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安定と安全の先にあるもの

今の会社に入社して上長としての役職に就いて以来、ずっと言われ続けてきたことは、社員の望んでいることは「生活の安定と向上」であり、その願いを叶えるために組織は成長し続けねばならないということ。

例えば、私の所属する今の会社は、今日現在で約870ヶ所の拠点展開をしています。

29年前に入社した当時の拠点数はというと、わずかに14ヶ所でしたから、今日までの間に800人以上の新たな拠点長と、そうした拠点を束ねていくエリア長やそのまた上長など、多くの役職者を輩出してきています。

これらの人たちは、拠点展開をしてこなければ、ひとつの施設で役職者は頭打ちになってしまい、待遇面をそれほど大きく変えることはできなかったことでしょう。

ここであらためて「安定」の意味を調べてみると、辞書には「物事が落ち着いていて、大きな変化がないこと。またそのような状態にすること。」とあります。

似たような単語に、「安全」や「安心」といった同じように「安」を含んだ言葉があります。

そもそも、「安」の漢字の成り立ちとしては、「家」の意味がある「うかんむり」の下に「女」、つまり家で女性がやすらいでいるさまから、「やすらか」という意味合いを持っているようです。

物理的、心理的、環境的、経済的、社会的といった様々な側面における「やすらかさ」が、安定や安全という言葉には内包されているといっていいでしょう。

そこで、もう一度会社の話に戻りますが、当社における施策のうち重要な柱のひとつとして「環境整備の徹底」という方針があります。

環境整備については、これまでのコラムでも繰り返し述べてまいりましたが、「礼儀・規律・清潔・整頓・安全・衛生」の6つの項目を徹底するという指針になります。

この中で、「安全は全てに優先する」というものがあります。

職場における安全というと、これまではどうしても災害時などにおける身体的安全のことばかりに目がいっていましたが、こうしてあらためて言葉を定義づけて考えてみますと、果たして本人だけが物理的に気をつけるものでなく、また有事の際に組織として利益よりも優先して従業員の安全を保障していくといった社会的な心構えのことだけでもなく、むしろその組織に所属する従業員の精神的なものを含めて守っていかないといけないものなのですよね。

あらためて「安全」について調べてみますと、「安らかで危険のないこと。平穏無事。物事が損傷したり、危害を受けたりするおそれのないこと。」とあります。

つまり、安全とは「危険(リスク)がないこと」です。

では、反対に「危険(リスク)」とは何か。

「危ないこと。危害または損失のおそれのあること。」です。

果たして部下たちの心理的な安全や、その結果としての環境的な安全は守られているのでしょうか。

果たして危害を加えているのは誰なのでしょうか。

80年以上に渡り2千人以上を追跡調査してきたハーバード大学における「成人発達研究」によると、

人間の幸福や健康の為に必要なのは、年収・学歴・職業、ではなく、身近な人との良い人間関係に尽きる

『グッド・ライフ 幸せになるのに、遅すぎることはない』ロバート・ウォールディンガー

という結論に至っています。

拠点に人が定着しないのだとすれば、それはその拠点に所属するスタッフさんたちに、幸福や健康からはほど遠いような扱いを受けていると感じさせてしまっているから。

部下へ向き合うのであれば、余計な圧をかけることではなく、より良い人間関係を構築するためにはどうすればいいのかを考えて言動に反映させていくこと。

長く一緒に働いてもらいたいのであれば、「部下の安全は全てに優先する」というように方針を拡大解釈してみるのもひとつだと思います。

部下のいる環境が、安らかで危険がなく平穏無事であり、危害を受けるおそれのない状態を保つことが、上司として「安全は全てに優先する」という方針を守っているということになるのではないでしょうか。

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