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【とあるハサミ②】

マジックミラーの窓越しに警官2人
窓の向こうには取り調べ中の警官と、うなだれて座る男
 
「今月に入ってからやたらと多いな」
 
窓越しに取調室の様子を伺いながら一人の警官が話す
 
「先週は銃、その数日前には刀、その前はボウガンだっけ?」
「弓、でしたね」
「おっかない世の中だよ。そんな凶器を平然と持ち歩いてる輩がこんな短期間で何人も。日本の平和信神話はどこ行ったんだか・・・で、今日は?」
「ハサミですね」
「え?」
「『ハサミ』です」
「弱いなぁ・・・刃渡りは?」
「え~とっ」
 
調書の写しをめくる
 
「あった、6cm」
「それじゃ銃刀法違反にはならないだろ」
「公園で振り回してたらしいですよ。それも警官の目の前で」
「そりゃアウトだな・・・尿は?」
「陰性でした」
「てことは次はこっちの検査か・・・」
 
頭を指さす警官
 
――
―――――
 
「・・・終わった・・・」
「終わってないんだよ!アンタがしゃべってくれなきゃ終わらないの!」
 
机を叩く警官。机の上のハサミがカタンッと揺れる
 
「大体何なんだよこの調書は!ジャイアントロボとかグレンラガンとかロックマンとか
宇宙戦艦ヤマトとか!なんでも大きさをロボットで例えやがって・・・最後のはロボットですらないだろ!」
「ヤマトは大きさではなく速さの例えでした。最高速度が光の速さの99%だそうで」
「はっやいな!ヤマト!そんなのはどうでもいいんだよ!
公園でハサミ振り回してた理由を聞いてんの!」
「だから・・・妖怪とかを倒す為に・・・」
「真面目に答えろって!」
 
机を叩く警官。再びカタンッと音を立てるハサミ
 
「私の前にも何人も仲間がこの町に派遣されてるんです・・・ですが誰も戻って来ず・・・
よほど強大な力を持った妖怪がいるはずなんです・・・見つけ出す前にまさか警察に
捕まるなんて・・・」
「・・・仲間ってのはもしかして銃持ってるやつとか刀のやつとか?」
「そうです!弓のやつとか!知ってるんですか?」
「・・・今言ったやつらは全員勾留中だよ」
 
力なく、先ほどよりも更に深くうなだれる男。
だが次の瞬間ハッと気づいたような素振りを見せ、目に光を宿し、小さく呟く
 
「でもまだ1人いる・・・オーソドックスな彼ならば・・・お札の彼ならば・・・!」
 
 
 
 
     「つづく」 作:オナイ

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