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#240 その「数字」の裏にある、「測る」ことの重要性

数字で示すと一見非常に分かりやすく、伝わりやすくなります。
一方で、その数字は一体どう「測って」出てきた数字なのか、が大事なんだな、というメモ。


1、消費者物価指数の測り方(3月10日日経新聞の記事より)

昨日(3月10日)の日経新聞朝刊29面に「行動変容、実態の計測難しく」という一橋大学阿部教授が書かれた記事で、現行の消費者物価指数ではコロナ禍の行動変容による支出の激変に対応できないことを主張されています。


各国の物価統計作成者の間では、新型コロナにより引き起こされた家計支出の激変にどう対応するか、議論が繰り広げられている。(中略)
そうした中で、統計作成専門家の間で1つの認識が広まりつつある。それは従来の物価指数の計算方法の問題だけでなく、家計の行動変容を取り入れた新たな物価指数の必要性である。


全く知らなかったのですが、物価指数というのは、複数の算出方法があり、今使われているのは「ラスパイレス指数」は150年前から使われているものだそうです。

指数、ですから、ある時期を100として、そこからどれくらい変化したか、という単純なものと考えていましたが、なぜ複数の算出方法があり、「ラスパイレス指数」はどのような指数なのでしょうか?

記事を読んでの私なりに理解したところは以下の通りです。

現在の日本の公式消費者物価指数では、基準時は2015年です。
この時の商品やサービスの値段の平均を100とするのですが、問題はそのウエートです。

ウエートとは、例えば、平均的な家計支出が20万円とした場合、外食にいくら、食費にいくら、電話料金にいくら、住居費にいくら、電化製品にいくら、被服にいくら、旅行にいくら…といったウエートです。

「ラスパイレス指数」の問題点は、家計に占めるウエートも2015年時点で固定してしまうことです。

つまり、2015年時点に旅行に2%、外食に5%、というウエートであれば、現状のように旅行も外食も激減しても、この2%、5%は変わらない、ということです。

確かに、素人から見ても、今の状況を正しく反映は難しい指数に思えます。
なぜこの指数が長く使われているのでしょう?

筆者は以下の通り述べています。

「ラスパイレス指数」は登場から現在に至るまで標準的な指数として世界各国で広く用いられている。計算が容易なことに加え、他の指数に比べて安定しており、世界標準ゆえに他国との比較が容易であるということも大きい。
現行の「ラスパイレス指数」は、大災害が生じても人々は行動を変えないという想定の下で作成されている。今日のように大規模な行動変容が生じている場合、現実離れしたものとなる。


もちろん、この問題点を解消する指数もあります。

☑️「パーシェ指数」:基準時でウエートを固定せずに、比較時点での支出額を配分とする指数
☑️「フィッシャー指数」:「ラスパイレス指数」と「パーシェ指数」の幾何平均である指数

記事ではこれら指数で見た場合の足元の物価指数の違い等について幅広く解説し、それぞれの指数には向き不向きがあることを述べています。

そして、筆者は最後に以下のように述べています。

物価指数の用途が多様になり、コロナ禍のような大規模な経済変動が頻繁に起きている今日、「ラスパイレス指数」だけでなく、人々の行動変容も反映する「パーシェ」「フィッシャー」など様々な指数の計算も真剣に考える時期に来ている。


2、まとめ(所感)

いかがでしたでしょうか?

消費者物価指数、分かったつもりで当たり前のように数字だけ見て、「上がった」「下がった」などと思っていましたが、その算出方法では経済の実態を反映しきれない問題があったことを知りました。


実は、昨日投稿した、「ビジネス頭の体操」シリーズ(勝手に命名)にも、気になる「数字」がありました。

企業のBCP策定率、なのですが、

☑️ 内閣府防災白書のデータでは、大企業が68.4%中堅企業が34.4%
☑️ 帝国データバンクのデータでは、大企業で30.8%中小企業で13.6%

と、大きな乖離があるのです。

実は、政府目標として、「国土強靱化年次計画 2019」において平成 32 年までに BCPを策定している大企業の割合をほぼ 100%(全国)、中堅企業の割合は 50%(全国)を目指すこととしているのです。

大変うがった見方ですが、もしかして……と、一瞬思ってしまいました。

もちろん調査対象が異なることが原因なのですが…


このように、一見分かりやすい「数字」、その裏にある「測り方」が重要だ、と再認識しました。

ずいぶん前になりますが、「数字は凶器にもなる」という内容の以下のような投稿をしていましたが…「数字」やはり「取扱注意」、ですね。


最後までお読みいいただきありがとうございました。

なにかご参考になるところがあれば嬉しいです。

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