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Essay

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音楽のことからニューヨークでの生活まで、分類していないごった煮のエッセイです。
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#エッセイ

三浦綾子「塩狩峠」感想

三浦綾子「塩狩峠」感想

本との出会いはふしぎなもので、その時々に必要な本、読むべき本というものが与えられているような気がする。今回もとても良いタイミングで、読むべき本が与えられた。

読んだ本は三浦綾子の「塩狩峠」である。名前とあらすじこそ知ってはいたものの、読んだことはなかった。今回夫のご家族——いわば私の大切な家族でもある——が日本からわざわざ買ってきてくれた。元々その本をお願いしていたわけではないけれど、もしまだ読

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また会いたくて、ロックス・ベーグル

また会いたくて、ロックス・ベーグル

ベーグル。

甘美な響きである。ジャムやクリームチーズを挟んだ甘いベーグルもいいし、サラダやアボカドのようなごはん系ベーグルも捨てがたい。ベーグルそのものの生地もゴマがふんだんに使われたものや、レーズンなどが練り込まれたものなどバラエティが豊かで、飽きが来ない。もちもちの生地の中に挟まるさまざまな美味しいものたち、その断面からは形容し難い「かわいさ」のようなものを感じ、写真を撮らずにはいられない。

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もしも、生まれ変わっても

もしも、生まれ変わっても

コストコ、ああ故郷コストコ、こっちではコスコと呼ばれる。メンバーズカードを持っていないからアメリカに来てからまだ行ったことないが、わたしはある時コストコのうしろのバス停でバスを待っていた。コストコの換気扇からむわっと小麦の焼ける香ばしいにおいがしていて、コストコ特有のにおいがわたしを覆った。逆輸入というか、なんともおかしな話なのだがバスに並びながら日本にいたときのことを思い出していた。わたしにとっ

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紙袋のなか、ブロンディひとつ

紙袋のなか、ブロンディひとつ

小学生の頃、土日に退屈だった記憶がほとんどない。

わたしの両親は休日になると朝から出かけたがって、やれフリーマーケットだのやれ科学館だの、色々なところに連れて行ってもらった。だから休日は家にいるものではないと思っていたし、自分がこの年になってようやく、フルタイムで働きながら休日に朝から家族全員を連れて遊びに行っていた両親のパワフルさは異常なものなのだと知った。そうした幼少期を過ごしていたからなの

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僕は孤独に踊り続ける

僕は孤独に踊り続ける

一昨年はわりとよくクラブに行っていた。

当時付き合っていた彼がDJだったから連れられるままに、というのがクラブに行っていた主な理由だったのだが、彼と別れた後でも結構クラブのこと好きだな、となんとなく考えていた。
そして今ニューヨークにいて、ジャズの方のクラブに行くのに忙しくてこちらではまだいわゆるクラブに行ったことがないけれど、踊れるライブも好きだ。一体、集団の中で踊るときに何が起きているのだろ

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それゆけ大豆民族

それゆけ大豆民族

わたしにはすばらしい才能がある。ひとつ目はどこでも眠れる才能だ。眠れなくて悩むことがほとんどなく、飛行機でさえ10時間ほぼ通しで眠れるくらい場所を選ばず眠れる。場所が変わろうが、騒音がひどかろうが、本当によく眠れる。不眠という症状に悩まされたことがなく、おやすみから10秒で眠れるという特異体質でもある。

そしてふたつ目は、なんでも食べられるという才能である。花粉症由来で豆乳だけは飲むと口の中が痒

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眠れぬ夜には短歌を詠んで

眠れぬ夜には短歌を詠んで

もうね、眠れないのなら短歌でも詠んだらいいと思うんです。

現代短歌って、本当に面白くって楽しい。
なので、今日は最近ハマっている短歌について語らせてください。

「感情を昇華させる」ことについて「感情を昇華させる」と言うとなんだか崇高な行為に思えますが、音楽でも絵画でも、言葉でも、とにかくどんなフォーマットであっても思っていることをなんらかの形で昇華させる、それだけで少し救われたような気になりま

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