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スキのなかのスキ記事

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#現代詩

世界の終わりには

世界の終わりには

長い歴史の終着点は

どんな風だろう

大きな爆発音とともに

一瞬で消えていくのか

それとも静かに厳かに

フェードアウトしていくのか

または戦争という

愚かな行為で

既に傷だらけの地球を

最後の最後まで

痛めつけるのだろうか

いつどんな形で

その時が訪れるのか

誰にもわからないけれど

世界が終わるということは

地球の歴史も生物も

消滅してしまうということだ

もう無くな

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森ガール

森ガール

朝の『霧』が 僕たちを包み込む

まるで おとぎの国の幻想

きみは そこに住む森ガール

『雲』はね 地表に近い場所では

『霧』に 呼び名が変わるの

だから元々『雲』でもあるのよ と

手際良く『霧』を 袋に詰めていく

真実を知らない方が いいこともある

遠くにあるから 憧れのままで

夢を見ていられるものなのよ

手が届くと それはもう

夢じゃ無くなるわね

森ガールは いたずらっぽ

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行くあてのない恋

行くあてのない恋

アップルミントの風が

気まぐれに 夏を連れて行く

誰もいない 公園で

空のブランコに 乗った

まるで 波のように

ゆきては帰るを 繰り返し

きみは眼差しを 遠くする

そこからは 何が見える?

もう その瞳に 僕は映ってないけれど

行くあてのない 一つの恋が

黄昏色に 染まっていく

そうして やがてくる夜の闇に

静かに 消えてゆくだろう

明日から 隣にきみがいないけど

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詩)花火幻想

詩)花火幻想

機械―それから空と海 

私が美しいと感じることができるのは これだけ

あの晩 彼女はそうつぶやいた

花火の音が木霊していた

誰もが去年と同じように 花火を見て

同じように 歓声をあげているそのときに

人の声と雑踏から逃れるように

川辺に向かった

暗い川面には

せり出した樹が影を落としていた

火の玉が一つ 樹の周りを 飛び回り

昔 ここであったという 戦いが

連想された

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ことばの一生

ことばの一生

ことばの一生

ほんとうののことばを追い求める
すると、確かにこの先に見えたはずのそのことばは、
まるで煙のように すっと姿を眩ませてしまう

見失って、私は立ち止まる
どんなに目をこらしても、必死に痕跡を辿っても、
そこにはなにもない
まるで、最初から存在しなかったかのように

ただ、恋焦がれるように求めざるを得なかったことばが、
確かに存在したはずなのだ
そんな朧げな記憶が、
巨大な喪失感とと

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詩) 痕跡

詩) 痕跡

   痕跡

ふるえを知る者には
生を逃亡の中に駆け抜けることはできない
たとえ俯いたまま歩こうとも

怖れの故に身を寄せ合うものは少なく
嘘を創造するために産み出した美辞麗句には
ああ、何と蟻の如く人々はたかることか

   静謐の中にこの指輪を贈るとき
   かすかな想いは生活によって―――
   ああ、どこへ消え去るものか

人々は街に蹴りを与え
街は風を拒み
風は人々を無視して通り過ぎる

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我儘

我儘

自由を望みながら

少しの束縛と嫉妬を期待する

自身にお金をかけながら

人肌が恋しいと眠る

好きではないと知りながら

いつまでも手放せずにいる

素直が一番美しいと知りながら

プライドを固めて生きている

私が私であることを願いながら

誰かのものになるいつかを想像する

我儘な自分を命がけで愛していく

誰かの我儘になりたいとほんの一瞬よぎったけれど

詩)枯葉とおじぎ草〜ハンセン詩人桜井哲夫の詩に寄せて

詩)枯葉とおじぎ草〜ハンセン詩人桜井哲夫の詩に寄せて

く枯葉〉
枯葉を手のひらに乗せ
日溜りの枯葉に
ゆっくりと座る
手のひらの枯葉を舌先に当て
点字舌読のように
細い葉脈の行間を静かに探る
浅黄色の春の若葉
燃える夏の太陽に輝く青葉
鮮やかに行間に描かれていた
初めと終りの文字だった

くおじぎ草>
夏空を震わせて
白樺の幹に鳴く蝉に
おじぎ草がおじぎする

包帯を巻いた指で
おじぎ草に触れると
おじぎ草がおじぎする

指を奪った「らい」に
指のな

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