すことについて考える

『葬送のフリーレン』を観ながら涙を流すことについて考える

最後に、人前で涙を流したのはいつだろうか。

軽音サークルに所属していた大学生のころ、卒業ライブでラストの曲を演奏するときに、今までの記憶が走馬灯のように駆けめぐって、不意に涙が溢れそうになった。それが、最後かもしれない。

もちろん、人前以外だといくらでもある。

人間と動物とのハートフルな物語やスポーツ名場面に対して、涙腺はなすすべないほど無抵抗で、毎年、M-1グランプリのアナザーストーリーを

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15年の時を経たとしても、まっさらな気持ちで作品を読みたい

15年の時を経たとしても、まっさらな気持ちで作品を読みたい

先日、初めて湊かなえさんの「告白」を読んだ。

中学校の終業式の日に行われたホームルーム。

幼い娘を校内で亡くした女性教師が放った衝撃の告白によって、騒がしかった教室は一転して静まりかえり、異様な雰囲気をまとったまま、物語は幕を開ける。

彼女の告白によって火蓋が切られると、それぞれの章でクラスメイト、犯人、犯人の家族と語り手を変えながら、しだいに事件の全容が浮き彫りになっていく。

語り手とな

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憂鬱な曜日を小さな楽しみが変えてくれる

憂鬱な曜日を小さな楽しみが変えてくれる

自分には、今まであまり好きではない曜日があった。

社会人になってから毎日、会社に通勤する生活を送っていると、休日が終わった途端に迫りくる膨大な仕事の波に憂鬱になる人も多いだろう。自分もそう。

そんな、通勤している平日の5日間のなかでも、特に好きではなかったのが火曜日。

ちなみに、1番好きなのは金曜日。「金晩」という言葉が持つ無敵のパワーは、誰もが体感したことがあるはずだ。

他の曜日だと、木

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夏の終わりに『chelmico』のポッドキャストを聴きあさる

夏の終わりに『chelmico』のポッドキャストを聴きあさる

夏の終わり、気持ちを上げるために聴いているポッドキャストがある。

それが『chelmicoのオールナイトニッポンPODCAST』。

RachelとMamiko(敬称略)の二人からなる日本人ラップデュオ『chelmico』の軽快なトークが炸裂する、30分のラジオ番組。

ついつい聴いてしまうのには訳があって。

なんといっても、パーソナリティの2人がずっと楽しそうに、ずっとポジティブに、全てをさ

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