記事一覧
屋上にて【短編小説】
「では、見学者は私にカードを渡してください」
立ち上がったのは五人の女子と三人の男子。そのうちに、里山清子と長谷川蒼がいる。
休み時間、みんな更衣室へ走る。教室には清子と蒼を含め数人の見学者。清子は自席で読書していた。後ろをプールバッグを持った女子が黄色い声を出しながら早足で通り過ぎてゆく。ふと、彼女の視界の端に白い手を見る。清子がぎょっとしたのをかろうじて抑えながら見上げると、蒼だった。
ゆううつな女の子たち【短編小説】
とある村のはしのほう、学校からも遠くてシラカバのおいしげる森に囲まれたところに、ふたりのなかよしな女の子がいました。ひとりはビアトリス、もうひとりはナタリーといいました。ビアトリスはいつもゆううつそうな顔をしていました。彼女が、ゆううつだと思うことをあげるとしたら、宇宙の果てまでそのことばがつみかさなっても足りないでしょう。たとえば、学校がうちから遠いとか、池の水がきたないとか、本がぶあつすぎる
もっとみるグラント先生【短編小説】#学校#教育#先生
グラント先生
ある中学校に、グラントという先生がいました。グラント先生は1年C組の担任でした。1年生の先生をまとめる役も背負っていました。彼女はとてもきびしい先生でした。生徒が一分、いや一秒でも朝の会におくれたり、給食当番がちょっとおしゃべりしたり、音楽の授業で大きな声で歌わなかったりすると、全員の前でしかりつけました。しかられた生徒は、作文を書かされ、二度と「悪い」ことをしないように反省しなけ