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誰かとかかわること。

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軋轢もあれば葛藤もある。 そんなときは、書いてみる。
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#イラストレーション

一期再会

一期再会

光陰矢のごとしとはよく言ったもので。
10年という桁の時間が過ぎていたことを、これほど意識していなかったことに驚いた。
ほんの一、二年ご無沙汰しているくらいの感覚だったのだ。
加えてこんなご時世。
ディスプレイには懐かしい顔がつい数日前にも映し出され、その人の今が手に取るようにわかる。
そのくせ、彼らといざ面と向かって再会すると、奇妙な心持ちになる。

それはまるで、浦島太郎のあの玉手箱のように、

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幸不幸。

幸不幸。

昔から、「◯◯のようになりたい」という願望がない。
キラキラしたアイドルや、雑誌の表紙を飾るようなファッションモデル、憧れの先輩。
素敵だと思える人たちには数多出会ってきたけれど、彼らそのものになりたいというほどの思いに駆られることはなかった。

彼らと同じ服を纏ったところで、それは素敵な人の真似事でしかない。
彼らの振りを真似たところで、決してなりきれるわけでもない。
ずっとそう思ってきた。

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夢見る大人。

夢見る大人。

子どもの頃の夢というのは、点だった。
きらきらと光る到達点は瞬いたり、移動したりしながら、そのときどきの標石でいてくれた。
ところが、大人になり近づいてみると、夢とはいかにぼんやりした広範なエリアだったのかと思い知らされる。

到達したと思っていたら、じつはそこからがスタートで。
夢の中に入ると、端から端まで、まるで霞がかかったような世界が広がっていて。
外から眺めていた壮大な物語は、一気にただの

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ふくらまぬ声。

ふくらまぬ声。

私の声はあまり通らないな、と思うことがある。

どこにも、声の大きな人というのはいて。
皆の話をひとところに制するエネルギーを持っている。
かと思えば、声はささやかなのに、すっと透る声でその場の空気をさらっていってしまう人もいる。
同じ内容を話していたとしても、そんな人たちは人より幾ばくか多くのプラス要素を受け取る才があるのではないか。
妬み僻みなんてものを超えて、これはもう生まれ持ったなにがしか

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omonpakaru

omonpakaru

考え過ぎだと指摘されることがある。
投げかけられた言葉を頭で追い、ひとつひとつ答えていると、相手は呆れるか、どうかすると苛立ちすら抱えていたりすることすらある。
多くの人はそれほど考えないのだろうか。
「人間は考える葦」と言った人もいるくらいだから、考えることは人として大いに活用すればいいと思う。
お金もかからないし、場所も取らない。

逆に、考えのない言葉を浴びせられることもままある。
その突き

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謝り誤らず。

謝り誤らず。

ここ数年、謝罪の言葉を使うことが増えた。
それは不特定多数とのコミュニケーションが増えたことに起因するのだけれど。
時に、相手の怒りにワンクッション置くためのものだったり、誰かにお願いするときの潤滑油だったり。
とはいえ漫然と謝り続けていると、ただただ嫌気ばかりがさしてくる。

謝罪の言葉に埋もれ、疲弊していたあるとき、大切なのは謝ることの意図なのだと気づく。
謝るイコール自分が悪いということでは

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言の葉から

言の葉から

他国の言葉を知ることは面白い。
言葉を知りたいと思う理由はさまざまだけれど、それはとても得るものの大きい欲求な気がしていて。

近々その国に赴く予定がなくても、もしかしたらこの先も訪れることがなかったとしても、無駄とは言い切れないほどの刺激を与えてくれるから。
言葉を知ることで見えてくるその国の片鱗は、これまで自分の世界になかったものを教えてくれる。
歴史や文化、音、色、ものの見方。

若い頃は、

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消えない言葉。

消えない言葉。

学生の頃によく使った赤や緑の透明なシート。
参考書なんかに開いて乗せると、答えが消えるプラスチックのペラペラとした。
じつにシンプルな原理だけれど、よく考えたものだと思う。

同じ色を通して見れば、その先にあるものはまるで何もないかのように見える。
たとえどんなに嫌な言葉が書かれていたとしても、同じ色が重なれば、見えなくなる。
きっと、誰かが言ったことをその通りだということにしておけば、自分も書き

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贈り物の蓋を閉めるまで。

贈り物の蓋を閉めるまで。

ここ数年、贈るにしても貰うにしても、誕生日プレゼントというものが即座に思い浮かばなくなってきている。
子どもの頃はあんなに次々とあれが欲しい、これが欲しいと言えたのに。
誕生日が嬉しいか否かも、なんだか揺らぎつつある。

しかしやはり、遠く離れた友人になにか、とは思う。
あの和菓子は去年送ったし、クッキーを食べたくなる季節でもない。
かといって、雑貨なんておよそ見当違いなものを送ってしまいそうで。

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