【KIC物語部】

【週1本・月曜日に更新!?】ここに載せるオリジナルショートストーリーは、近い未来映像化…

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【週1本・月曜日に更新!?】ここに載せるオリジナルショートストーリーは、近い未来映像化へと「つづく」ための備忘録です。読み切り、シリーズ、色々取り揃え、とても身近で、ちょっぴりリアルな妄想世界。是非ご期待ください!【https://www.kic-factory.co.jp/

最近の記事

【ご褒美アイス】

今回の案件は自画自賛する訳ではないけれど、思っていたよりも上手に進められたと思う。会社に入って2年。先輩方に言われるより早く対応しお客様の信頼も高まっている。 「ということで…」 会社の帰り道、コンビニのアイスコーナーと対峙している。 「ご褒美だもの!」 いつ以来だろうか…すっかり忘れてしまったが、私にとっては高価でちょっぴり贅沢なカップアイス。その何味を買おうかと先程から悩んでいた。 いわゆる「ご褒美アイス」だ。 「せっかくだから…」 2種類買うことにした。1個は「安定

    • 【街で見かけた看板で】#07

      「いま“求められる広告”ってなんだと思います?」 競合のプレゼン中。クライアントの会議室で企画案の説明をするクリエイティブディレクター。 「近年実は、“広告に見えない広告”が多いと感じませんか?」 「広告に見えない広告?」 「ステルスマーケティングに代表されるネット世界でぼーっと見ていると実は広告だったみたいな」 「ああ、ありますね。個人が投稿したSNSのように見えて、それが広告だったとか…」 「例えばです。狙いではないにせよ、“読めそうで読めない立て看板”ってあるじゃない

      • 【巨大な亀が住む川】

        その雄大で広くのんびりした大河には、大きな生き物がいるらしい。らしいと書くのには、目撃者が多い割に、証拠となる写真や動画がなかなか出てこない都市伝説のような話だからだ。 近くには江戸時代の浮世絵の類や美術品も多く展示されており、昔書かれたその川の絵には実は黒く大きな生命の影らしき姿もよく描かれている。 「巨大な亀!?」 「し!大声出すなよ!」 中学校の昼休み、男子ふたりが話をしている。 「兄ちゃんが見たんだって、昨日の夜」 「あの川で?…巨大って…こんぐらい?」 両手を肩

        • 【なんて素敵なディスプレイ】#02

          すべてのモノにドラマがある。 「どうです?こちらの写真」 「公衆電話ですか。近頃メッキリ減りましたね」 「電話ボックスに、素晴らしい商品ディスプレイがございます!」 「商品、ディスプレイ…ですか?」 「日本酒の紙パックです」 「有名な、どこのコンビニでも見かけるモノですね。でもこれゴミですよね?」 「良く見てください!ワンカップでは無いんです!紙パックなんです!コレをこの場所で開けて飲んで飲み切っている…そこにドラマが見えませんか?」 「ドラマ…ですか?」 「コレをここに

        【ご褒美アイス】

          【なんて素敵なディスプレイ】#01

          すべてのモノにドラマがある。 「ヒーローとして生きるって…大変だよな…」 「ヒーロー?」 「ほら…あれ」 「あ!定食屋の客引きしてるじゃん!」 「だろ?」 「M7じゅう…なんだっけ?なんか銀河系の遥か遠い所からやって来てさ」 「いわゆる出稼ぎなワケだ…やっぱり、家族とか多いと稼ぎ頭は大変なんだろうな…」 「怪獣が現れれば活躍の場もあるだろうけれど、なんだな…最近では、街とか人間の暮らしを壊してしまうとか、倒した怪獣の始末が大変だとか、とにかく肩身が狭くなっているのは間違いな

          【なんて素敵なディスプレイ】#01

          【街で見かけた看板で】#06

          「俺けっこう、こういう洒落の効いた看板、好きなんだよね…」 カフェの入り口に、折りたたみ式の立て看板が出ている。 「何これ?春夏秋冬?」 「知らない?良く見てご覧よ」 「春夏秋…あれ、春夏冬…ナカ…?何これ?どういうこと?」 「想像力ないなあ…もう一回読んでご覧よ」 「春・夏・冬・ナカ…間違いじゃないの?」 「わかんない?」 「秋…秋ナカ…秋が無い…秋ない!」 「だから!」 「商い中!」 「洒落てるよね…」 「商い中…お店がやってるってことだ!」 彼女とのデートでやってきた下

          【街で見かけた看板で】#06

          【なれとります】#04「日々是勉強」

          「今回はですね、男性、女性の掛け合いとなります」 「掛け合い…」 「あ、もちろん女性ナレーターさんもお呼びしてあります」 ナレーターというは摩訶不思議な仕事である。ただ紙に書かれた言葉を音にするだけではなく、時には声だけでお芝居をしたり、書かれた言葉をメロディーにして歌い上げたり、その1枚のナレ原からは想像できない多くの可能性を秘めているという、普通の感覚では理解しがたい職業だと思う。 「アハ…ですよね。いや、たまに声色変えてのひとり芝居なんてありますから、つい」 「ですよね

          【なれとります】#04「日々是勉強」

          【二十九、三十】

          「水飲めよ」 コンビニの前で今日3度目の嘔吐をした俺に、 蓋を開けたペットボトルを差し出してくるのは小学校からの付き合いの悪友だ 「いらねぇよ。チューハイ買って来てくれよ」 「まだ飲むのかよ」 「今全部出しちまったから、リセット状態。ほぼ素面。あぁ~明日バイト10時から なのにぃ~。お前明日は?」 「朝からびっちりミーティング。まぁ夕方くらいには落ち着くから早めに切り上げて爆睡すると思う」 「上手くやってますねぇ~」 よろけながら立ち上がる俺を横目に、行き場を無く

          【二十九、三十】

          【紫の濡れ衣】

          「この季節は紫の花が多くて、私好きだな…」 「…そうなんだ」 彼女と映画鑑賞の帰り道、夕飯のお店を考えながらスマホを見ていた僕は、沿道に植えられた花の色には意識が行かなかった。 「だって、紫陽花とかさ、藤の花とか、菖蒲とか…」 「ああじゃなくて、紫色好きなんだって方」 「そうね、紫って落ち着いていて好きかな」 「欲求不満なの?」 「は!?なんでそうなるの!?」 彼女は一気に怒り出した。怒りっぽい所があり、熱し易く冷め易い。そこがまた可愛く想えるのだが。 「だって紫の服を好む

          【紫の濡れ衣】

          とあるハサミ③

          4人の男が留置場でそれぞれ距離を取りながら佇んでいる 中央に置かれたベンチには両手で顔を覆う、ハサミを振り回して捕まった男 「どうりで皆さんと連絡が取れない訳ですね・・・銃も刀も弓も、どうして剝き出しで持ち歩いてるんですか・・・」 ハサミの男は自分以外の3人に話しかける 一番奥で不貞寝している男が反応する 「そういうお前だって、ハサミ持ってて捕まってるじゃないか」 「私はちゃんと刃渡り短い装備を選びました!大体あなたの銃は頑張れば隠し持てるじゃないですか」 「銃は

          とあるハサミ③

          【街で見かけた看板で】#05

          「なんだよな、努力義務って!」 居酒屋の酒が入り、愚痴も出てしまう。男三人、いま世の中で溢れる自転車ヘルメット問題を語っている。 「オレさ、ここ来る前にヘルメットかぶって、フラフラ走る高齢男性見かけたのね…」 勢い先行で呂律が怪しい。 「それがさ…白い防災用のヘルメットだったんだよね…自転車用のヘルメットじゃないワケよ!」 「俺もそんなの見かけた!工事現場の作業着オジサンが黄色いヘルメットカブってガニ股で走ってた…ヘルメットなら何でもありか!って言うことだよ…」 「気の毒だ

          【街で見かけた看板で】#05

          【とあるハサミ②】

          マジックミラーの窓越しに警官2人 窓の向こうには取り調べ中の警官と、うなだれて座る男 「今月に入ってからやたらと多いな」 窓越しに取調室の様子を伺いながら一人の警官が話す 「先週は銃、その数日前には刀、その前はボウガンだっけ?」 「弓、でしたね」 「おっかない世の中だよ。そんな凶器を平然と持ち歩いてる輩がこんな短期間で何人も。日本の平和信神話はどこ行ったんだか・・・で、今日は?」 「ハサミですね」 「え?」 「『ハサミ』です」 「弱いなぁ・・・刃渡りは?」 「え~

          【とあるハサミ②】

          【街で見かけた看板で】#04(番外編)

          「あのさ、これ見てよ!」 講義の合間、友人が楽しそうに話しかけて来た。スマホに表示された写真。 「面白い貼り紙があったんだよね…」 「何?月5万円…寝るだけの方…これマンションの部屋貸します的な広告でしょ?」 「それがね、調べてみたらさ…」 細い路地を曲がってすぐの電柱の、目の高さくらい、無造作に貼られたその小さな紙に違和感を覚えた…そう言って説明を始める。 「これね、寝るだけのカタ、では無くて、寝るだけのホウって事らしい」 「寝るだけのホウ?」 「ほら、裏バイトとか闇サイ

          【街で見かけた看板で】#04(番外編)

          【とあるハサミ①】

          「だから、仕事用だって言っているじゃないですか!」 夜の公園に男の声が響く 「ですから、それを証明してください、とお願いしているのです」 男をなだめつつも冷たく刺すようなトーンで女性警官が答える 「だからそのハサミ以外無いんだって!あとは実際に仕事を見てもらうしかないって!」 「その・・・なんでしたっけ、霊媒師?」 「陰陽師!」 「そう、陰陽師という職業は公園でハサミを所持する理由があるのでしょうか。」 「大ありだよ!ウチの流派はハサミで戦うタイプのやつなの

          【とあるハサミ①】

          【街で見かけた看板で】#03

          「ほら上級生のお兄さんと手をつないで!」 そんな些細な道徳がいとも簡単に覆ってしまった時代。 「ダメなんだよ。ウイルスが移るかも知れないから、直接触れたらダメなんだよ!」 君のことが大事だから、手をつながない。 初めてのデート。どのタイミングで彼女と手をつなぐかとドキドキしていたあの頃。映画館、座席の間でシェアするポップコーンも、劇場での飲食規制。とにかく人間らしさが損なわれてしまった。 実はここ4年の出来事なのではないのかも知れない。 汗の染み付いた剣道の防具、まわ

          【街で見かけた看板で】#03

          【街で見かけた看板で】#02

          修学旅行でやってきた女子高生。 「サチ何見てんの?」 「これ…」 「何?」 「奥さまニュース速報板」 「え?何?」 「奥さまニュース速報板」 「え〜!昭和ってこういう掲示板が街にあったの!?」 「いま令和だし。速報が、路上 煙だよ」 「いや、路上禁煙の禁が消えちゃってるんだよ。それにこれは速報の内容じゃなかったんじゃない?」 「でもこれ、役所の出しているシールを貼っちゃってるよね?」 「レトロで不思議な掲示板…」 「戦争中とか、戦前とかって時代なのかな?」 「でもメチャクチャ

          【街で見かけた看板で】#02