誓い

お前の過去は私にはどうだっていい

私が欲しいのは今のお前
そう。目の前にいる男
私に触りたい?
唇に触れたい?
あそこに入れたい?

それもいい
だが、本当にそれだけで私を呼んだわけじゃないだろう
寄ってくる女はいただろうに
わざわざこんな森の奥に来ることもあるまいに、
お前の役目はもう既に果たしただろう?
静かに私を眠らせておくね
お前に口つけてをされてから
ただ一途にお前と共に
お前の希望通り
私はお前を愛した
この身を挺してお前を護り育てた

ああ、なん可愛い子よ美しい子よ
汚れなき魂よ

今となっては苦しい程の虚しい亡霊
さぞ、その熟れた果実は甘かったか?
乾いた喉を潤したか?
その体を幸福で満たしたか?

あぁ、そうか。
嫉妬だね?
お前は私に嫉妬したんだ。
自分の功を再び取り戻そうと帰ってきた。
男達は皆そうなんだ。
「我こそは、選ばれし者!命懸けで働き、今がある!」
と思い込んでいる。

だから、戻った?
再び栄光の王冠を被るために
いや、違う、私よりも歴史に自分の名を残すために。

見たまえ。
私を。私に映った自分を。
どうだい?
老いた男が一人。快楽に溺れた今のお前だ。

残念だが、人は物語を信じる。作り上げたでっち上げを面白いように記憶する。
お前がどう足掻こうが、お前の名が上がる度に私の名も挙がる。

いや、違うな。
お前の知らぬ青年と私が輝かしい光を放ち、後の世に語られる

さぁ、私にくちづけしておくれ。


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