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連続パンク小説『ババアイズノットデッド』 最終話

連続パンク小説『ババアイズノットデッド』 最終話

この世の全てのおばあちゃんと全てのおばあちゃん子に、そして最愛の祖母・笑子に心からの心を込めて本作を捧げる。   最終話 ババアイズノットデッド  9月30日、午後4時53分。  “孫と私”の出番までいよいよ一時間を切っていたが、ヒナタはまだ深いかなしみの中にいた。楽屋の片隅にじっとうずくまり、他の出演者のライヴさえ観ずにいた。床に腰をおろし、膝小僧に額をくっつけて、張り裂けるような胸の痛みにただ耐えるばかりだった。母親から報を受けてからスマホの電源はずっと切りっぱな

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連続パンク小説『ババアイズノットデッド』 第九話

連続パンク小説『ババアイズノットデッド』 第九話

この世の全てのおばあちゃんと全てのおばあちゃん子に、そして最愛の祖母・笑子に心からの心を込めて本作を捧げる。   第九話 猛スピードで祖母は(アドレナリン・ドライヴ)  9月30日、午後1時20分。胃ガンにより享年71歳で春野ウメが息を引き取ると、ミチハルとビワコは一度病室から出され、遺体を霊安室へうつすための準備がはじめられた。勤続23年のヴェテラン看護師・秋山と、新人看護師・岩田は病室に入ると、まずウメの遺体に手を合わせた。そして秋山は丸眼鏡を指で押し上げると、落ち

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連続パンク小説『ババアイズノットデッド』 第八話

連続パンク小説『ババアイズノットデッド』 第八話

この世の全てのおばあちゃんと全てのおばあちゃん子に、そして最愛の祖母・笑子に心からの心を込めて本作を捧げる。   第八話 あなたの名前  一週間後。  ヒナタがエレヴェーターに乗り込むと、厚いファイルを胸のまえで抱えたほっそりしたナースが、柔和な笑みをうかべて『何階ですか』と聞いた。八階です、とこたえるとナースはボタンを押し、ヒナタはちいさく頭を下げた。扉が閉まり、緩慢な速度で上昇するエレヴェーターのなかで、ヒナタは腕いっぱいに抱えたフルーツ牛乳をぼんやりと見つめていた

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連続パンク小説『ババアイズノットデッド』 第七話

連続パンク小説『ババアイズノットデッド』 第七話

この世の全てのおばあちゃんと全てのおばあちゃん子に、そして最愛の祖母・笑子に心からの心を込めて本作を捧げる。   第七話 踊る理由  それからというもの、ヒナタは閉じこもりがちになった。外出もほとんどせず、一日中部屋にこもっていた。最近は家族全員で食事をとることも増えていたが、このところは呼びかけてみても『いらない』と突っぱねるばかりで、顔さえろくに見せなくなっていた。バンド活動にも消極的だった。ウメがスタジオ練習にさそっても『頭痛いからムリ』とか『のどの調子が悪い』とか

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連続パンク小説『ババアイズノットデッド』 第六話

連続パンク小説『ババアイズノットデッド』 第六話

この世の全てのおばあちゃんと全てのおばあちゃん子に、そして最愛の祖母・笑子に心からの心を込めて本作を捧げる。 第六話 YOUNG LOVE(BLUE HEART)  ……長い梅雨も明け、クチナシの香りただよう若葉青葉の初夏の候、ナイスガイズ企画『ナイスタイム』はついにその日を迎えた。ちなみに開催場所はまたしても“純一”である。ライヴハウスでは出演者やスタッフがひしめき合い、楽屋でギターの弦を張り替えたり、階段に座り込みドラムパッドでパラディドルにいそしんだり、やれ物販スペ

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連続パンク小説『ババアイズノットデッド』 第五話

連続パンク小説『ババアイズノットデッド』 第五話

この世の全てのおばあちゃんと全てのおばあちゃん子に、そして最愛の祖母・笑子に心からの心を込めて本作を捧げる。 第五話 味方  あれから一週間。ウメとヒナタはこれまで以上に猛練習をかさねていた。毎日欠かさずスタジオに入り、ストイックに音楽に向き合った。そのまま朝を迎えることもしばしばあった。ある日の休憩時間、ヒナタは防音壁にもたれながらミネラルウォーターを飲むと、ベースアンプのうえにかかっているホワイトボードを疲れた顔でぼんやり眺めた。  “孫と私 初ライヴに向けて”

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連続パンク小説『ババアイズノットデッド』 第四話

連続パンク小説『ババアイズノットデッド』 第四話

この世の全てのおばあちゃんと全てのおばあちゃん子に、そして最愛の祖母・笑子に心からの心を込めて本作を捧げる。   第四話 孫と私  土曜、夕刻。  曇った空に浅い夕暮れがにじみ、街にむらさきの闇が忍び寄るころ、スイサイダル・テンデンシーズのキャップのうえから、オーヴァー・サイズのパーカのフードをかぶってデニムのショートパンツをはいたヒナタが、玄関先で鼻歌まじりにスニーカーの紐を結んでいた。日にちが経つのは早いもので、もうヒナタとウメがスタジオに入ってから一週間が過ぎてい

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連続パンク小説『ババアイズノットデッド』 第三話

連続パンク小説『ババアイズノットデッド』 第三話

この世の全てのおばあちゃんと全てのおばあちゃん子に、そして最愛の祖母・笑子に心からの心を込めて本作を捧げる。   第三話  ライト・マイ・ファイア  二重の防音扉を開け、広さ10畳ほどの貸しスタジオの一室に入ると、ヒナタはギターケースを下ろして馴れた手つきで空調を調節した。初めてスタジオに入ったウメは物珍しそうにあたりをキョロキョロ見回すと、感嘆したように声を漏らした。 「すげい。壁が一面まるごと、鏡になっとる……」  そうしてミキサー卓のツマミを眺めながら興味深げに

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連続パンク小説『ババアイズノットデッド』 第二話

連続パンク小説『ババアイズノットデッド』 第二話

この世の全てのおばあちゃんと全てのおばあちゃん子に、そして最愛の祖母・笑子に心からの心を込めて本作を捧げる。   第二話 バンドやろうぜ  春野ヒナタが中学校に行かなくなったのは、一年生の終わり頃からだった。  それまでは、まあまあうまくそれなりに中学生活をエンジョイしていた。友達も何人かいたし、授業もきちんと受けていた。部活は陸上部に所属し、回転数の早い健脚を生かして好成績をおさめてもいた。  きっかけは秋ごろである。とつぜん、陸上部の男子に告白されたのだ。  ヒナタ

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連続パンク小説『ババアイズノットデッド』 第一話

連続パンク小説『ババアイズノットデッド』 第一話

この世の全てのおばあちゃんと全てのおばあちゃん子に、そして最愛の祖母・笑子に心からの心を込めて本作を捧げる。   第一話 ババアイズデッド  御年71歳の春野ウメは、都内の某医科大学病院の一室にて、いままさに息を引き取ろうとしていた。五感はすでに遠のき、白い光につつまれながら、ウメはしだいに弱まっていく己の鼓動を、どこか他人事のようにながめていた。自分は死ぬのだ——と思ったし、ごく当たり前にそれを受け入れることができた。そして鼓動の間隔がしだいに長くなり、ついに完全にビ

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