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AIによる創作は著作権侵害か?

AI(人工知能)の創作に著作権が発生するか? というニュースでもちきりです。AIは人間ではないから著作権は発生しません。
そしてもう一つの問題は、AIによる創作が誰かの著作権侵害であるか? という点です。

例えば、翻訳は著作物であるため、他人の翻訳を丸写ししたら著作権侵害です。では、DeepLが行った翻訳をそのまま使った場合、これは誰かの翻訳の著作権侵害ではないか? という点が問題になります。DeepLは様々な翻訳データを蓄積して作成されているからです。

AIによる創作が著作権侵害か? という点に関して、以下の記事に面白い視点が漫画で紹介されています。

AIの創作を真似しても著作権侵害にならない理由は、「元ネタを特定できないから」です。つまりAIは何万ものデータを学習させられており、その結果、創作が出力されます。この何万ものデータには他人の著作物も当然あります。しかしAIから出力された結果は、誰の著作物を真似したものか最早、特定できません。だからAIによる著作は、その誰かの著作権侵害ではない、というのです。

しかし、AIによる創作が著作権侵害となる場合もあります。AIを道具として使い、特定の著作物を真似させたときです。「〇〇さんの絵にそっくりの絵を描いて」とAIに指令して出力させたら、これは著作権侵害です。
これを「依拠」といいます。特定できる元ネタに拠りどころにしていれば、著作権侵害です。

結論をいうと、
① AIによる創作は著作物ではない
② AIによる創作も著作権侵害ではない(何万のデータに基づいており、元ネタを特定できないから)、したがってAIによる創作を利用しても著作権侵害ではない
③特定の著作物に依拠するようにAIに指示して創作させたら、著作権侵害

上記の漫画記事は『仕事でSNSを使いたいけど初心者の「やらかし」が怖いので弁護士さんに気になること全部質問してみた』(日比野大 著、ヤマサキミノリ 著、サンマーク出版)から転載されています。
https://www.amazon.co.jp/dp/4763141015

人間の創作物もたとえ著作者のオリジナルとは言っても、無意識のうちに著作者自身が見聞きしてきた他人の著作物がベースになっています。その点では、AIと同じであり、無限のデータが著作者の頭に蓄積されており、それをもとに出力されたのが著作物です。そもそも創作できる叡智があること自体、数多くの先人の著作物に触れてきた証拠です。

そのように考えると、AIも人間と異なることはなく、AIの創作が著作物と認められてもよいのでは? という点にこの記事を通して気づかされました。

弁理士、株式会社インターブックス顧問 奥田百子
翻訳家、執筆家、弁理士(奥田国際特許事務所)
株式会社インターブックス顧問、バベル翻訳学校講師
2005〜2007年に工業所有権審議会臨時委員(弁理士試験委員)英検1級、専門は特許翻訳。アメーバブログ「英語の極意」連載、ChatGPTやDeepLを使った英語の学習法の指導なども行っている。『はじめての特許出願ガイド』(共著、中央経済社)、『特許翻訳のテクニック』(中央経済社)等、著書多数。