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それでも辛うじて、心臓は動いていた。
 僕のココは。
 兄に言わせれば、僕はココに毛が生えているんだって。失礼だと思うだろう?
…でも…この心臓で僕はここで今君と出逢って、昔話をしている。暮れ行く紫色の空を眺めながら、少し感傷的になって、照れながらね。ッフッ。
 そんな顔しないで。
 はぁ、ここからが本題なのに、みんな同じ顔する…そうやって現実を見ようとしないんだ。僕に近づこうとするけど、誰も僕を知ろうとしない。見た目で判断して、同情する自分に酔いたいのか、優越感に浸りたいのか…。いつもはそのご期待に応えている。ニッコリ笑ってうなづくと、勝手に理解したつもりでいる。そして、決まってこう言う。
 「凄いね!頑張り屋だね!」
 もちろん、有難いとは思ってるし、嬉しく感じる。
 でもね、時々思うんだ。
「別に、特別なことしてないし、貴方に褒められる事してないから」ってね。
 この自分でも嫌になるくらい、ままならない、壊れたネジ巻人形みたいな、今で言うと、開発途中で放置されたAIロボットのような見難い身体を、声さえ上手く操れない身体を、与えられて、生きていくのは正直言ってしんどい。
 「どうしてもう少し、鈍感に生まれなかったのか?
 どうせ出来ないのなら…何も知らない、他人の気持ちなんて読めないほどの知恵であればいいのに!」ってね。
 浅はかだろ?
 みんな、表現出来ないだけで、何を想い、考え、悩んでいるか?…なんてわからない事は自分が一番実感しているはずなのにね。
 
 ちょっと重い話になってしまった。
 僕は意地悪なんだ。とっても…
 ッフッ
 こんな事を言うつもりじゃなかったのに。
 だけど、言っておきたかったんだ。一度ぐらいは。

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