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【神戸新開地〜福原】シンカイチの人と思い出

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『定年後』(中公新書/2017)で25万部超えの大ベストセラーをかっとばし、『定年準備』『定年後のお金』『転身力』とヒット連打で、最新刊『75歳からの生き方ノート』(小学館)を出… もっと読む
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第4回 神戸・新開地「神戸の成り立ちと進取の気風」

「新開地で産声をあげる」

「新開地で産声をあげる」と冒頭の小見出しにある本の著者は、上方落語界の重鎮だった笑福亭松之助師匠(1925年~2019年)。
著書(*1)の中で自身の人生のこと、芸のこと、日々のことを書いている。

明石家さんまの師匠としても知られている松之助氏は、兵庫県神戸市湊西区(のちの兵庫区)で、土木建築関係の職人だった父親と、店を持てない髪結いだった母親との一人息子として生まれ

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第3回 神戸・新開地「橘小学校の校門前から」

第3回 神戸・新開地「橘小学校の校門前から」

ノスタルジーの持つ力

かつて聞いた音楽を久しぶりに耳にしたときには、懐かしさとともに当時の場面が思い浮かぶときがある。
「木綿のハンカチーフ」(太田裕美)のイントロと彼女の甘えたような声を聴くと、曲のメッセージよりも、学生時代にやるべきことが見つからず焦っていた気持ちや、なぜか新開地本通りのパチンコ台の前に座っていた姿が蘇ってくる。

老人施設で、子どもの頃に流行った曲を一緒に歌うと一気に盛り上

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第2回 神戸・新開地「薬局の近所の人たち」

第2回 神戸・新開地「薬局の近所の人たち」

歓楽街にも日常生活がある

前回は、子どもの頃の薬局から見た風景を中心に書いてみた。

1905年に旧湊川を埋め立てた跡地である新開地本通りが、映画館や演芸場、飲食店、パチンコ店がずらっと立ち並ぶ当時のもっとも賑やかな場所だった。

その東側の南北に走る桜筋と、柳筋が色街である福原の中心である。薬局は柳筋の一本東の通りにあった。住所表示でいうと、兵庫区西上橘通である。「サウナKRC」があった通りと

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第1回 神戸・新開地「薬局の店先から見える風景」

第1回 神戸・新開地「薬局の店先から見える風景」

神戸新開地界隈の薬局が生家

私の生家は、神戸新開地・福原界隈にある薬局だった。
10坪あまりの角地にあるモルタルの建物で、一階は店舗と調剤室、その奥に台所とちゃぶ台とトイレがあるだけの狭いスペースが生活の中心だった。2階は親子4人の寝室と薬の置き場と私の勉強机があった。机の横の窓から物干し場に出るという案配だ。

当時の個人商店は1階が商売スペース、2階が生活の場で、風呂はない家が大半だった。も

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