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SOULFUL NOVEL 『JOINT』 #2

これは音楽と、時間と、そして友情についての物語である。


#2.WHAT

「ありえないから! そんなのありえないから!」

 モダン・ジャズが流れるレンガ造りの古風なキャフェの店内に、若い女の金切り声がこだました。デニム地のオーバーオールに巨体を包み、さくらんぼの飾りがついたヘアゴムでピンク色の頭髪をツインテールにまとめたその女は、目に涙をいっぱい溜めてワナワナと身を振るわせていたが、向かいに座ったランニング姿の中年男はハゲ散らかした頭にわずかに残った髪をかきあげながら、石原裕次郎顔負けのダンディな声でいった。

「ありえねえことねえだろうよ……」
「ありえないの! ありえないからありえないって言ってんじゃん!」
「ありえねえことねえだろうよ……」
「ありえない! そもそもその態度がすでにありえないから!」
「ありえねえことねえだろうよ……」
「ありえないから! それありえないから! マジで超ありえないから!」
「ありえねえことねえだろうよ……」
「ありえないから! 絶対ありえないから! 絶対ぜったい、ずぇええ~~~~ったい、ありえないから!」

 激昂した女がテーブルを叩いて喚き散らすと、中年男は窓の外にゆっくり視線を向けると、苦味走った顔で息を吐いた。

「……フウ……」
「ちょっと、なに外見て黄昏れちゃってるワケ!? いまマジメな話してるんだからこっち向いてよ!」
「夏がよ……」
「はっ? 夏?」
「夏がよォ……とまんねェなァ……」

 

 ……スナコは、アイスコーヒーにガムシロップを注ぎながら、この一風変わった二人組の様子を離れた席から眺めていた。

 ――なんなんだあいつらは、いったいどういう組み合わせなんだよ。ていうか何の話してるんだよ。ぜんぜん話が見えてこねえ。

 そうしてアイスコーヒーにガムシロップを三つ入れたところで、テーブルの上に置いたスマホに通知が来た。アイスコーヒーを飲みながらバキバキの画面を見やると、“ごめん もうちょっとでつく”というメッセージが表示されていた。スナコは適当に研ナオコのスタンプを送り、ちいさく舌打ちした。

 ――まさか、アイツに頼ることになるとはなぁ。

 スナコは自嘲気味に鼻を鳴らすと、新しいタバコを取り出して火をつけた。そして、タバコをくゆらしながらぼんやり店内を眺めた。夕刻の喫茶店は客もまばらで、じぶんとさっきの二人組をのぞけば、あと店内にはひとりの老人がいるきりだった。丸メガネをかけ、真っ白なヒゲをたくわえた痩せぎすの老人は、手のひらをくっつけて何かを力説していた。

「……なぁ君、何かを信じるとか信じないとか、誰かを認めるとか認めないとか、そういう基準があるのは人間だけなんだよ。動物や昆虫は否定をしない。すべてを平等に信じるし認めるんだ。だから悩んだり、後悔したりしない。
ただ、ありのままを受け入れているから、答えは“YES”しかないんだ。
だが人間は、なにかを強く信じたり、なにかをかたくなに認めなかったりする。自分の尺度で世界を査定する、それは人間だけが持つ能力だ。この力は差別や執着や破滅願望を生むいっぽうで、文化をおりなし芸術を形作る力でもある。
さて、ここで疑問が起こる。
広大な宇宙の末端構成員に過ぎない我々が、なぜこんな能力を得られたのか。
宇宙の目的が、意識を持つ生物が広範に繁栄することだとするならば、この能力はむしろ不要であるはずだ。ここから導き出せる結論はひとつしかない、神の意志だ。まったく疑いようもない。人間が神から与えられた能力はそれなんだよ。
いいかね、神が我々に期待しているのは、道徳や倫理ではない、おもしろいことだ。人生をかけて何かおもしろいことをしろと、神はそうおっしゃっているんだよ。神は我々に何も禁止していない、ただ、“楽しめ!”といっているんだ……
君はこの話がわかるかね、わからんかね」

 老人は身振り手振りをまじえながら“目の前のひと”に熱っぽく語っていた。当然その向かいには誰も座っていなかったが、老人には何かが見えているんだろう。実際には存在しないひとの姿を目の前に描き出し、そのひとと会話するなんてすごい想像力だよな、とスナコは思った。そうして短くなったタバコを揉み消し、また新しいタバコをくわえたとき、ひとりの人物が店内へ入ってきた。
 ボウタイのついた糖度高めのブラウスにロングスカートといういでたちのその人物は、しばし店の中をきょろきょろ眺めていたが、スナコに気づくと小さく頭を下げ、歩みよってきた。緩く巻かれた艶やかな黒髪が胸のあたりでさやさや揺れていた。肌は白く透き通っていて、長いまつ毛は瞬きするたびにパチパチ音がしそうなほどだった。そしてその人物はスナコの向かいにおずおず座ると、申し訳なさそうに小さな声でいった。

「ご、ごめん、おそくなっちゃった……」

 しかしスナコはそれには答えず、無言のまま、このイカニモな量産型地雷系ピエンチャンを目を細めて見つめていた。

「え、な、なに? どうしたの、スナコちゃん?」

 スナコはテーブルの脇に積まれていたガムシロップを引っ掴むと、それを無言で投げつけた。

「え、な、なんで?」

 眉間にガムシロップをぶつけられた量産型地雷系ピエンチャンは、両手で額を抑えながら目を白黒させていたが、スナコは黙ってさらにもう一個投げつけた。

「や、やめてよ」

 身をよじって防御をはかる量産型地雷系ピエンチャンに対し、スナコはフェイントを交えつつ三個目のガムシロップを投げつけた。

「わかった、ごめん、ごめんって、わかったから」
「何がわかったんだよ」
「や、その、あの……待たせちゃって、ごめん、的な」
「遅刻ぐらいで怒るワケねーだろ。あたしがこれまでの人生で何回遅刻したと思ってんだ、こっちは人の遅刻にキレる資格なんか持ってねえんだよ。ナメんな」

 ニラみを効かせながら四個目のガムシロップを投げつけようとするスナコに、量産型地雷系ピエンチャンはあわてて謝った。

「ごめん! ごめんなさい! とりあえずごめんなさい!」
「ムカつく。ちゃんとしっかりかわいくしてきやがって」
「や、かわいい格好で来いって、スナコちゃんが言ったんじゃん……」
「だからってそこまで気合入れんなよ、いくら何でも限度ってモンがあるだろ。こっちはノーメイクな上に、ブリンク182のバンドT着てんだぞ。しかもこのTシャツ、糞だせえのに5600円すんだぞ」
「え、た、高いね……スナコちゃんって、ブリンク182好きだったっけ……?」
「好きじゃねえよ。全然好きじゃねえよ。全然好きじゃねえバンドの超だせえ上に高えTシャツ着てんだぞ、ヤバすぎだろどう考えても。見習えよ」
「見習えっていわれても」
「昔の彼女より可愛い格好してくんなよ」
「む、昔っていうほど時間経って、ないよ……」
「昔だよ。気持ちが変わった時点で、それより前のことはぜんぶ昔なの。“思ってる”が“思い出す”になったら、もうそれは昔のことなんだよ」
「っ……」
「あたしにとってイナバは昔の人なんだよ、もはや」

 スナコの言葉に眼前の人物――別れたばかりの元彼氏・神田イナバは下唇を噛み締めてうつむいた。そうして黙り込むイナバに対して、スナコは頭を掻きむしりながら顔をしかめた。

「……やー、違う。違う。違くて。そういう系の話がしたいんじゃなくて。だから、つまり、昔話がしたいんじゃないんだよ。責めたりとか、謝ったりとか、そんな別れ話の延長戦なんかしてもしょーがねーだろ。過ぎたことなんかどうでもいいんだよ。話したいのは今のことなんだよ」

 そしてスナコは手のひらを合わせて頭を下げた。

「実はいま、マジでヤバいことになってんだ。お前しか頼れそうなやつ、思いつかなかった。頼む、ちょっと相談乗ってくれ」
「…………なにか、あったの?」
「ありまくった。人生最大のピンチ。ピンチっていうかホラー。普通にホラー」

 スナコが切実な声でそう漏らすと同時に店員が注文を取りにきた。“好きなモン頼んでいいから、おごるから”とスナコが小声でつけ加えると、イナバはちょっと迷ったようなそぶりを見せつつも、生レモンジュースを注文した。そうして去っていく店員の後ろ姿に小さく会釈したあと、イナバはおずおずとスナコにいった。

「……ん。僕が、力になれることなら」
「助かる。悔しいけどもうお前しかいないんだよ」
「ヤバいことって、しゃ、借金、とか?」
「違う。借金はあるけど、それはヤバいの範疇に入ってない。もっと、マジでヤバい」
「人殺したとか……?」
「ちげーよ。そういうヤバさじゃねーよ。怖いこと言うなよいきなり」
「じゃあ……なに?」
「あのさ、いまN市のアパートに住んでんだけど……出るんだよ」
「出る?」
「アレだよアレ。わかんじゃん。出るっつったらもうアレしかないだろ」
「ネズミ?」
「違げーよ。だからその~~~……つまり……オバケだよ」
「ごめん、き、聞き取れなかったから、もっかい言って」
「幽霊だよ! 幽霊が出るんだよ! 夜中、隣の部屋からピアノが聴こえてくんだよ! 誰も住んでないはずなのに、女の声とピアノの音がすんの!」
「……ピアノ?」

 首をかしげるイナバに対し、スナコはこれまでの経緯を説明した。水木荘なる廃墟レヴェルのボロアパートに住み出したこと。隣接する部屋が誰も住んでいないため毎晩音出しまくっていたこと。真夜中に目覚めたら女のうめき声とピアノの音が隣室から聴こえてきたこと。スナコが切々と語るそれらの話を、イナバは時折小さくうなずきながら、真剣な顔で耳を傾けた。ひととおり話し終えると、イナバは肩をすくめていった。

「……そんなことがあったんだ」
「ああ、もう三日経つけどあれから家帰ってねー。ずっとバイト先で寝泊まりしてる。もう体バキバキすぎてそろそろ死にそう」
「スナコちゃん、幽霊とかそういうの、苦手だもんね……」
「ああ。今までそーゆー経験一回もしたことなかったのに、まさか25歳ですると思わなかったわ。完全に油断してた。マジで超怖かった」
「まあ、それは怖い、よね……」
「最悪だよ。バンド解散してから急に不運つづきだ」

 スナコが首を振りながらそうつぶやくと、イナバは目を丸くして身を乗り出した。

「え、ザ・ブロッコリーズ解散したの?」
「ザいらねえよ、ザは二年前のワンマンライブのときに取ったんだよ」
「そっか、ブロッコリーズ解散したんだ、そうなんだ……」
「んでイナバはさぁ、どう思う? つうか、どうしたらいい?」
「んー……スナコちゃん絶対才能あるから、音楽は続けてってほしいけど……」
「違げーよ、音楽はやるよ、一生。そっちじゃなくて、幽霊の話だよ」
「あ、ご、ごめん。それは……やっぱり、引っ越すしかないんじゃないかなあ……」
「そんな金ねーよ。っつうか、幽霊出る以外のぞけば音楽やる上であんなにいい部屋ないんだよ。賃貸なのに部屋でドラム叩けんだぞ」
「別に僕と住んでたときもドラム叩いてたでしょ……」
「お前霊感あるじゃん、霊媒とかなんかそういうのできないの?」
「できないよ……それと、これとは違うよ」
「じゃあどーすりゃいいんだよ、もお~~……」

 テーブルに突っ伏して力なく呻くスナコを尻目に、イナバは腕組みをしつつ思案していた。

「……にしても、ちょっと、ひっかかるなぁ……」
「……あ?」
「その隣の部屋っていうのは、ほんとにカラッポなの?」
「ああ、廊下から見えるけど間違いねー。誰も住んでないし、家具どころかカーテンも何もねえよ」
「そっか……じゃ、やっぱり、ヘン、かなあ……」

 怪訝な顔で首をひねるイナバに対し、スナコは唇を尖らせて尋ねた。

「なにがヘンなんだ?」
「ええとね……たとえば、楽器がひとりでに鳴るとか、誰もいないはずの部屋から人の声がするとか、そういうケースはよくあるんだよ。でも、カラッポの部屋から、人の声と楽器の音がするっていうのは、ちょっと聞いたことないなぁ……」
「そんなモンなのか」
「ほかに考えられるとしたら、ラップ現象があるけど……そのピアノの演奏って、上手だった?」
「どう……かなあ? いま思い返してみると結構上手かったよーな気する、けど……」
「だ、だとしたら、なおさら、ヘン、かも……ラップ音って、指を鳴らすとか木を折るときみたいな音がほとんどで、つまり、打撃音が多いんだよ。そういうメロディっていうか、ピアノの旋律が鳴るみたいなのは、あんまり聞いたことないなあ」
「じゃあ、じゃあ……何が起きてんだ?」
「ひょっとしたら、だけど……その声とピアノは、その空き部屋に“録音”されたものなのかもしれない」
「ロクオン?」
 
 スナコは露骨に顔をしかめて首をひねった。イナバはどう説明したものかとこめかみを掻きながら言葉を選んでいるようだったが、やがてゆっくりと語り出した。

「えっとね、これは霊現象の仮説のひとつなんだけど、たとえばヴィデオとかレコードは映像や音を記録する装置だよね。そういう記録能力が、木とか土とか石、建物にもそなわってるんじゃないかっていう説があるんだ」
「ハア」
「人間は電気信号で動いてるよね。脳内で電気的な活動が起こると、ニューロンが興奮して神経に信号を送り、それが筋肉繊維に伝わることで人間は動く。このプロセスはぜんぶ、物理法則によって成り立ってる。動作だけじゃなくて、人間のなかで沸き起こる感情も同じ。“アイスコーヒーが美味しい”とか、“外が晴れてて気持ちいい”みたいな、人間の感情だって、ぜんぶ脳内で起こる電気信号なんだ。百万分の一ボルトの電気信号が細胞に伝わることによって感覚が生まれるんだけど、この電気信号が強すぎると細胞の受容量を超えて体外に漏れ出る場合がある。その電気信号は、場所そのものに記録されるんだ」

 スナコは目をパチクリさせて口を半開きにしながらその説明を聞いていたが、やがて放心したように言葉を漏らした。

「やべえ。全然わかんなかった」
「え、ど、どのへんが?」
「全部。全部ムズかった。でも、わかんないということだけはかろうじてわかった」

 明らかに何もわかっていないその顔を見て、イナバは少々ガックリしたようだったが、口元に手を当てて思案したのち、ふたたび喋り出した。
 
「えっと、た、たとえばスナコちゃんはライブハウスに行ったら、どんな気分になる?」
「んー、やっぱテンション上がるかな。ワクワクする」
「そ、そういうワクワクする気持ちはさ、ただ単に、スナコちゃんがライブハウスが好きだからってだけじゃなくて、過去にライブハウスにやって来たたくさんの人の“楽しい”とか“感動した”っていう感情が、その場所に記録されてるからなんだ」
「んー……そんなモンかあ~……?」

 首をひねるスナコに対し、イナバは身振り手振りをまじえながらさらに熱っぽく語った。

「これは昔、イギリスで行われた実験なんだけど、広いホールに男性を50人、女性を50人の計100人を集めてパーティーを開いたんだ。そのパーティーではパスタがふるまわれたんだけど、そのパスタがすっごく美味しくて、みんなそれに満足して帰ったんだって。その翌日、パスタの匂いがまったく残らないように掃除して、ちゃんと消毒もしてから、別な男女100人を同じ会場に集めた。もちろん前日にパーティーをやったことは一切教えずにね。そこで集まった100人に、“今日の食事はパスタとピザのどちらかが選べるんですがどっちが食べたいですか?”ってアンケートをとったら、100人中97人が、パスタを食べたいって答えたんだって。匂いも何もしないのに、だよ。つまり、これは前日のパーティーに集まった人たちの、“パスタが美味しい”って感情が、その会場に記録されたってことなんだよ」
「あたしだったら絶対ピザ食うけどな。でも、まあ、なんか、すげーな」
「場所には感情だけじゃなくて、かつてそこにいた人の姿や、そこで鳴っていた音も記録されていて、それが何かのタイミングでホログラムみたいに“再生”されるのが霊現象、っていう仮説。古くなった家電が誤作動を起こすみたいに、建物も古くなったらそういうバグが起きやすくなるっていう考え方」
「じゃあ、こういうこと? 隣の空き部屋にむかし住んでたピアニストの演奏が、ときどき流れてるだけっつう」
「……まぁ、あくまでそういう考え方もあるよってだけで、個人的にはあんまり支持してないけど……」
「あー……」

 言い淀むように答えるイナバに、スナコは大きなため息をついて天井を見上げた。

「……なんか、腹立ってきたな」
「え?」

 あまりに唐突な立腹宣言にイナバは思わず目を点にしたが、スナコは太腿を拳で何度も叩きながら不貞腐れたような声をあげた。

「ムカつく。めっちゃムカつく。マジでムカつく。超ムカつく」
「え? なんで?」
「ただ昔の音楽が流れてるだけなんだろ? 怨念とか未練とかそんなん関係なくて、ただライヴ音源が勝手に垂れ流されてるだけなんだろ?」
「いや、その言い方はちょっと」

 イナバは発奮するスナコを慌てて制そうとしたが、スナコは止まらなかった。ノンストップ・アングリーであった。

「そんなんにビビってたのかよ、アホみてーじゃん! じゃあそれならこっちも考えがある!」
「ど、どうするの?」
「つぎに隣からピアノが聴こえてきたら、それに合わせてドラム叩いてやる」
「ドラム……」
「そんなんいっつもやってることだし。ビル・エヴァンスの曲かけてドラム叩くのとほぼ同じだろ」
「そう……かなあ?」
「で、勝手にそれレコーディングして売る。どう考えてもその権利はある」
「権利、あるかな……」
「やる。絶対やる。マジでやる。そうと決まったらこうしちゃいらんねー」

 そしてスナコは勢いよく立ち上がった。イナバはうろたえながら情けない声を出した。

「ど、どこ行くの?」
「酒飲む。で、テンション上げて、かます。もうそれしかねえんだよ。ほら、金」

 言うが早いか、スナコはジーンズのポケットから小銭を取り出し、テーブルの上に置いた。

「釣りはとっとけ。じゃあな」

 そしてスナコは踵を返すと、力強い足取りでカフェを出ていった。ひとり残されたイナバは呆然としていたが、やがてテーブルの上の小銭を集めると、ぽつりとつぶやいた。

「……いや、32円しかないし」

 いつの間にか、ランニング男とオーバーオール女の二人組も、虚空に熱弁をふるう老人の姿も店内にはなかった。夕陽が沈み、街はむらさき色の闇に染まりはじめていた。静まり返ったカフェの中では、エディ・トーマス・シンガーズの『スピーク・ロウ』が流れていた。

 


♪Sound Track : Speak Low / The Eddie Thomas Singers



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