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小説【月並な話】

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-本が好きなあなたへ。少し毒のある物語を- 140字以内の掌編作品たち。 『読みたい』はこちらで!
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2020年6月の記事一覧

🌛月並な話 Vol.27 【三番線】

🌛月並な話 Vol.27 【三番線】

三番線
同じ時間。いつもの駅。 今日から新学期。この車両に彼は乗ってくるだろうか。
私はブレザーだけど、彼は学ランがとても似合う「ドアが閉まりまーす」
ドンと衝撃でイアフォンが外れた。
「すみません!」
学ランの彼を背中に感じる。鼓動が早くなる。
はめ直したイアフォンからは大好きな曲が流れていた。

🌛月並みな話 vol.26 【ジェリーフィッシュ】

🌛月並みな話 vol.26 【ジェリーフィッシュ】

ジェリーフィッシュ
目の前には、たくさんのミズクラゲが浮かんでいた。透明なジェリーに鮮やかな照明が反射する。
「綺麗ですね」彼はそう言ったきり。
私たちはずっと水槽を見ている。
突然シャッターをきる音がした。
「やっとこっち向いた」彼は照れくさそうに言う。笑顔を青い光が照らす。
水槽の前、初めて手をつないだ。

🌛月並みな話 vol.25 【ゴリラペンギンとネコキリン】

🌛月並みな話 vol.25 【ゴリラペンギンとネコキリン】

ゴリラペンギンとネコキリン
「ゴリペンと呼んでください!見た目はゴリラ。
歩き方はペンギンです!」

第一印象はなんだか怖い。
けど本当は優しくて頼りになって可愛いゴリペン。
林檎を一緒に食べた。
青魚は得意じゃないみたい。

「ネコキリンと呼んでください!目は猫。
体系はキリンです!」

「呼びづら」といってゴリペンは笑った。

🌛月並みな話 vol.24 【金魚】

🌛月並みな話 vol.24 【金魚】

金魚
彼とのベッドから這い出して
金魚に餌をあげるのが日課だった。
パクパクと口を動かす真っ赤な生き物。
彼が引っ越すまであと3日。
彼女との同棲が決まったらしい。
いつものように床をコロコロする。
金魚に会えなくて寂しい? 
彼は微笑むだけで何も答えてはくれない。
それでもいいか。彼が餌をくれる間は。

🌛月並みな話 vol.23 【色を置く】

🌛月並みな話 vol.23 【色を置く】

色を置く
恐ろしいほどに真っ赤な太陽を2度みたことがある。中国の夕焼けとトルコの朝焼け。
今でもはっきり浮かぶ。
目に飛び込んでくるほどの赤。
炎で覆われた街並みに、一人残されたような赤。
赤は私を捕らえ、私は全てをキャンバスに落とす。
ご飯を食べるように
眠るように
誰かを愛するように。
私は色を置く。

🌛月並な話 vol.22 【夕やけ図書館】

🌛月並な話 vol.22 【夕やけ図書館】

夕やけ図書館
夕やけ図書館で本を読む。
もうどれくらい時が経っただろう。
今日も貴方が本を借りにくる。
忘れていた自分の記憶の物語を借りにくる。
関連本も2つ、3つ。
悲しい話だから、あえて貸し出ししない本もある。私は貴方の為に本を読んでいる。
貴方がいつ来ても良いように、
夕やけ図書館はいつも開いている。

🌛月並な話 vol.21 【あじさい】

🌛月並な話 vol.21 【あじさい】

あじさい
あの人は母親というより一人の女だった。
楽しかった思い出もあまりない。
庭に咲く紫陽花。
あの人が育てていた花。
ずっと好きになれないまま、母は死んだ。
「お母さーん」
庭で娘がカタツムリを手に乗せて笑っている。
自分が親になってみてわかる事もある。
「今行くよ」
紫陽花は今年も綺麗に咲いている。

🌛月並な話 vol.20 【ニョッキDAY】

🌛月並な話 vol.20 【ニョッキDAY】

ニョッキDAY
木曜日はニョッキの日。私はそう決めている。
ニョッキを食べると良いことがあるから。
今日は彼に告白をする。
いつもの倍ニョッキを食べた。
ニョッキを食べると良いことがあるから。
タッパにニョッキを詰めて彼に持って行こう。
チーズ味とトマト味。
まるで私たちみたいじゃない?
第一声はこれでいこう♪