初代尾上眞秀の初舞台。溌剌とした眞秀に、大立者がつきあう。極め付けは祖父菊五郎で、上手、滝のなかから押し出しで登場する。歌舞伎俳優として初舞台に立つこと、歌舞伎俳優として舞台に立ち続けること。なんて、幸福に充ちて、大変すぎるんだろう。
あけましておめでとうございます。昨年は、ご愛読ありがとうございました。体調もよくなって参りましたので、今年は、NOTEと書き下ろしの仕事に集中して評論を書いていきます。初芝居は、国立劇場の『南総里見八犬伝』です。肩の凝らない娯楽を提供してくれる菊五郎さんに感謝しています。
タイミングが少し遅れてしまったけれど、菊五郎さんの文化勲章受章の知らせを、とても嬉しく受け取った。二代目松緑からバトンを渡され、江戸の世話物を現代に息づかせるのは、どれほどの苦労だったことか。私は、菊五郎劇団を、長年、率いてきたことの功績も、筆舌に尽くせぬ重みがあると感じている。
正月の国立劇場。「南総里見八犬伝」の記者会見で、菊五郎に故・吉右衛門について尋ねた記者がいたらしい。返答は「いま、この場ではちょっと…お許しください」だったという。それにしても場をわきまえない人間がいるものだと、とことん呆れかえった。