佐伯剛

2003年4月 風の旅人を創刊。2015年10月の第50号まで制作発行。 2016年1…

佐伯剛

2003年4月 風の旅人を創刊。2015年10月の第50号まで制作発行。 2016年10月より、「日本の古層」というプロジェクトを開始。 2020年4月から、毎年一冊、「 Sacred world 日本の古層」シリーズを制作発行。

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記事一覧

日本人の心がどう作られてきたのか。縄文と渡来文化のあいだ。

 日本人の心が、どう作られてきたか。  三日前に、中世の「いろは歌」のこと、二日前に、万葉の時代に遡って書いてきたけれど、今日は、おそらく縄文時代に遡るスピリッ…

佐伯剛
3日前
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第1475回 日本人の心が、どう作られてきたか。(後半)。

「いろは歌」の作者が誰であったかを追求することも歴史の楽しみかもしれないが、そのことだけを目的化してしまうと、歴史の真相とは遠ざかってしまう。  歴史の真相を掴…

佐伯剛
4日前
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日本人の心がどう作られてきたのか。「いろは歌の果たした役割」

(日本人の心が、どう作られてきたか)。  私たち日本人は、日本語を使って物事を理解し、日本語を使って物事を考えている。だから、私たちの思考やイメージが日本語の影…

佐伯剛
5日前
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現代の世界と、詩への希望

 シュテファン・バチウという亡命詩人について、知っている人はほとんどいないと言っていいかもしれない。  私も、知らなかった。  この詩人のことだけでなく、この詩人…

佐伯剛
8日前
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日本文化に宿る自然体という美意識

西欧の美というのは、例えばベルサイユ宮殿の庭園のように、それじたいが、「これこそが美だ!」と主張してくる。  それに対して、日本が長い時間をかけて洗練させてきた…

佐伯剛
2週間前
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人間の心の変化と、時代の変化。

一昨日、奈良に行った時、興福寺の近くの商店街にカメラ屋があり、店頭に、レトロな中古フィルムカメラと、オシャレな新品のフィルムカメラがずらりと並べられていた。  …

佐伯剛
2週間前
2

千年の時空を超えて今に伝わってくる叡智。

春日大社と空海展へ。  空海が関わって制作されたとされる神護寺の曼陀羅が、修復作業を経て公開。  西洋絵画だと、ヒエロニムス・ボスが、超精密な描写を行なっているが…

佐伯剛
2週間前
8

偶然性の仕打ちを受容する生存の美学。

明治時代になって、浮世絵などの日本文化が、二束三文の値段で海外に持ち去られたように、日本人は、日本にあるものの価値を知らず、欧米のものに価値があると思い込んで、…

佐伯剛
3週間前
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ピンホール写真の写真展について

来年の初めに、東京のオリンパス関連のOMシステムギャラリーで写真展を開催することになったのだけれど、これまでの人生で、自分の写真の写真展は初めてのこと。  本はた…

佐伯剛
3週間前

北斎や広重が描いた小野の滝をピンホールカメラで撮影した。

戦国時代、織田信長、豊臣秀吉、徳川家康に仕えて重用され、肥後国の細川家の礎となった細川幽斎は、一流の文化人で優れた歌人でもあった。  その彼が、豊臣秀吉の小田原…

佐伯剛
4週間前

闇の深さと、色相の繊細かつ豊かさ。

嵐山から嵯峨野は、観光客で溢れかえっているけれど、清涼寺あたりまで来ると、それほどでもない。  私が、京都に移住することになったきっかけの一つが、11年前、風の旅…

佐伯剛
4週間前
2

レトロでアナログだけれど新しい世界!?

これまで世代論について、あまり深く考えたことがなかった。  交遊関係にしても、年代で分けて意識することもなかったのだが、近年、Z世代という生まれた時からインターネ…

佐伯剛
1か月前
1

縄文人には見えていて、現代人には見えていないもの。

先ほど書いたことの補足だけれど、今回、北海道でもオーロラが見えた。  私は、自分でも縄文土器を作り続けていた時期があったのだが、縄文土器の文様は、オーロラのよう…

佐伯剛
1か月前
6

人間の目には見えない宇宙の真理

 太陽フレアの大爆発によって、低緯度でもオーロラが見られたというニュースが、各地から届いている。  その場にいた人たちがスマホで撮影したオーロラを、世界中のどこ…

佐伯剛
1か月前
5

情報として表に出てこない日本のリアリティ

日本という国は、いくら都市化が進んでいるといっても、国土の70%以上が山岳地帯であり、島国であるがゆえに、少し移動するだけで大海原を見ることができる。  こうし…

佐伯剛
1か月前
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今年の木村伊兵衛賞作品展の哀しいまでの空疎さ。

 昨日、池袋の新文芸坐で、小栗康平監督の「眠る男」と 「伽倻子のために」の デジタル4Kレストア版を観る前に、銀座に立ち寄って、木村伊兵衛英賞の受賞展を観てきた。 …

佐伯剛
1か月前
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日本人の心がどう作られてきたのか。縄文と渡来文化のあいだ。

 日本人の心が、どう作られてきたか。
 三日前に、中世の「いろは歌」のこと、二日前に、万葉の時代に遡って書いてきたけれど、今日は、おそらく縄文時代に遡るスピリット(おそらくというのは、縄文時代というのは、私たちに染み付いている思考特性の向こうの世界なので、そう簡単にわかるものではないから)と、渡来文化の影響を強く受けるようになった時代の橋渡し的な存在であると思われる空海や役小角を軸にして、書いてみ

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第1475回 日本人の心が、どう作られてきたか。(後半)。

「いろは歌」の作者が誰であったかを追求することも歴史の楽しみかもしれないが、そのことだけを目的化してしまうと、歴史の真相とは遠ざかってしまう。
 歴史の真相を掴むことは、歴史事実を確定させることではなく、その背景を理解することだ。太平洋戦争の戦犯を決めつけるだけでは、歴史の教訓は何も得られない。
 前回、「いろは歌」を通じて日本人に浸透していく仮名文字そのものに、日本文化の特質を考えるうえで大事な

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日本人の心がどう作られてきたのか。「いろは歌の果たした役割」

(日本人の心が、どう作られてきたか)。
 私たち日本人は、日本語を使って物事を理解し、日本語を使って物事を考えている。だから、私たちの思考やイメージが日本語の影響を受けていることは当たり前であり、日本文化も、日本語という言語の特質を抜きに存在しえない。
 日本人とは何か?という問いにおいて、日本人の起源をめぐる色々な議論はあるが、外国の地からこの島国にやってきた人たちでさえ、世代を重ねていくと、日

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現代の世界と、詩への希望

 シュテファン・バチウという亡命詩人について、知っている人はほとんどいないと言っていいかもしれない。
 私も、知らなかった。
 この詩人のことだけでなく、この詩人が生まれたルーマニアについても特別な関心を持っている人は、ほとんどいない。 
 だが、私は、阪本佳郎くんから、このルーマニア出身の詩人について深く探究していることを知らされた時、非常に興味深いと思った。
 なぜなら、辺境とか周縁世界という

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日本文化に宿る自然体という美意識

西欧の美というのは、例えばベルサイユ宮殿の庭園のように、それじたいが、「これこそが美だ!」と主張してくる。
 それに対して、日本が長い時間をかけて洗練させてきた美は、例えば苔寺のように、それを観る人の心に自由の余地を残す。
 ただ単に、綺麗とか、嬉しい、悲しいという気持ちだけではなく、哀愁や郷愁や感傷的な気持ちなど、しみじみとした感慨が、その時々の心の状態で変化する。
 ベルサイユ宮殿の整然とした

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人間の心の変化と、時代の変化。

一昨日、奈良に行った時、興福寺の近くの商店街にカメラ屋があり、店頭に、レトロな中古フィルムカメラと、オシャレな新品のフィルムカメラがずらりと並べられていた。
 おしゃれなフィルムカメラの価格は2万円以下。レンズも機能も大したことがない。
 けれども、若者にすごく人気があるのだそう。少し前からFUJIのインスタントカメラが世界中で大人気だったので、その延長か。
  簡易なフィルムカメラは、”エモい

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千年の時空を超えて今に伝わってくる叡智。

春日大社と空海展へ。
 空海が関わって制作されたとされる神護寺の曼陀羅が、修復作業を経て公開。
 西洋絵画だと、ヒエロニムス・ボスが、超精密な描写を行なっているが、それよりも700年も前に日本でつくられた超巨大な曼陀羅の中の超精密な描写には、驚くばかり。
 絵画にしても仏像にしても書にしても、人間の手技によるものが圧倒的な力を帯びているのだが、果たして現代作られているもので、千年の時を超えて後世に

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偶然性の仕打ちを受容する生存の美学。

明治時代になって、浮世絵などの日本文化が、二束三文の値段で海外に持ち去られたように、日本人は、日本にあるものの価値を知らず、欧米のものに価値があると思い込んで、高い値段を払ってまで手にいれてきた。そして、欧米から褒めてもらって初めて、自分のところにあったものの価値に気づく。
 そうしたマインドを謙虚と言うこともできるが、卑屈でもありえる。お墨付きマークのついた強いもの(権威)に取り入ったり、へつら

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ピンホール写真の写真展について

来年の初めに、東京のオリンパス関連のOMシステムギャラリーで写真展を開催することになったのだけれど、これまでの人生で、自分の写真の写真展は初めてのこと。
 本はたくさん作ってきたのでイメージを掴みやすいのだが、写真展は、プリントサイズとか、額装のこととか、経験がないのでイメージできないことが多い。
 普通の写真展のように、だいたいのサイズが決まっていて、普通の額装にして壁に飾るだけなら、どの写真を

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北斎や広重が描いた小野の滝をピンホールカメラで撮影した。

戦国時代、織田信長、豊臣秀吉、徳川家康に仕えて重用され、肥後国の細川家の礎となった細川幽斎は、一流の文化人で優れた歌人でもあった。
 その彼が、豊臣秀吉の小田原城攻めに参陣し、戦勝のあと、中山道経由で京へ戻る時に、木曽の寝覚の床の近くにある小野の滝のことについて、このように書き残している。
「木曽路小野の瀧といふは、布引、箕面などにもをさをさおとりやはする。是程の物の、此国の歌枕にはいかにもらした

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闇の深さと、色相の繊細かつ豊かさ。

嵐山から嵯峨野は、観光客で溢れかえっているけれど、清涼寺あたりまで来ると、それほどでもない。
 私が、京都に移住することになったきっかけの一つが、11年前、風の旅人の第47号で、染色家の志村ふくみさんのロングインタビューのために、この清涼寺のすぐ近くの志村さんのアトリエに来たことだった。
 早めにやってきて、その待ち時間のあいだ、清涼寺で、ぼんやり時間を過ごしていた。
 当時、志村さんは90歳だっ

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レトロでアナログだけれど新しい世界!?

これまで世代論について、あまり深く考えたことがなかった。
 交遊関係にしても、年代で分けて意識することもなかったのだが、近年、Z世代という生まれた時からインターネットが当たり前だった世代の社会的影響力が、次第に増しているのだという。
 日本は若者人口が減少気味だが、発展途上国とされていた国々ではZ世代の人口がとても多い。そして、アメリカでさえ、すでに総消費の40%をZ世代が占めていて、彼らが社会的

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縄文人には見えていて、現代人には見えていないもの。

先ほど書いたことの補足だけれど、今回、北海道でもオーロラが見えた。
 私は、自分でも縄文土器を作り続けていた時期があったのだが、縄文土器の文様は、オーロラのようなプラズマ現象ではないかという気がしていた。   
 

縄文人は、実際にオーロラ現象をよく見ていたのではないかと思うのだ。
 というのは、縄文遺跡は、東北から北海道にかけて多い。そして、貝塚の貝の種類や貝塚のある場所から、当時の海岸線が現

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人間の目には見えない宇宙の真理

 太陽フレアの大爆発によって、低緯度でもオーロラが見られたというニュースが、各地から届いている。
 その場にいた人たちがスマホで撮影したオーロラを、世界中のどこでも見られるわけで、地球上に起きていることを人類全員が共有化できる時代になっていることを、つくづくと感じる。
 素人が撮ったものでも、オーロラの映像は美しい。しかし、どこか不気味でもある。太陽活動が、ダイレクトに地球に影響を与えていることの

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情報として表に出てこない日本のリアリティ

日本という国は、いくら都市化が進んでいるといっても、国土の70%以上が山岳地帯であり、島国であるがゆえに、少し移動するだけで大海原を見ることができる。
 こうした自然風土の国でありながら、山も海も見えない大都市のなかだけで日々暮らしていると、現実感覚が狂ってくる。 
 テレビやインターネットから送り届けられる情報を現実世界だと思ってしまうと、その情報をもとに自分の行動を決めていくことなるが、テレビ

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今年の木村伊兵衛賞作品展の哀しいまでの空疎さ。

 昨日、池袋の新文芸坐で、小栗康平監督の「眠る男」と 「伽倻子のために」の デジタル4Kレストア版を観る前に、銀座に立ち寄って、木村伊兵衛英賞の受賞展を観てきた。
 そして、会場に入るなり、その空疎な内容に呆然。ポスターのような無機質な写真が掲示されていて、モニターに会場内を写しているような画像が流されていたから、ここは展示の入り口のようなもので、部屋の向こうに、展示会場があるのかと本気で思った。

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