高層ビルの屋上、あたしは落下防止のフェンスを超えた先に佇んでいた。 「もうこれでいいんだ…」 ふわふわした足取りで前に進んでいく。 とっても景色は綺麗で、遠くまで…
今回の案件は自画自賛する訳ではないけれど、思っていたよりも上手に進められたと思う。会社に入って2年。先輩方に言われるより早く対応しお客様の信頼も高まっている。 …
「いま“求められる広告”ってなんだと思います?」 競合のプレゼン中。クライアントの会議室で企画案の説明をするクリエイティブディレクター。 「近年実は、“広告に見…
その雄大で広くのんびりした大河には、大きな生き物がいるらしい。らしいと書くのには、目撃者が多い割に、証拠となる写真や動画がなかなか出てこない都市伝説のような話だ…
すべてのモノにドラマがある。 「どうです?こちらの写真」 「公衆電話ですか。近頃メッキリ減りましたね」 「電話ボックスに、素晴らしい商品ディスプレイがございます!…
すべてのモノにドラマがある。 「ヒーローとして生きるって…大変だよな…」 「ヒーロー?」 「ほら…あれ」 「あ!定食屋の客引きしてるじゃん!」 「だろ?」 「M7じゅ…
「俺けっこう、こういう洒落の効いた看板、好きなんだよね…」 カフェの入り口に、折りたたみ式の立て看板が出ている。 「何これ?春夏秋冬?」 「知らない?良く見てご覧…
「今回はですね、男性、女性の掛け合いとなります」 「掛け合い…」 「あ、もちろん女性ナレーターさんもお呼びしてあります」 ナレーターというは摩訶不思議な仕事である…
「水飲めよ」 コンビニの前で今日3度目の嘔吐をした俺に、 蓋を開けたペットボトルを差し出してくるのは小学校からの付き合いの悪友だ 「いらねぇよ。チューハイ買って…
「この季節は紫の花が多くて、私好きだな…」 「…そうなんだ」 彼女と映画鑑賞の帰り道、夕飯のお店を考えながらスマホを見ていた僕は、沿道に植えられた花の色には意識が…
4人の男が留置場でそれぞれ距離を取りながら佇んでいる 中央に置かれたベンチには両手で顔を覆う、ハサミを振り回して捕まった男 「どうりで皆さんと連絡が取れない訳で…
「なんだよな、努力義務って!」 居酒屋の酒が入り、愚痴も出てしまう。男三人、いま世の中で溢れる自転車ヘルメット問題を語っている。 「オレさ、ここ来る前にヘルメッ…
マジックミラーの窓越しに警官2人 窓の向こうには取り調べ中の警官と、うなだれて座る男 「今月に入ってからやたらと多いな」 窓越しに取調室の様子を伺いながら一人の…
「あのさ、これ見てよ!」 講義の合間、友人が楽しそうに話しかけて来た。スマホに表示された写真。 「面白い貼り紙があったんだよね…」 「何?月5万円…寝るだけの方……
「だから、仕事用だって言っているじゃないですか!」 夜の公園に男の声が響く 「ですから、それを証明してください、とお願いしているのです」 男をなだめつつも冷…
「ほら上級生のお兄さんと手をつないで!」 そんな些細な道徳がいとも簡単に覆ってしまった時代。 「ダメなんだよ。ウイルスが移るかも知れないから、直接触れたらダメなん…
【KIC物語部】
2024年6月25日 13:01
高層ビルの屋上、あたしは落下防止のフェンスを超えた先に佇んでいた。「もうこれでいいんだ…」ふわふわした足取りで前に進んでいく。とっても景色は綺麗で、遠くまでキラキラして見えている。足元には粒みたいな車のライトがいくつも通り過ぎていく。ちょっと怖いけれど、ギリギリのところに足をかけてみる。「本当にできるかなあ。」恐怖心から若干戸惑ってしまった。すると突然、顔の両横にボン!とふたつ
2023年8月21日 09:04
今回の案件は自画自賛する訳ではないけれど、思っていたよりも上手に進められたと思う。会社に入って2年。先輩方に言われるより早く対応しお客様の信頼も高まっている。「ということで…」会社の帰り道、コンビニのアイスコーナーと対峙している。「ご褒美だもの!」いつ以来だろうか…すっかり忘れてしまったが、私にとっては高価でちょっぴり贅沢なカップアイス。その何味を買おうかと先程から悩んでいた。いわゆる
2023年8月7日 08:37
「いま“求められる広告”ってなんだと思います?」競合のプレゼン中。クライアントの会議室で企画案の説明をするクリエイティブディレクター。「近年実は、“広告に見えない広告”が多いと感じませんか?」「広告に見えない広告?」「ステルスマーケティングに代表されるネット世界でぼーっと見ていると実は広告だったみたいな」「ああ、ありますね。個人が投稿したSNSのように見えて、それが広告だったとか…」
2023年7月24日 06:56
その雄大で広くのんびりした大河には、大きな生き物がいるらしい。らしいと書くのには、目撃者が多い割に、証拠となる写真や動画がなかなか出てこない都市伝説のような話だからだ。近くには江戸時代の浮世絵の類や美術品も多く展示されており、昔書かれたその川の絵には実は黒く大きな生命の影らしき姿もよく描かれている。「巨大な亀!?」「し!大声出すなよ!」中学校の昼休み、男子ふたりが話をしている。「兄ち
2023年7月10日 08:12
すべてのモノにドラマがある。「どうです?こちらの写真」「公衆電話ですか。近頃メッキリ減りましたね」「電話ボックスに、素晴らしい商品ディスプレイがございます!」「商品、ディスプレイ…ですか?」「日本酒の紙パックです」「有名な、どこのコンビニでも見かけるモノですね。でもこれゴミですよね?」「良く見てください!ワンカップでは無いんです!紙パックなんです!コレをこの場所で開けて飲んで飲み切
2023年6月26日 07:27
すべてのモノにドラマがある。「ヒーローとして生きるって…大変だよな…」「ヒーロー?」「ほら…あれ」「あ!定食屋の客引きしてるじゃん!」「だろ?」「M7じゅう…なんだっけ?なんか銀河系の遥か遠い所からやって来てさ」「いわゆる出稼ぎなワケだ…やっぱり、家族とか多いと稼ぎ頭は大変なんだろうな…」「怪獣が現れれば活躍の場もあるだろうけれど、なんだな…最近では、街とか人間の暮らしを壊してし
2023年6月12日 08:24
「俺けっこう、こういう洒落の効いた看板、好きなんだよね…」カフェの入り口に、折りたたみ式の立て看板が出ている。「何これ?春夏秋冬?」「知らない?良く見てご覧よ」「春夏秋…あれ、春夏冬…ナカ…?何これ?どういうこと?」「想像力ないなあ…もう一回読んでご覧よ」「春・夏・冬・ナカ…間違いじゃないの?」「わかんない?」「秋…秋ナカ…秋が無い…秋ない!」「だから!」「商い中!」「洒落て
2023年5月29日 08:34
「今回はですね、男性、女性の掛け合いとなります」「掛け合い…」「あ、もちろん女性ナレーターさんもお呼びしてあります」ナレーターというは摩訶不思議な仕事である。ただ紙に書かれた言葉を音にするだけではなく、時には声だけでお芝居をしたり、書かれた言葉をメロディーにして歌い上げたり、その1枚のナレ原からは想像できない多くの可能性を秘めているという、普通の感覚では理解しがたい職業だと思う。「アハ…で
2023年5月22日 22:45
「水飲めよ」 コンビニの前で今日3度目の嘔吐をした俺に、蓋を開けたペットボトルを差し出してくるのは小学校からの付き合いの悪友だ 「いらねぇよ。チューハイ買って来てくれよ」「まだ飲むのかよ」「今全部出しちまったから、リセット状態。ほぼ素面。あぁ~明日バイト10時からなのにぃ~。お前明日は?」「朝からびっちりミーティング。まぁ夕方くらいには落ち着くから早めに切り上げて爆睡すると思う」
2023年5月15日 01:27
「この季節は紫の花が多くて、私好きだな…」「…そうなんだ」彼女と映画鑑賞の帰り道、夕飯のお店を考えながらスマホを見ていた僕は、沿道に植えられた花の色には意識が行かなかった。「だって、紫陽花とかさ、藤の花とか、菖蒲とか…」「ああじゃなくて、紫色好きなんだって方」「そうね、紫って落ち着いていて好きかな」「欲求不満なの?」「は!?なんでそうなるの!?」彼女は一気に怒り出した。怒りっぽい
2023年5月8日 18:53
4人の男が留置場でそれぞれ距離を取りながら佇んでいる中央に置かれたベンチには両手で顔を覆う、ハサミを振り回して捕まった男 「どうりで皆さんと連絡が取れない訳ですね・・・銃も刀も弓も、どうして剝き出しで持ち歩いてるんですか・・・」 ハサミの男は自分以外の3人に話しかける一番奥で不貞寝している男が反応する 「そういうお前だって、ハサミ持ってて捕まってるじゃないか」「私はちゃんと刃渡り
2023年5月1日 06:54
「なんだよな、努力義務って!」居酒屋の酒が入り、愚痴も出てしまう。男三人、いま世の中で溢れる自転車ヘルメット問題を語っている。「オレさ、ここ来る前にヘルメットかぶって、フラフラ走る高齢男性見かけたのね…」勢い先行で呂律が怪しい。「それがさ…白い防災用のヘルメットだったんだよね…自転車用のヘルメットじゃないワケよ!」「俺もそんなの見かけた!工事現場の作業着オジサンが黄色いヘルメットカブっ
2023年4月24日 11:05
マジックミラーの窓越しに警官2人窓の向こうには取り調べ中の警官と、うなだれて座る男 「今月に入ってからやたらと多いな」 窓越しに取調室の様子を伺いながら一人の警官が話す 「先週は銃、その数日前には刀、その前はボウガンだっけ?」「弓、でしたね」「おっかない世の中だよ。そんな凶器を平然と持ち歩いてる輩がこんな短期間で何人も。日本の平和信神話はどこ行ったんだか・・・で、今日は?」「ハ
2023年4月17日 08:03
「あのさ、これ見てよ!」講義の合間、友人が楽しそうに話しかけて来た。スマホに表示された写真。「面白い貼り紙があったんだよね…」「何?月5万円…寝るだけの方…これマンションの部屋貸します的な広告でしょ?」「それがね、調べてみたらさ…」細い路地を曲がってすぐの電柱の、目の高さくらい、無造作に貼られたその小さな紙に違和感を覚えた…そう言って説明を始める。「これね、寝るだけのカタ、では無くて
2023年4月10日 09:09
「だから、仕事用だって言っているじゃないですか!」 夜の公園に男の声が響く 「ですから、それを証明してください、とお願いしているのです」 男をなだめつつも冷たく刺すようなトーンで女性警官が答える 「だからそのハサミ以外無いんだって!あとは実際に仕事を見てもらうしかないって!」「その・・・なんでしたっけ、霊媒師?」「陰陽師!」「そう、陰陽師という職業は公園でハサミを所持する理
2023年4月3日 06:39
「ほら上級生のお兄さんと手をつないで!」そんな些細な道徳がいとも簡単に覆ってしまった時代。「ダメなんだよ。ウイルスが移るかも知れないから、直接触れたらダメなんだよ!」君のことが大事だから、手をつながない。初めてのデート。どのタイミングで彼女と手をつなぐかとドキドキしていたあの頃。映画館、座席の間でシェアするポップコーンも、劇場での飲食規制。とにかく人間らしさが損なわれてしまった。実