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詩集

43
私の紡いだ言葉たち。 全部のせ。
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2023年11月の記事一覧

【詩】鍵のない錠前

【詩】鍵のない錠前

僕を縛る苦い記憶
引き止める優しさに
「No」というナイフを突き立てた日

不思議な自信に溢れていた10代の終わり
僕の甘い言葉で引き寄せた人を
自ら辛い言葉で傷つけた日

10年以上も前 今でも思い出してしまう僕の罪
その罪悪感が鎖のように伸びて絡みつき
脳の深い場所でずっと外れないでいる

その鎖に下ろされた錠前の鍵が
いつまで経っても見つからない
仕事もし 結婚もし 子どもも生まれ
親という

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【詩】花言葉

【詩】花言葉

あなたを待っています
私を思い出して
また会う日を楽しみに
あなたを忘れない

あなたたちは色んな言葉を囁くけれど
どれも意味はわからない

佇む私たちを見て
時には笑って
時には泣いて
なぜそのような表情を向けるのかわからない

たゆたう私たちの首根っこを
嬉しそうに引き千切り
知らない場所に引き出され
誰かもわからない人へ引き渡され
そのときに唱えていた
おめでとうがわからない

君がいつも囁

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【詩】パレット

【詩】パレット

朝焼けの金色に
お気に入りのメロディーライン
昼下がりの余白に
横たわる空席のベンチ
無口な月明かりに
寝る前のホットココア
君の吐息に
身を寄せて

なんだか何にでも
溶けてしまいたい気分

触れ合ったところから
混ぜておくれ

新しい私がうまれたら
羽振りよく塗りたくっておくれ

無くなってしまったら
また絞り出しておくれ

出会えたことを
忘れないでおくれ

【詩】地図

【詩】地図

はじめは一本道だった
でも、私の歩みでは辿り着けない場所だと思った
立ち止まって
手当たり次第に見つけたニ、三の分岐を進む
どれも楽しそうな道に見えたが
どれも先々で途切れていた
ふと脇道に目をやる
勾配のある山道で
今度こそはと飛び込んだ
刺さるような険しい足場や
息の詰まる湿った空気
鬱陶しく空を覆う木々が囲み
今はその隙間から見える天体だけが私の目印

地図は

思い出したようにポケットから

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【詩】切先

【詩】切先

滾る念い(おもい)を打ちつけ
研ぎ澄ます

洗練された言葉の横面は
二日月の如く薄く張りつめ

振り下ろすのではなく
言葉の重さに身を委ね
一切を過ぎ行く

全ては過程でしかない
批評家などいない
立ち塞がるものは顧みず
ただ言葉を馳せるのみ

燃えよ
鍛えよ
打ちつけよ

研げよ
捨てよ
身を委ねよ

切先は常にあるべき場所に向かう
己もそこに辿り着くのだ

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【詩】夜とイルカ

【詩】夜とイルカ

『夜とイルカ』

仄暗い部屋の隅
一息ついて横たわった思考が
夜の静寂(しじま)に澱んでいく

幽々たる意識の底
どこまでも沈んでいけそうな水の重さに
身を委ねるのは早すぎる

闇夜を照らす月光が 水平線を教えてくれる
このまま沈んでしまったら 忙しい朝に溺れてしまう
浮上したい 泡沫(うたかた)の安息

乗り越えた苦労を忘れて まだ泳いでいたい
噛みしめた喜びを抱いて まだ藻掻いていたい
息の続

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【詩】ドアキッカー

【詩】ドアキッカー

何かに気圧され立ち竦んだとき
いつもは控えめな私の心から
一人の勇敢なドアキッカーが飛び出していく

人前での発表に怖気づいていると
俺が先に行くと恐怖心を蹴破った

一歩踏み出すべきか悩んでいると
俺が先に行くと進んで前へ踏み出した

失敗した姿を見せたくないと二の足を踏んでいると
俺が先に行くと羞恥心を蹴破った

想いを伝えることに狼狽えていると
俺が先に行くと口を衝いた

立ち塞がる困難も

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【三行詩】レジスター

【三行詩】レジスター

ピッ ピッ ピッ

淡々と価値を知らせるレジスター

よかったら私のこともピッとしてくれないかな

【三行詩】持ちつ持たれつ

【三行詩】持ちつ持たれつ

杖を支えにしてあなたは立っているけれど

杖もあなたの支えがあって立っていられる

杖の杖はあなたで、支え合っているんだね

【詩】餃子

【詩】餃子

私の餃子のひだは小さくて
慣れた手つきで
これでもかと餡を詰め込む

君の餃子のひだは大きくて
慣れない手つきで
控えめに餡を乗せていく

私は美味しく作りたくて
君は作るのが楽しくて

焼き上げたあとの君の餃子は
どこか不格好だけど
たくさんの余白が大きく広げた翼のようで
私の太った餃子より
どこまでも高く飛んでいってしまいそう

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【詩】やさしい弾丸

【詩】やさしい弾丸

「あなたのためを思って」
そんな親切心から放たれる言葉

それは私にとっては弾丸で
50口径で抉っていく

君のやさしさを受けるたび
私の傷口は増えていく

すれ違うだけの方がまだマシだ

君は西部劇さながら
すれ違いざまに振り向いて
私の言葉を置き去りに引き金を引く

そんなやさしい弾丸

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言葉を発す

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【詩】おむつ

【詩】おむつ

白くて
軽くて
沢山水を吸って
丸めて捨てられて
最初は炊きたてのご飯のにおいがして
たまに防ぎきれなくて
持ち帰るのがちょっと億劫で
あっという間に無くなって
いつの間にか小さくなって
気づいたら履かなくなっていて
赤ちゃんの必需品で
実はスナイパーも履いていて
歳を重ねるとまたお世話になるもの

これなーんだ?

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