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レア

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記事一覧

可愛い子よ

可愛い子よ

可愛い子よ
恐れないで聞いておくれ
私はお前を待っている
木陰で
あの石の上に座ってる
花稸乙女のように
あの羊飼いはお前に言うだろう
「あなたを待っていた」と
お前の目となり、導き
やがて友と名乗るだろう

嗚呼、可愛い子よ
お前は私
お前の言葉は私の言葉
鋭さと危うさは
やがて友と己を切り裂く
祝宴は終わり
お前は気づく
すべては我が道
己が招き、選んだ事
幼き、愚かしい
それがお前
それこ

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祝杯

ああ、可愛い子よ
今日は何を語ろうか
お前が私に触れた時、
その血潮が語ったであろう
汚れのない小さな手で何を感じたのだろう
忘れた?
そう…お前は私を忘れた
だが、その手はちゃんと覚えている
私の冷たさも重さも
吸い尽くした臭いも
この身のすべてを預けた
ああ、私は覚えている
昨日のことのように何もかも
可愛い子よ
お前は私
だから、恐れるだろう
犯した過ちを
奪い取った愛を
さぁ、呑むがいい!

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a twig

a twig

かわいい子よ
お前の好きな子守唄を歌ってあげよう
積もった雪に木漏れ日がさし
空気が凍り
光がお前を包む
凍裂が響く
まるでお前の心のように
冷たさに耐え切れず
一人叫び泣く

あぁ
心優しき子よ
私の胸に戻り眠るがいい
水を湛えし我が郷へ
春の小鳥が囀り
蘇りし命の息吹
踊るように花たちは舞い
お前の傷を癒すだろう

誓い

お前の過去は私にはどうだっていい

私が欲しいのは今のお前
そう。目の前にいる男
私に触りたい?
唇に触れたい?
あそこに入れたい?

それもいい
だが、本当にそれだけで私を呼んだわけじゃないだろう
寄ってくる女はいただろうに
わざわざこんな森の奥に来ることもあるまいに、
お前の役目はもう既に果たしただろう?
静かに私を眠らせておくね
お前に口つけてをされてから
ただ一途にお前と共に
お前の希望通

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終わりに

あれからどれ程の時代が過ぎ去ったのでしょうか。
今も私はあの時と同じ月を眺めています。
あなたはもうこの世には居ないと諭す者も
果たすことの無い約束をした者も現れてはくれず
私はまた一人になってしまいました…
瞬く間に時は流れ
人の憐れを知ると、若菜の頃の一途な恋も幼さゆえの輝きと力強さが
眩しいほど羨ましさご老いた心に痛く切なく
まるで、ピンと張った琴の弦のように響いては
あなたの優しい声を思い

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今という時代に

今という時代に

造っては壊し、造って壊し、受け入れては遠ざける。
古きを尊しと言いつつも真新しさに憧れる。
立ち止まる事の怖さより走り続ける辛さ選んではほとほと
昔話を繰り返す
望郷の虚しさと忙殺の後悔と一抹の人恋しさが、欲望に埋没されて行く
苛立ちと憎しみが網のように張り巡り、優しさを絡めとってしまう
大人達は言う、「これが世の中だ」
子供達は言う「こんな世の中だ」と。
いつも繰り返す過ちと理想の間で縄を編む。

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足りないもの

私は文を書く時、「サンタクロースなんていないんですか?」の一節を思い出す。

「この世に愛や空想や希望、夢が無かったら、なんてつまらない世界になると思いませんか?」

きっと、疲れた人々がたくさん居て、思いやりや優しさも失って居る今の時代。声高らかに「夢を持て!」だの、「個性をもて!君らしく生きよ!」なーんて言われてもな……と、ため息が出るばかりですよね?
そういう大人たちこそが、目に見えてるもの

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夢の終わりに

君の目には私はどう映るのだろう
君の反応を私はどう感じるのだろう

この数ヶ月とても とても 幸せで
手放したくはないけれど

もう逃げないと決めたのは自分
それでも 慣れる事はない
君が本当に好きだから尚
辛い 
いい歳して 何やってるんだか? って
自分でも笑えるけど

夢はいつかは覚めると
わかってる

君にありのままの私の姿を見せて
現実はコレなんだ‼︎
と言うのも
私の役目だと思う

青龍

青龍

青龍は言った
 「私が恐いか?」
 と。
少し考え、
 「恐い。だが、あなたに触りたい。」 
 私は言った。続けて、
 「共に生きたい。」
 と。
 神鳴が唸った。
 「何故?」
 と。
 耳を塞ぎ、目を瞑り、私は叫んだ。
 「あなた無しでは生きられないから。あなたが豊かでないと困る。」
 強い風が吹いていた。
 「お前は私に与える物はあるか?」
鈍く光る眼でこちらを睨む。
 真っ向から風を受けよ

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#2

それでも一日中、布団の上げ下げ、お膳立て、掃除、洗濯はまだ機械に任せる訳にはいかない時代である。
 シーツや掛け布団、枕カバー、浴衣は糊付けしきちんと畳みアイロンをかける。予約を確認して帳簿をつける。
 おかげで、和服の折り方と膳の作り方だけは今でも覚えている。
お茶屋、八百屋、魚屋に肉屋の御用聞きが、
「今日はいかがですか?」と入れ替わり立ち替わりに来る。その他諸々の雑用がある。我が儘な客

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明治生まれのモガ

私の周りの人たちの話をしよう。
 私の家は、その昔はそれなりに栄えた港町で、旅館を営んでいた。
 旅館と言っても、商人宿で二十人も入れば満室になる程度の小さい宿屋である。

祖母の代から始まって、百年近くのなる。今日は、その婆さんの話から始めようと思う。
 私は祖母を「おばば」と呼んでいた。お祖母はいつも藍色の地の小紋を普段着に、綺麗な背すじの通った姿で、さっさっさと步く。娘達や孫たちに、
 

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5

 背中まで痛みが広がって、横になっても苦痛で結局、ソファーの下に座って頭をテーブルに付したままで、明け方、人がこれ以上眠りに堕ちる限界まで起きているとね、感情が無くなるんだ。何かを欲する事も諦めてしまう。元々痩せている身体が少ない筋肉まで奪って、40kg だった体重があっという間に31kgまで落ちていた。あの時…暗い部屋で、テレビから明るいわざとらしい笑い声が聴こえて、それがうっとうしくて、腹ただ

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4

ッフッ、ハハハ、ハハハ…
 そんな顔しないで良いって!
 誤解しないで欲しい。
 僕これでも昔はけっこうモテたし、親友の一人や二人はいる。
 馬鹿騒ぎする仲間達もね。ちょっと悪さをして、繁華街のお廻りとは顔見知りにもなれた。
 素敵な恋もした。良い出会いもたくさんある。
 本当に楽しい人生を送らせてもらった。
 時々、僕に社会的に意見や考え方、怒りを聞き出そうとする輩が現れる。まったくね。
 「そ

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3

それでも辛うじて、心臓は動いていた。
 僕のココは。
 兄に言わせれば、僕はココに毛が生えているんだって。失礼だと思うだろう?
…でも…この心臓で僕はここで今君と出逢って、昔話をしている。暮れ行く紫色の空を眺めながら、少し感傷的になって、照れながらね。ッフッ。
 そんな顔しないで。
 はぁ、ここからが本題なのに、みんな同じ顔する…そうやって現実を見ようとしないんだ。僕に近づこうとするけど、誰も僕

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