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「ひこにゃん」商標の無償使用許諾

「ひこにゃん」の商標を10月から無償で使用できることになりました。
「ひこにゃん」は、滋賀県彦根市のご当地キャラクターです。図形や写真の商標として、以下を商標登録しています。

商標登録5104692号           商標登録5385268号
商標登録6042695号               商標登録5411684号


今回無償で利用できるようになるのは、この図形や写真の様々なポーズです。以下をご覧下さい。


例えば、こんなポーズにも無償使用が認められます。

これまで、「ひこにゃん」の使用については、「売上見込み額の3%」の使用許諾料が徴収されていました。しかし、新型コロナウイルスにより新規契約が伸びず、知名度アップのために無償使用を認めることとしました。

無償使用が認められるこれらのポーズは、彦根市が登録している上記商標とは異なりますが、「ひこにゃん」のキャラクター自体を使うため、様々なポーズを使うのも彦根市の許諾が必要です。このキャラクターの著作権も彦根市にあるので、「商標の使用許諾」とはいっても、著作権の許諾であるともいえます。

商標の無償使用は、そのキャラクターを広く使ってほしいという目的があり、特に「ひこにゃん」のようなご当地キャラは、地域の活性化や知名度アップのために行われます。
地域活性化のための商標制度としては他に、「地域団体商標」があります。これと並んで、今後は、地域おこしのために、「商標の無償使用」も行われるでしょう。

ただし、商標は商品に付されるものであるため、付される商品の品質が重要です。劣悪な商品に商標を付されてしまうと、商標のイメージを損なうことになります。

今回の「ひこにゃん」の無償許諾も、誰でも何の届け出もせずに使ってよいのではなく、「商標使用許諾申請書」を提出する必要があり、「使用目的」「使用品の名称」「製作予定数」「使用期間」などを記載する必要があります。その点では、無償使用とはいっても、厳しいチェックがされます。しかも、無償使用できるのは、公共団体、報道機関、出版社、旅行社など、かなり限定されています。

これらの団体であれば、「ひこにゃん」を適切に使ってくれることが予想されます。個人が「ひこにゃん」を使ってビジネスを始める場合には、許諾されない可能性が高いと思われます。

今回の「無償使用」は、知財を第三者に広く開放する、という利用的側面が強調される取扱いです。しかし誰にでも門戸が開放されているわけではなく、あくまでも「ひこにゃん」イメージアップを図ってくれる団体にのみ許諾される、いわばイメージアップの協力制度のように思われます。

弁理士、株式会社インターブックス顧問 奥田百子
翻訳家、執筆家、弁理士(奥田国際特許事務所)
株式会社インターブックス顧問、バベル翻訳学校講師
2005〜2007年に工業所有権審議会臨時委員(弁理士試験委員)英検1級、専門は特許翻訳。アメーバブログ「英語の極意」連載、ChatGPTやDeepLを使った英語の学習法の指導なども行っている。『はじめての特許出願ガイド』(共著、中央経済社)、『特許翻訳のテクニック』(中央経済社)等、著書多数。