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10分でわかる知財最新事情

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弁理士で翻訳家である奥田百子氏による知財最新事情のコラム。2024年は「英語で語る日本の特許出願実務」から内容を変更し、特許、商標、著作権など知財にまつわるトピックスをお届けいた…
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#著作権

閉鎖した病院のウェブサイト復活が著作権侵害

閉鎖した病院のウェブサイト復活が著作権侵害

閉鎖した病院のウェブサイトを復元し、そこに掲載されていた病院内の画像を無断で掲載し、健康食品やサプリなどの広告を掲載した会社役員の男性が、書類送検されました。
この男性は、病院のドメイン名をオークションサイトで購入し、サイトを復元しました。病院のサイトであれば、検索で上位に表示される、という動機です。

この事件では何が問題でしょうか?
病院内の画像を掲載したことです。これは写真事務所が撮影したも

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「ひこにゃん」商標の無償使用許諾

「ひこにゃん」商標の無償使用許諾

「ひこにゃん」の商標を10月から無償で使用できることになりました。
「ひこにゃん」は、滋賀県彦根市のご当地キャラクターです。図形や写真の商標として、以下を商標登録しています。

今回無償で利用できるようになるのは、この図形や写真の様々なポーズです。以下をご覧下さい。

例えば、こんなポーズにも無償使用が認められます。

これまで、「ひこにゃん」の使用については、「売上見込み額の3%」の使用許諾料が

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「早バレ」の問題点

「早バレ」の問題点

漫画を発売日前にインターネットで公開するいわゆる「早バレ」により、外国籍の2人が逮捕され、執行猶予(3年)の懲役刑(1年6月)と罰金刑(50万円)が言い渡されました。

「週刊少年ジャンプ」を正規ルートで入手し、これをスマホで撮影することで複製して、発売日より5日前に公開した疑いが持たれています。さらに、この漫画を英語やアラビア語に翻訳し、海外にも公開した疑いが持たれています。

「早バレ」は何が

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生成AIコンテンツ創作のためのガイドブック

生成AIコンテンツ創作のためのガイドブック

生成AIによる創作が盛んですが、これが知的財産権侵害を引き起こすことがないように、各社は対策を講じています。
「コンテンツ制作のための生成AI利活用ガイドブック」(経済産業省)が公表されました。

https://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/contents/ai_guidebook_set.pdf

生成AIブームにより、業務の効率化や新たな創

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デジタル万引きは著作権侵害か?

デジタル万引きは著作権侵害か?

書店で本のページを自分用の記録に残すために、スマホで撮影する行為は違法でしょうか?

ルール違反とか道義的責任は抜きにして、著作権の問題を考えると、これは幸か不幸か写真を撮るだけでは著作権侵害ではありません。
自分のためだけに写真を撮るのであれば、「私的使用」になるからです。
 
著作権法30条1項1号
「著作物は、個人的に又は家庭内その他これに準ずる限られた範囲内において使用すること(私的使用)

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相次ぐ無断転載

相次ぐ無断転載

無断転載の事件が相次いでいます。

デーリー東北新聞社の外部執筆者である短大准教授が、東京都内の会社がセミナーで配布した資料の一部を盗用した事件

近江八幡市が子ども・子育て会議で配布した資料の表紙に、インターネットからダウンロードした写真やイラストを無断掲載

http://shigahochi.co.jp/inf.php?type=article&id=A0040741

つくばエクスプレスを

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生成AIによる脚本朗読のイベント中止

生成AIによる脚本朗読のイベント中止

今回も生成AIの話題です。

生成AIにより創作された脚本を人気声優が朗読するイベントが中止になりました。未だに生成AIによる創作には批判が強いようです。

これは、有料版のChatGPTにアイディアを出し、脚本を書かせ、これを人気声優が読み上げるイベントでした。しかし、AIによる創作は「盗作」「ただ乗り」という批判が強く、このイベントを決行すると声優にも迷惑がかかるということで、中止を決行したそ

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生成AIによるイラストの著作権問題

生成AIによるイラストの著作権問題

生成AIによるイラストが著作権侵害のおそれがあるため、海上保安庁がリーフレットの配布と掲載を中止しました。問題の画像は次の通りです。

https://newsdig.tbs.co.jp/articles/-/1092740

海上保安庁がこれを同庁のウェブサイトやSNSにアップしたところ、イラスト中のまつ毛や髪飾りに自然な点があり、「生成AIによる創作ではないか?」「著作権侵害ではないか?」との

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NewsPicksの無断転載事件

NewsPicksの無断転載事件

経済ニュースサイトである「NewsPicks(ニューズピックス)」は他の報道機関の写真などを無許諾で掲載していたとして、謝罪のコメントを出しました。これは、一般社団法人日本新聞協会から著作権侵害の指摘を受けた結果です。

NewsPicksは国内外の報道機関やメディア100社以上の記事を掲載していますが、利用許諾を受けていないコンテンツを掲載していたとのことで、主に写真のトリミングが行われていまし

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『ゼロ、ハチ、ゼロ、ナナ。』事件

『ゼロ、ハチ、ゼロ、ナナ。』事件

芦原妃名子さんの『セクシー田中さん』の事件をお伝えしましたが、この事件と関連してよく挙げられるのが、辻村深月さんの小説『ゼロ、ハチ、ゼロ、ナナ。』のドラマ化事件です。この小説をNHKがドラマ化するにあたり、プロットを見せて欲しいと講談社(出版元)がNHKに要求しましたが、これは実現されず、クランクインの2週間前になってやっと全4話までの準備稿が提示されました。しかも「容認しがたい改変」があるため、

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AIによる創作は著作権侵害か?

AIによる創作は著作権侵害か?

AI(人工知能)の創作に著作権が発生するか? というニュースでもちきりです。AIは人間ではないから著作権は発生しません。
そしてもう一つの問題は、AIによる創作が誰かの著作権侵害であるか? という点です。

例えば、翻訳は著作物であるため、他人の翻訳を丸写ししたら著作権侵害です。では、DeepLが行った翻訳をそのまま使った場合、これは誰かの翻訳の著作権侵害ではないか? という点が問題になります。D

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「週刊少年ジャンプ」の早バレ

「週刊少年ジャンプ」の早バレ

「週刊少年ジャンプ」を発売前に入手し、スマホで撮影して海賊版サイトにアップロードした者らが、著作権法違反で逮捕されました。
いわゆる「早バレ」という行為です。

https://www.shueisha.co.jp/wp-content/uploads/2024/02/20240205.pdf

早バレは発売日を楽しみにしているファンの気持ちを踏みにじるものである、とよく言われます。しかし読者はむ

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「セクシー田中さん」の事件

「セクシー田中さん」の事件

「セクシー田中さん」の原作者である漫画家の芦原妃名子さんが亡くなりました。この漫画のドラマ化、脚本家を巡ってトラブルがありました。

原作の小説や漫画などを脚本化、ドラマ化することを「翻案」といいます。翻案する権利は、以下の条文により原作者に認められています。

「著作権法27条 
著作者は、その著作物を翻訳し、編曲し、若しくは変形し、又は脚色し、映画化し、その他翻案する権利を専有する」
 
つま

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ポケモンに似たキャラクターがゲームに登場

ポケモンに似たキャラクターがゲームに登場

ポケモンに似たキャラクターが登場するゲームが発売されたとして、問題になっています。

ある個人ユーザが、1月19日発売の大ヒットゲーム「パルワールド」の中で、モンスターをポケモンに似たキャラクターに変更したMOD動画を投稿しました(注、MODは、ゲームやデータを改造するプログラム、ファイルです)。

これは著作権侵害であると主張した任天堂の申請により、削除されました。

株式会社ポケモンには、「ポ

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