北斎や広重が描いた小野の滝をピンホールカメラで撮影した。


木曽路の寝覚の床

戦国時代、織田信長、豊臣秀吉、徳川家康に仕えて重用され、肥後国の細川家の礎となった細川幽斎は、一流の文化人で優れた歌人でもあった。
 その彼が、豊臣秀吉の小田原城攻めに参陣し、戦勝のあと、中山道経由で京へ戻る時に、木曽の寝覚の床の近くにある小野の滝のことについて、このように書き残している。
「木曽路小野の瀧といふは、布引、箕面などにもをさをさおとりやはする。是程の物の、此国の歌枕にはいかにもらしたるにや」
 木曽路の小野の滝は、神戸の布引の滝や、大阪の箕面の滝に全く劣らないのに、どうして歌枕になっていないのかと疑問を呈しているのだ。
 この小野の滝は、葛飾北斎や、歌川広重も絵を描いているのだが、二人の滝の捉え方は、まったく異なっている。
 芸術家でも、どこをどう観るのかによって表現が異なる。

 葛飾北斎は、滝そのものに真正面から向き合って、大自然の荘厳さを描き出している。北斎の絵は、さすがに斬新だ。
 一方、広重の方は、木曽の旅の風情に重きが置かれ、滝は、旅を盛り上げるスパイスという具合だ。
 広重の絵は、 現代のSNSにわりと多く投稿されるような絵。

 私は、ピンホールカメラで、写真を撮るというより、無意識のうちに何ものかを招き入れるように、眺めるままに像を映し出している。

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