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社会批評

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記事一覧

思い出すことなど③ 元気がないのはみんな一緒!

こないだ知り合いと「映画業界が元気がない」という話をした。
確かに否定できないほど映画業界は元気がない。
小津安二郎や黒澤明の時代はどこへやら。
最近はしっかり韓国映画に抜かれてしまった。

という話をすると「面白い映画だってあるぞ!」と怒られてしまうのだが、問題はその素晴らしい面白い映画たちが全く着目されていないことだ。

面白い映画は毎年何本もある。でもそのほとんどが小さな劇場で短く上映されて

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アカデミー賞総括① ウィル・スミスビンタ事件と『最後の決闘裁判』

アカデミー賞総括① ウィル・スミスビンタ事件と『最後の決闘裁判』

長いこと仕事が忙しく、noteが更新できませんでした。
4月は少し余裕がありそうなので、毎週書いていこうと思います。

今回から3週かけてアメリカのアカデミー賞について個人的な感想を書いていこうと思います。
本当なら、受賞作についてだけ書いていきたいのですが、受賞作の栄誉を覆い隠すほど盛り上がってしまったウィル・スミスビンタ事件が起きてしまったので、それについて触れないわけにはいかないでしょう。

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藤本タツキ『ルックバック』論

藤本タツキ『ルックバック』論

『チェンソーマン』の作者、藤本タツキ先生のチェンソーマン完結後初の長編読み切り作品『ルックバック』がジャンプ+にて配信された。

京アニ放火事件への哀悼のような作品であり、緻密に計算され尽くした構成で、感情を揺さぶる大傑作だ。

一部ネタバレになる内容がある。アプリのジャンプ+で無料配信されているので読後に読んでいただきたい。

京アニ放火事件の影響この漫画を考えるうえで鍵となる要素は主に4つ。

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エヴァンゲリオン批評① 〜居場所のない自我、「作者の死」〜

エヴァンゲリオン批評① 〜居場所のない自我、「作者の死」〜

エヴァに関しては『シン・エヴァンゲリオン劇場版𝄇』を鑑賞した後に総括しようと思っていたのですが、2回鑑賞後にまとめたかったので遅くなってしまいました。1995年のTVアニメの放送から、旧劇場版3作、新劇場版4作というスターウォーズ並みのボリュームで26年にも亘りファンを惹きつけ続けた作品について考えます。

エヴァンゲリオンシリーズ全体の総括をしていくので、ネタバレ全開です。ネタバレが嫌な方はお

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無駄と効率化

無駄と効率化

僕は散歩するのが好きだ。何の予定もない休みの日やその後急ぎの仕事がない取材の帰り道など、大通りから外れた裏路地を歩いたり、電車に乗らず歩いて移動したりする。

知人からなぜそんなことをするのかと訊かれたことがある。その時はうまく答えられなかったが、最近いろいろ考えてある一つの答えに辿り着いた。

僕は無駄の中にある価値が好きなんだなと。

僕がやたら歩くのは正直言って無駄だ。ランニングしてるわけで

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月末映画紹介『ノマドランド』『あのこは貴族』批評

月末映画紹介『ノマドランド』『あのこは貴族』批評

ここのところ忙しくて映画を全然見に行けてないし、noteも書けなかったのですが、とても素晴らしい映画を2本見たので、時間を削って書いてみることにします。

アメリカの原点に立ち返る『ノマドランド』『ノマドランド』は中国出身のクロエ・ジャオ監督が2017年に出版されたノンフィクション小説『ノマド: 漂流する高齢労働者たち』を基に製作した映画であり、批評家から高い評価を得ている作品です。主演のフランシ

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極楽の蓮池のふちを独りでぶらぶら御歩きになっていらっしゃったお釈迦様が娯楽で糸を垂らす話に対する所感

 芥川龍之介の『蜘蛛の糸』という短編は日本で生まれ育った人なら大抵の人が話を知っているし、冒頭の「ある日の事でございます。御釈迦様は極楽の蓮池のふちを、独りでぶらぶら御歩きになっていらっしゃいました。」という一文は、有名すぎて誦じることも可能って人もちょくちょくいるのではないかと思う。

 一応あらすじを説明しておくと、御釈迦様が極楽の蓮池の下を覗くとその真下にある地獄でカンダタという男が苦しんで

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10年代は何だったのか?

2019年12月31日をもって、10年代が終わったわけですが、10年代って結局なんだったんでしょうか?
僕なりに簡潔にまとめてみました。アーバンギャルドの松永天馬曰くサブカルの人間はdecade(10年間)で物事を語るのが好きらしいので、サブカル野郎としてはdecadeで語るしかないですね!

2000年から2009年は多様化の時代だったと言えるでしょう。グローバリズムが世界中を覆った時代。欧米文

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風街から見る自然と文明 〜松本隆という詩神〜

元祖邦楽はっぴいえんどみなさまは、はっぴいえんどを知っていますか?はっぴいえんどは1969年から1972年のわずか3年間のみ活動していた日本のロックバンドです。細野晴臣、大瀧詠一、松本隆、鈴木茂の4人によって結成したバンドで、現在のいわゆるJ-POPと呼ばれる音楽は全てはっぴいえんどとその後継バンドの影響下にあると言っても過言ではないと思います。それほどまでにはっぴいえんどが遺した遺産は大きかった

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月末映画紹介 『ハーレイ・クインの華麗なる覚醒』 『三島由紀夫vs東大全共闘』批評

月末映画紹介 『ハーレイ・クインの華麗なる覚醒』 『三島由紀夫vs東大全共闘』批評

今回は3月に公開された作品から『ハーレイ・クインの華麗なる覚醒 BIRDS OF PREY』と『三島由紀夫vs東大全共闘 50年目の真実』について書きたいと思います。全く毛色が違う2作品ですが、興味を持っていただけると幸いです。

『ハーレイ・クインの華麗なる覚醒 BIRDS OF PREY』批評

DCコミックの実写映画化プロジェクト、DCEU(DCエクステンデッド・ユニバース)のスピンオフ作品

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窒素吸って安心する人

曖昧な何かを信じて安心する人がいる。空気だ。

この国で空気が持つ力は絶大だ。実際にルールが定められてる訳でもない、非効率的で大きな弊害があっても、「みんなやってる」「そういうもん」でまかり通ってしまうことがとても多い。

空気を読むことの8割くらいは意味がないと思っているし、そもそも空気は「読めない」。誰だ最初に「空気を読む」なんて言った奴。

空気なんて僕たちができるのは吸うことくらいでしょう

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『ウインド・リバー』〜アメリカの暗部から響くエレジー〜

『ウインド・リバー』〜アメリカの暗部から響くエレジー〜

最近は在宅勤務や休日の外出自粛などで、自宅にいる時間が増えていることと思います。そこで、NetflixやAmazon Primeで鑑賞できるオススメの映画を紹介します。

今回は2018年に日本で劇場公開されたアメリカ映画『ウインド・リバー』についてネタバレなしで紹介します。分かりにくい背景なども解説できればと思いますので、一度ご覧になった方も是非読んでいただければ幸いです。

あらすじ
 ワイオ

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雑誌とポストモダン

職業柄、メディアというものについてよく考える。

かつてはメディアの王様と呼ばれたテレビは「マスゴミ」と呼ばれ批判の対象だ。新聞も若い世代では購読してる人の方が少数派だろう。昨今のジャーナリズム的側面を持ったマスメディアは影響力を失い、SNSやインターネットなどのソーシャルメディアが力を持つ時代になった。

芸術・芸能メディアはどうだろう?

この国の音楽産業は「売れる音楽」を重宝し、売るためのみ

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「個性」を袋叩きにしながら「個性」に好きと囁くDV社会

「個性」を袋叩きにしながら「個性」に好きと囁くDV社会

僕は現在進行形である実験を行っている。髪色をちょっとずつ明るい青色にしながらどの段階まで怒られずに職場を過ごせるかという実験だ。

まだ始めたばかりなので黒髪がちょっと青みがかってるくらいであるが、仕事の取材相手に不安感を与えない程度まで青くしていくつもりだ

不思議なことだが学校や就活は「個性は大切」だと言いながら個性をとことん抑圧している。学校では制服が用意され、髪の毛の色や長さも指定される。

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